皆さんは『新世界』というと何を、もしくは、どこを思い浮かべるだろうか。大阪の人たちはもちろん通天閣が建つ賑やかな新世界であろう。僕が真っ先に思い浮かべるのはドヴォルザーク作の『新世界より』である。

 中学生になると音楽の授業がより深くなり、その中でベートーベンの『運命』『田園』、シューベルトの『未完成交響曲』など有名な曲を聴き、あっという間にクラシックの世界に引き込まれた。その中でドヴォルザークの『新世界より』第四楽章も聞いた。ダイナミックで衝撃的な旋律に魅了された。

 

 チェコ生まれで、既に名声を博していたドヴォルザークは、1892年、ニューヨーク・ナショナル音楽院に院長職として招聘されアメリカに渡る。翌年書き上げたのが交響曲第9番「新世界より」である。

 彼はアメリカの原住民音楽や黒人音楽に触れながら故郷の旋律を思い、『新世界』アメリカでこの曲を書き上げた。


 アインシュタインはドイツ生まれのユダヤ人だが、彼の功績を持ってしてもドイツ国内で民族迫害の波に晒された。そしてヒトラー率いるナチス党が政権を握った事をきっかけに、1935年に滞在していたアメリカの永住権を取得した。

 その後、原子爆弾に繋がってゆくもう一つのストーリーがあるが、後に書かせて頂く。


 シャガールはロシア領で生まれたユダヤ人だが、紆余曲折を経て、第二次世界大戦勃発後の1941年に、ナチスによる迫害から逃れてアメリカに亡命した。その後、バレエ劇『アレコ』の4枚の背景画を描いた。


 アメリカは第二次世界大戦当時、渡って来た人々に安楽な住まいや希望を与え、新たに未来を夢見る事を許してくれる大地だった。

 今、アメリカ大統領選で争点の一つになっている不法移民問題は、根本は、母国で生きることが出来ずに新世界を目指してくる人達をどう処遇するかと言う事である。票欲しさに全員強制送還だとか言っているが、人道的に許されるのか。多くの人と意見を交えて最良策を見出すべきだと思う。


 11月1日から、シャガールのバレエ劇『アレコ』の背景画を所有する青森県立美術館が、この演目を復刻させて独自の演出で上演している。私も今日観劇する。


 人種差別、民族迫害、内戦難民、思想迫害。日本を含め、それぞれの事情を抱えつつ審判を待つ人達の気持ちを少しでも慮(おもんぱか)ることのできる国際社会であって欲しいと思う。