浅虫温泉は青森市の奥座敷とも称される有名な温泉地。棟方志功が創作活動をして多くの作品を残した『椿館』も有名である。温泉街はこぢんまりとして小径が続き、散策しながら足湯も楽しめる。小さいながらとても風情のある街である。
浅虫には、イルカショーを楽しめる青森県営水族館があり、海に大きく張り出した釣り堀があり、駅前通りにはタコライスが美味しい古民家カフェや、関野準一郎の版画に触れながらくつろげるカフェなど、新しくて美味しいスポットも生まれている。昔からの食事処で、今では『山の様なマグロ』丼で有名な鶴亀屋食堂でご存知の方も多いだろう。
季節のイベントでは僕が子供の頃からずっと続いている浅虫花火大会が今夏も開催された。ねぶた祭りの直前に上がる花火は夏の宵闇を鮮やかに照らす。
かつて、浅虫キディランドという遊園地があった。国道4号線を挟んで水族館と反対の海側に、ジェットコースターや観覧車を始めとして様々な遊具が並んでいた。最後、経営が引き継がれ名前を変えて営業していたが2005年に閉園した。大きな施設や設備がひっそりと残っているのはとても悲しく、この閉園で青森市に遊園地は無くなり寂しい思いをしたものだ。
そのキディランドの背後、海沿いにはヘルスセンターという保養施設があり、温泉と舞台と食事を日帰りで楽しむことができた。大広間では風呂上がりの客がビールを飲みながらワイワイ騒いだり、ゴロリと横になったり。子供だった僕も、日中から羽目を外して楽しむ大人たちの姿を見て、不思議な開放感に満たされた。
ヘルスセンターのさらに奥には海岸沿いに小道が延びて、食事処、お土産屋さんが立ち並ぶ。行き止まりには、東北大学の臨海実験所があり、一部スペースを浅虫水族館として一般に開放していた。入場するとすぐに大きな丸い生け簀があり、大きな鮫も泳いでいた。後年大人になって訪れてみると、小さな生け簀で小さな鮫だったが、幼い子供の感じた衝撃は凄まじかった。
浜に下りて磯遊びもできた。貝を拾ったり、岸に寄ってくる魚たちを探したり。岩浜だったが、泳いでいる人たちもいた。
全国的には温泉地として有名な浅虫は、かつては大人から子供まで楽しめる一大レジャーエリアだったのである。