今日、市内で雪が積もった。みぞれの様な雪だが、この先の気温も考えると、いよいよだという感じがする。

 若い時分はスキーに行くのが常だったので、雪が積もるのは大歓迎だった。青森市近郊の雲谷(もや)スキー場、スキーの国際大会も開催される大鰐スキー場、長い距離のゲレンデが何コースも楽しめる鯵ヶ沢スキー場、岩木山の麓にある百沢スキー場。

 県外では、安比スキー場、八幡平スキー場、網張スキー場、雫石スキー場などなど。


 中でも大好きだったのが、八甲田スキー場である。初めて行ったのが20代後半だったと思う。リフトだと1km、ロープウェイだと3.5kmと5kmの2つのコースがある。僕はもっぱらロープウェイで山頂まで行って滑り降りた。

 ほとんどの人が滑るのは3.5kmのダイレクトコース。林の間を切り拓いたコースで、幅は30m〜40m位だろうか。常にターンを繰り返す感覚で降りていく。必ず始発かその次の便に乗り、新雪を楽しむ。深い時は新雪が70cmにもなるので、膝を曲げてスキーのトップを上げていなければならず、かなり疲れる。スキー板を履かないと埋まってしまって歩けない深さになることもある。このパウダースノーが最高に気持ちがいい。

 5kmのフォレストコースは、最初に急斜面が続くが、次第に緩斜面と普通の斜面が繰り返し、時折歩く様なコースである。こちらも新雪の時は自分のシュプールが残り、気持ちがいい。

 ある日、結婚前の妻と、新雪が深いフォレストコースを降り始めた。妻は、初めての深雪に、最初の急斜面の序盤でスキーを回せなくなり、降りられなくなった。雪のため、わずか30mでも、スキー板を横にして踏み上ることなどできない。後戻りはできない。

 そこで、スキー板を外させて、妻にはストック4本を持って歩かせ、僕は妻のスキー板を肩に担いでノーストックで降りた。ノーストックで深い新雪を滑るのは初めての体験だったが、スピードに乗れば何とかなった。そして、急斜面が終わったところで、妻にもう一度スキー板を履かせて、降り切った。


 山岳スキーは甘く見てはいけないと改めて思わされた出来事だった。例え自分の技量は十分あったとしてもだ。


 そのことがあって以降、鯵ヶ沢スキー場に行くことが多くなった。なだらかでコース幅もあり、コース整備もしてくれる。僕は少し物足りないが、やはり妻にとっては滑りやすい。


 ここ20年スキーを滑っていない。おそらくこの後も滑ることはないだろう。


 あの日々が懐かしい。