バレエ劇が青森県内で開催されることはほとんど無いため、観劇のためには首都圏に出なければならない。バレーの観劇はなかなかにハードルが高い。
しかし、今回はシャガールの背景画を青森県立美術館で所有していることから企画が進み、観ることができた。観客席は小さく、もしかしたら舞台も小さいのかも知れない。しかし、主人公を始め全てのダンサーが躍動し、華麗に舞い、切なく触れ合う。無言の劇にしか生み出せない感動がある。
バレエ劇アレコの中ではロマ族の若者たちが描かれている。主人公アレコは自由奔放なロマの娘に惹かれてゆく。アレコは上流階級の子息で本来は接点すらない間柄。その生活、文化、歴史は一つとして交わらない。その全てを『自由』と感じたことだろう。
ロマ族は漠然とは理解していた。インド(現在はパキスタン)を起源としヨーロッパに向けて流浪を続けた民。ジプシーの起源だろうこと。ナチスのホロコーストでの大虐殺。その程度の知識だったが、今回調べてみてその複雑さに驚いた。
ロマの人々はインドの支配地にいながらも、民族としてのアイデンティティから独立を望んでいた。ロマの人々はアラブに加勢してインドとの闘争に参加。敗北の結果を受け、流浪が始まった。
先祖代々の地で暮らしづらい何かがあったのだろうとは思っていたが、独立問題だったとは。先祖代々の地を離れて流浪する寂しさと虚しさは想像に難くない。
そして、歴史の断面断面に、蔑まれ冷遇される民として登場する。
今、世界中が不安定化している。領土問題であり、宗教問題であり、民族問題である。それ以外に紛争の種は存在しない。
領土問題は民主主義を背景に、常に話し合いを持って長い時間をかけて解決しなければならない。
宗教問題はお互いの共存を模索する以外に解決の糸口はない。
民族問題は、一旦祖先の地を追われたり離れたりしてしまうと、土地に対する権利が大きく失われてしまう。イスラエルがユダヤ人国家として建国できたのは、世界の歴史からすると例外中の例外の様な気がする。
ロマ族の問題に触れ、イスラエル建国に端を発するパレスチナ問題を想起してしまうのは、僕だけだろうか。