美男2
~Another Story~

「寝かさないから…」
*74*




カーテンが、風で、ゆらゆらと揺れている。
カーテンの隙間から、朝の光を感じ、ミニョは、目を覚ました。
耳に聞こえるのは、隣で眠るテギョンの安らかな寝息と、波の打ち寄せる音だった。

CD発売日の前日の早朝、記者たちから逃げるように、テギョンとともに飛行機に乗り、とある国のリゾート地に着いた。

テギョンは、昨日、昼にホテルに着いた直後から夜明けまで、仕事をしていたようだった。

ミニョは、眠っているテギョンを起こさないように、そっと、ベッドから抜け出した。

ベランダに出ると、目の前は、一面のオーシャンブルーの海が広がる。
このリゾートホテルは、海のそばに建っており、部屋は、すべて、コテージだった。





海風を全身に感じながら、ミニョは、深呼吸をし、大きく伸びをすると、不意に、後ろからギュッと抱き締められる。

「キャッ!?」

テギョンはまだ眠いのか、無言のまま、ミニョの腰に腕を回し、ミニョの肩に、頭を凭れかけている。

「もう・・・ビックリしたぁ・・・テギョンさん、昨日、夜遅かったんですよね?もう少し、ゆっくり休んでた方がいいんじゃないですか?」

「・・・お前が居なきゃ・・・眠れない・・・俺の身体が心配なら、早く、ベッドに戻れ・・・」

テギョンの不眠症は、ミニョと一緒に寝ることにより、以前に比べ、改善していた。
ミニョがいることは、テギョンを何より安心させ、心を癒していた。
テギョンの日常生活において、ミニョは、必要不可欠の存在になっていた。

耳元で囁かれたミニョは、忽ち、頬を真っ赤にしている。

「おい、顔が真っ赤だぞ。」

声を殺して笑っているテギョンに、ミニョは、頬を膨らました。

「テギョンさん、私をからかったんですか!?」

「クク・・・からかうわけないだろ・・・今夜、寝かせるつもりないから・・・」

「ど、ど、どういうことですか?」

「・・・お前が欲しい・・・いいだろ?」

ミニョの真っ赤になった耳元で、テギョンは、いつになく、艶のある甘い声で囁いた。




★★★★

次の次に、アメ記事予定してます。
「今宵…」で、自分では、かなりの濃厚なモノを頑張って描いたので、今回は、あっさりめに…なので、あんまり期待なさらないでくださいね。

アメ記事含み、あと2、3話で、エピローグを迎えますので、もう少し、お付き合いくださいませ。










































美男2
~Another Story~

「プロポーズ」
*73*




時を遡ること、ミュージックビデオの撮影時。

ミュージックビデオのラストシーンが、プロポーズされるシーンだった。

ピンクのミニドレスを着たミニョの前で、正装したテギョンが跪き、ダイヤの指輪を差し出す。

『俺と、結婚してくれ』

ミニョは、高鳴る胸に手を当てると、頬を紅く染めながら、ニッコリと頷く。
テギョンは、ミニョの手をとると、左手の薬指に指輪を嵌めた。
涙目になるミニョを、テギョンが抱き締める。
ふたりの頭上で、白い花びらがたくさん舞っている。
それは、いつの間にか、結婚式のフラワーシャワーに変わり、ウェディングドレスを着たミニョとテギョンがキスをしている。そんなシーンで、ミュージックビデオが終わっている。

それは、ミュージックビデオのプロポーズ撮影時、カメラの長回しで、ミニョを抱き締めていたテギョンが、ミニョの耳元で囁いた。

『本当に、俺と結婚してくれるか?』

『は、はい!?そ、そ、それは・・・!?』

『なんだ、イヤなのかよ?』

『い、イヤじゃないです。も、もちろん、すごく、嬉しいですけど・・・ほ、本当に、ですか?』

『俺が、嘘つくとでも思ってるのか?

ミニョ・・・愛してる

俺と、結婚してくれ・・・』

『・・・はい

私で・・・良ければ・・・』

ミュージックビデオの撮影中に、テギョンは、プロポーズをしてしまったわけである。
テギョンは、ミニョと再会してから、『結婚』を強く考えていた。

『ミニョを二度と失わない為に・・・』

『ミニョのそばにいる為に・・・』

状況はどうであれ、プロポーズは成功した。
あとは、ミナム含むメンバーと、事務所に、事後報告するだけだ。

テギョンは、ミニョを抱き締めながら、幸せな笑顔をみせていた。





ミュージックビデオの撮影後、今後の話し合いのため、テギョンとミニョは、社長室にいた。

結婚は、誰にも反対はされなかったが、アン社長は、やっぱり、取り乱し、頭を抱えていた。

『ま、ま、まさか、子どもが出来たのか?』

テギョンにだけ聞こえるように、声を潜ませるアン社長。

『いいえ、まだです!』

不貞腐れたように、口を尖らすテギョン。
ミニョと再会してから、一緒に寝ることはあっても、まだ、一度も、肌を重ねることはなかった。タイミングを見計らってはいるのだが、住んでる場所が、合宿所では、もちろん、無理で・・・
テギョンは、欲求不満だった。

『じゃあ、今すぐ、じゃなくてもいいだろう?』

『今回のCD発売を最後に、ミニョは、芸能界を引退しようと、考えています。』

『ほ、本当なのか?』

『・・・はい。アン社長、すみません。私には、やっぱり、この世界は、向いてないみたいです。
あと、ひとつお願いがあるのですが、今回のCDの売上を寄付したいのですが、よろしいですか?』

『それは、構わないが・・・本当にいいのか?』

『はい、テギョンさんの作った曲を、また歌うことが出来て、本当に嬉しかったです。それだけで、十分です。ありがとうございました。』

ミニョは、満足そうな笑顔をみせると、深々と頭を下げた。

『これから、ふたりで暮らすから、俺は、合宿所を出るから。マスコミには、CD発売と同時に、発表してくれ。俺たちは、記者たちを回避するために、国外に飛ぶから、一週間くらい、休みをくれ。』

『おいおい、テギョ~ン、勝手に決めるなよぉ・・・』

『それまでの仕事は、全て、抜かりなくやっておきますので、社長、よろしくお願いします。』


そして、CD発売日。

ふたりが出演しているミュージックビデオは、色々なメディアで流され、ミニョのCDの売れ行きは上々で、売り切れまで出ていた。

事務所の前は、記者とファンで埋め尽くされていた。
アン社長は、拡声器を使っている。

『本人たちは、ただいま、休暇中につき、国内にいません。会見は、後日、テギョンのみで行いますので、どうぞ、お引き取りください!』

その日は、ずっと、蜂の巣を突っついたような騒ぎだったことは、言うまでもない。




★★★★









美男2
~Another Story~

「発表」
*72*



二度目のミュージックビデオの撮影。

久しぶりの撮影だからか、ミニョの顔は、緊張で強張っていた。
それでも、本番となれば、野外で、雪がチラチラ降るなか、薄着の衣装で、一生懸命、感情を込めながら、歌っている。
一通り、ミニョだけの撮影を終えると、恋人とのシーンの撮影に入る。

恋人役は、テギョンが演じているのだが、これが、記憶が『ある』のと『ない』のでは、こうも違うものか・・・と思うくらいに、テギョンの態度が違っていた。

「あの・・・テギョンさん・・・唇が・・近いですけど・・・」

「なんだよ?イヤなのか?」

「あの、リハーサルは、フリでいいんですよね?」

「リハーサルからやった方が、お前だって感情が入ってやりやすいだろ?」

キスシーンのリハーサルで、テギョンは、わざと、唇をギリギリまで近づけてくる。
意地悪そうな笑顔を浮かべながら、顔を真っ赤にしているミニョをからかっている。

本番では、なんの躊躇いもなく、ミニョにキスをしてくる。

しかも、カメラチェックの際、『角度が気に入らないから』と、テギョンは、もう一度、キスシーンを撮り直しを要求している。

いつも、女優を目の前にしても、興味がなく、仏頂面のテギョンが、ミニョの前では、楽しそうに、からかっていたり、演技以外でも、柔らかな表情を浮かべている。

いつものテギョンと違うと、現場の誰もが思う。

最初は、『メンバーの妹だから、気心が知れているのだろう・・・』

と、誰もが思っていたが・・・
そのうち・・・

『ファン・テギョンとコ・ミニョは、付き合っているのでは・・・?』

そんな噂が、現場では広まっていた。

それから、ミニョの新しいCDが発売されると同時に、世間を大いに騒がせる発表がされる。

『ファン・テギョン&コ・ミニョ 婚約発表 !!コ・ミニョ 芸能界を正式に引退!』




★★★★