顔がいつも左を向いている『左向き』さんが、大きな通りの右側を歩いていました。


大きな通りの反対側を『右向き』さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えました。


何日か前、2人は細い路地で出合って、少しだけ仲良しになったのです。


『左向き』さんは、通りの反対側を歩いている『右向き』さんに声をかけました。


「やあ!また会えたね!」


『右向き』さんは、声に気づいて立ち止まり、言葉を返します。


「おやおや。その声は『左向き』さんですね。でも、どうして隠れているのですか?」と。


「隠れてなんかいやしません。こっちですよ。『右向き』さん」


こんなやりとりがしばらく続いたあと、『右向き』さんはやれやれという仕草をして歩き出し、遠ざかって行きました。


また何日か経ちました。今度は『右向き』さんが大きな通りの左側を歩いていて、大きな通りの反対側をこちらに向かって歩いてくる『左向き』さんを見つけました。


ちょっと。。ほんのちょっとの時間。


『右向き』さんは迷いました。『左向きさんにイタズラされたのを思い出したのです。


でも、せっかく少しだけ仲良くなれた『左向き』さんです。やっぱり声をかけました。


「またお会いしましたね」と。


『左向き』さんが立ち止まり『右向き』さんと反対の方向をじっと見ています。そして。


「『右向き』さんですね!会えてよかった。でも、あなたはどこにいるのですか」


その時『右向き』さんは理解しました。


そして『左向き』さんにこう言いました。


「『左向き』さん。今来た道を戻ろうとするように、反対を向いてごらんなさい」


少しだけ疑うようにゆっくりと反対を向く『左向き』さん。


2人はお互いを見ることができました。


そして。。


「こんにちは」と笑顔で手を振り合いました。


その日からは、どちらかが気づいて声をかけると、きっとどこかにいるはずだとくるりと回ってみるようになったのでした。

だって、すぐには見えなくても、2人とも大好き同志なのですから。


あなたもくるりと回って見渡してみませんか。仲良しさんがあなたの方を見て微笑んでいるかも知れませんよ。