秋が近づいてきた。おや?立ち止まった。こっちを見たり、後ろを振り返ったりしてる。戻ろうかどうしようか考えているのか。あっ!戻って行った!でもまた立ち止まってこっちを見てる。
早くこっちにおいでなさいな。そしてゆっくり話をしよう。そうすれば僕も秋をじっくりと満喫できる。もう暑さにはうんざり。みんな秋を楽しみに待ってるんだから。
読者の秋、食欲の秋、物思いに耽る秋。重ね着を楽しめるので、ファッションの秋でもある。そして、行楽の秋。いよいよ秋が来る。
妻と僕は、お弁当を持って、年に1、2度近くの公園や市民憩いの山にピクニックに出かける。大したお弁当でもないし、大それた行き先でもない。それでも、緑の中を吹き抜ける風や温かいお日様の光は心地良く、十分楽しめる。
お弁当に欠かせないのはおにぎりではないだろうか。ご多聞に漏れず我が家でもおにぎりである。おかずは卵焼きに唐揚げか焼肉、ポテトサラダに林檎といったところ。
僕が子供の頃は、一回で握るおにぎりの数も多かった。一人2個から3個で考えるので、あっという間に15個、20個となる。で、粗熱が取れたら一つ一つアルミホイルで包んでゆく。今でこそラップで包むが、昔はアルミホイルで包むのが当たり前。アルミホイルは裏と表で見た目が違う。鮭は普通に包み、梅干しはくすんだ色の裏が表面になるように包むと、具材を選んで食べられるようになる。たまに、どっちがどっちか分からなくなることもあったが、それもご愛嬌。
アルミホイルは、僕が小学生になった頃から使い始めたような気がする。それではそれ以前はどうしていたかお分かりだろうか。ラップはもちろんアルミホイルも無い時代にである。
答えは経木。『きょうぎ』と読む。すぐに閃いた人は、年齢が僕と同じか上の人だろう。経木とは、薄く削った木である。板よりもずっと薄く、紙に近い。20cm幅で長さは50cm程だろうか。しなやかさに難はあるものの、折り曲げておにぎりを包むことができる。
木なので当然木目があり、香りもする。青森ではヒバが植生の中心であることを考えると、地元で生産していたとすればヒバを使っていたと想像する。
秋田の有名な曲げわっぱも木なので同じ性質を持つが、おにぎりがまだほんわか温かいうちに経木で包むと、余分な湿気を吸って蓄え、おにぎりが乾燥してくると、蓄えた湿気を微かな木の香りと共に吐き出すので、お米が乾きすぎることなく食べることができる。
昔は経木を買いにお使いにも走らされた。店先で5枚、10枚とお願いする。現代では経木を見かけることはない。果たして扱っている店はあるのだろうか。
来週辺り晴れの日にピクニックに出かけよう。少しだけ遠出をして。初めての場所もいいだろう。もちろんおにぎりを持って。
そして、秋には是非とも長居をしてもらいたい。