私が子どもの頃、半年だけ通った小学校の
近くで、夕方の時間帯によくすれ違う、
不思議なおじさんがいました。
おじさんはいつも、自転車に乗っています。
ごく普通の自転車です。
でも、そのおじさんが自転車に乗っている姿は、
他の大人とは、どことなく違うのです。
他の大人は、せかせかペダルをこいでいて
目的地へと急いでいるのに、
そのおじさんは、まるで自転車に乗るために
自転車に乗っているような印象でした。
そして、おじさんの周りの空気(つまりオーラ)は
なんだか、とてもパワフル。特に頭の周りで
エネルギーがフル稼働しているらしいのが、
子ども心に、なんとな~く分かりました。
「あのおじさんは誰なんだろう」
と思っていたら、程なく答えが分かりました。
ある日、テレビで紹介されていたのです。
おじさんは、私が大好きなテレビ番組
「ゲゲゲの鬼太郎」の原作者で、
有名な漫画家の先生だということでした。
その日から先生にすれ違うと、子どもの私は
「あ、鬼太郎のおじさんだ」と思うようになりました。
あの時、「鬼太郎のおじさん」は自転車に乗りながら
漫画のアイディアを考えていらしたのだと知ったのは
最近、奥様が書いた本を読んで、でした。
せかせか自転車に乗っている人は、
目の前に目的地の画像をぶら下げていたり
するのですが、「鬼太郎のおじさん」にはそれがなかった。
頭の周りのエネルギーは、クリエイティブのエネルギー。
アイディアを考えていて、フル稼働だったから、
子どもの目にも、パワー全開に見えたのかなと思いました。
最近、奥様の本を原作にしたドラマが
放送されています。
ドラマの中で、「鬼太郎のおじさん」は、ご自分の娘さんに
「おとうちゃん、妖怪って本当にいるの?」と聞かれたとき、
戦地で不思議な体験をした話を例に、
「目に見えるものだけ信じて、
目に見えないものを信じない、
っていうのはどうなのかな」
というような主旨の話をしていました。
ドラマのセリフなので、本当にそうおっしゃったのでは
ないのかも知れませんが・・・。
今、私が毎日仕事で見ているオーラも、
誰もが肉眼で見えるものではないかもしれないけれど、
確かに存在しています。
ドラマの中のセリフではありましたが、
そのことばは、私の心に残りました。
勇気づけられるセリフでした。
ところで、子どもの私は、妖怪なんだけど人間くさい
鬼太郎やネコ娘たちの世界が大好きでした。
現実の世界だけでなく、そういう世界も
本当にあるのかも、と想像してワクワクしたものです。
鬼太郎、またテレビでやらないかな・・・。