少し前から昭和ブームが起き、レトロな物や雰囲気が大人気で、『映(ば)える』と言って写真に収め、SNSに投稿する。僕は昭和生まれ昭和育ちなので、懐かしい気持ちから昭和レトロを愛おしむ。
しかし、若者たちは違う。経験していない時代なのに『何だか懐かしい感じ』を味わうのである。
中でも喫茶店は存在そのものが昭和からという場合が多いので、『映え』の真骨頂だろう。わざわざ昭和レトロの雰囲気を作り出して新規オープンする喫茶店もあるのだから。
僕たちは喫茶店を『茶店(さてん)』と呼んだ。僕の初ひとり茶店は高校一年生のとき。大人の世界に足を踏み入れるのはかなり勇気が要った。子供臭さを出来るだけ消したつもりだが、今思うと恥ずかしい。大人からすれば子供そのものだっただろうから。
【当時の価格】※大体こんな感じ
ブレンドコーヒー 250円
ブルーマウンテン 500円
トースト 200円
ピザトースト 250円
ナポリタン 350円
ピラフ 350円
カレーライス 350円
思い返すと、値段そのものが懐かしい。バイトの時給が500円だった時代。
お小遣いだって限りがある。500円でコーヒーとピザトーストを頼むことが多かった。ナポリタンを頼む時はコーヒーは無し。タバスコを3滴、粉チーズをたっぷり。とはいえ周りの目があるので、少し控えて。
当然コーヒーだけの時もある。文庫本持参で読みながら。コーヒー一杯でせいぜい一時間。たまに、ほんとのたまにコーヒーをおかわり。
当然友達とも行くが、ひとりの茶店が大好きだった。ひとりの時間を楽しんだ後は本屋さんへ。
文庫本しか買えないが、どんな本に出会えるか楽しみでたまらなかった休日の午後。