今年のノーベル平和賞は日本被団協が受賞した。結成以来、多くの方々が携わり、この日を待たずに亡くなった方も多くいらっしゃる。昔は被爆者差別が言外に隠れて存在したとも聞く。

 本当におめでとうございます。

 直後の会見では、ロシアの核使用の脅威が高まっていることへの危惧も述べ、核兵器のない世界の実現の難しさを改めて噛み締めているようにも感じられた。


 2021年、ロシアの民主派新聞、ノーヴァヤ・ガゼータ紙の編集長のドミトリー・ムラトフ氏がノーベル平和賞を受賞した。チェチェンの人権侵害に立ち向かった、同胞女性フィリピン人記者、アンナ・ポリトコフスカヤ氏が殺害されてから15年目での受賞だった。

 今年に入ってから、反政府政治家ナワリヌイ氏の獄中死は、度重なる拷問による殺人だったと発言したことで覚えている方も多いのではないだろうか。

 彼は受賞の2年後、スパイを意味する『外国の代理人』に指定された。プーチンはあろうことか、受賞の前年にその可能性に言及していた。全くの中立団体であるノーベル財団に圧力をかけるかのように。

 耐え難い、醜い政治である。


 中国では、2010年に反体制作家の劉暁波氏がノーベル平和賞を受賞した。しかし彼は前年に収監され、既に自由を奪われていた。容疑は、『三権分立を求めて体制転覆を目論んだ』為であるとされた。我々には当たり前のことが罪になる異常な世界である。

 受賞発表後、中国政府はノーベル財団の決定に強く反発した。逆に、その後のソウルでのG20では、オバマ大統領など各国首脳が、彼の釈放を胡錦濤国家主席に強く要請した事は異例で、強く記憶に残っている。

 劉暁波氏は2017年に癌で死去した。最後の治療は国外で受けたいと希望したが叶わなかったと記憶している。


 自国民がノーベル賞を受賞しても喜ばずに批判を続ける国家とは、一体何なのだろうか。