嵐が過ぎ去りつつある。おそらくあと一日か二日。未だ各地に大雨をもたらしているものの、やっと終わりが見えてきた様に思える。
子供の頃、雷は未知の現象であり、人の命をも奪い去る恐怖であり、家を燃やしてしまいかねない現実であり、それが故の憧れでもあった。遠くで鳴る雷が次第に近づいてくる時の感覚は未だ忘れることはない。現代ではあまり耳にしないが、昔は変電所に雷が落ちたと良く耳にした。たちまちに一帯が停電し、仄かにまどろむ住宅街が真っ暗になる。
当然、過電流による家電製品の被害もあり得るため、雷が通り過ぎるまで、一番高価な家電であるテレビのコンセントを抜いたりしたものだ。
翌朝学校に行くと、沢山の子たちの注目を浴びながら、前夜の落雷の話をしている子が必ずいた。話の中身は、クラスメイトも皆知っている停電は変電所に雷が落ちたからだとか、光ってからすぐドーンとなったから、あれは絶対近所の山に落ちたとか。もしかしたら、いつになっても雷は子供達の注目の的なのかもしれない。
僕が小学校4、5年の頃、学校の近くに貸本屋があると友だちに教えてもらって訪れた。少年サンデーや少年マガジンなどの週刊本を店の一番目立つところに置いていた。しかし、大半は貸本用に書かれた漫画で、普通の本屋さんには売られていないものばかり。誰も知らない漫画家たちが誰も知らない漫画をたくさん描いていた。安っぽい作りの本たちは、一冊10円とかで貸し出されていた様に記憶する。
その中に、タイトルはうろ覚えだが『電気人間』という話があった。雷に打たれた主人公は、本来は死んでしまうはずなのに何故か生き残り、おまけに体に電気を帯びてしまい、本人の意識に反して人々の恐怖の対象になっていくというお話。子供心に、雷に打たれたら大変なことになると本気で思ったものだ。
今となっては、発雷予測が出るたびに、被害が出ないことはもちろんのこと、怖い思いをしなければいいと思う。
変電所、森の中、電気人間。これから落ちる雷は何処へいくのだろう。