街に緑色と赤色が溢れて、金色と銀色が加わって神々しい輝きを帯びる。キリストの生誕を祝う祭典が訪れようとしている。ここで忙しくなるのが、子供達のプレゼントを準備してイブの夜に届けてくれるサンタクロースだ。
情報番組の中で便利屋さんが請け負う仕事にはさまざまなものがあると特集していた。離婚した元夫のところに本人に代わって貴重品を受け取りに行ったり、豆まきの鬼に扮したり。果ては、どうしても間に合わないからと当日の朝に依頼があり、新婦の父の代わりに結婚式に出席するというものまでも。
ところが、若い出演者がサンタクロースも便利屋さんにお願いできますねと言った刹那、宮根氏が「サンタクロースはいます」と言い放った。重ねて「サンタクロースはいるんです」と。
午後2時頃の番組は小さい子供も観ているかも知れない。その子達に対する配慮だろう。それ以上話すなという意味だった。
我が家では、イブの夜にプレゼントを味わって欲しいので、何とか早めにサンタさんに来てもらいたかった。娘が小学校三年生か四年生の時だったと思うが、僕がトイレに行った時に玄関にプレゼントが置いてあったのに気付いた。慌てて娘を呼び、サンタさん今来たんだね、まだその辺にいるのかなと僕が言った瞬間、娘は玄関を開けて空に向かって「サンタさん、ありがとう」と大きな声でお礼を言った。娘の全身は喜びで湧き立ち、その瞳は輝いていた。
ご近所さんにはちょっとだけ恥ずかしいエピソードだが、忘れられない思い出である。
サンタクロースはいるのである。