今、妻が音楽を聴きながら台所仕事をしている。手嶌葵さんの曲をランダムに。人によって音楽に触れる機会、その歌手と出会う場面はまちまちだ。とは言え、ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の主題歌『明日への手紙』で彼女の存在を知ったと言う人が多いのではないだろうか。
妻と僕が彼女を知ったのは、ジブリ映画『ゲド戦記』の声優として、また挿入歌の歌い手としてである。
決して張り詰めることのない、囁くような歌声。時に風が森の中をそっと吹き抜けるが如く、時に夜空の星たちが小さく微(かす)かに光を放つが如く。そして、幼く可愛らしい仔犬をお母さん犬が舌で愛撫するが如く。
彼女の歌声を形容しようとする時、沢山の美しく儚(はかな)い言葉を集めて、その言葉達が微笑み合いながら手を繋ぐように並べていくのをイメージする。
彼女の歌声でひっそりと伝えられるメッセージ(歌詞)は、静かであればあるほど強く確かなものとして僕に伝わってくる。僕はその心(意味)を受け取ろうとして手を広げ、そのまま半透明な霞(かすみ)に包まれる。
松田聖子さんがリリースした『瑠璃色の地球』をカバーしていて、こちらも秀逸。まだ出会っていなかった方は、冒頭の曲とともに聴いてみては如何だろう。
彼女が紡ぐ歌声の様に、そおっとお勧めします。