突然だが、僕の瞳は黒くない。ほんのり灰色がかった薄茶色である。一般的に、地球の高緯度地帯に近づく程、太陽光の量が少なくなるため、瞳の色が薄くなると言われる。


 僕の母方の祖母は、青森県下北地方、東通村で生まれた。津軽海峡に面した、寒立馬のいる尻屋崎の西側、旧岩屋村である。祖母は鼻が丸く大きく、可愛らしいだんごっ鼻だった。顔立ちは深目で、アイヌの人たちの特徴を有していた。

 下北は、津軽海峡を挟んで盛んに北海道と交流していた。そのため、僕は少年の頃から、祖母はアイヌの人たちにルーツを持つと感じていた。言い及ぶと、私にもその血が流れている。その思いは不思議と僕の心を落ち着かせた。『日本人』というだけでは無い、もっとくっきりとした輪郭を得た感覚である。


 高校から大学とへと進み、地元の歴史にも触れる機会が増えていく。その時に常に感じていたのは、中央政権からの不要の干渉であった。古代の中央豪族、もしくは政権にとって、こんなにも離れた北の地に手を延ばして何になるのだろうと。土地=稲作=富。その富を更に積み重ねる為の『広さ』以外の何物でもない。武力で凌辱し、人々を支配し、豊かな独自文化を消滅させる。

 蝦夷と呼ばれた北東北の人々がそうであり、アイヌの人たちもそうである。


 ロシアによるウクライナ侵攻が始まって二年が経過した。圧政者は侵攻を祖国防衛だという。理由をこねくり回して正当化し続けている。

 古来、戦争は『水』を巡って起こると言われた。しかしこの圧政者は、海に出る通路欲しさ、また、NATOとの争いが目の前に迫る妄想から、現在の本土との間で緩衝帯となる地域の確保が目的の様に思える。

 しかし一方で、現代は古代ではないことを忘れてはならない。世界のほとんどの国は健全な民主主義国家である。何かを手に入れたければ、自国の得意分野を伸ばして経済交換で成し遂げるべきである。


 斧や槍や弓を手に持って大量に押し寄せ、力ずくで奪う時代であってはならない。