美男2
~Another Story~

「プロポーズ」
*73*




時を遡ること、ミュージックビデオの撮影時。

ミュージックビデオのラストシーンが、プロポーズされるシーンだった。

ピンクのミニドレスを着たミニョの前で、正装したテギョンが跪き、ダイヤの指輪を差し出す。

『俺と、結婚してくれ』

ミニョは、高鳴る胸に手を当てると、頬を紅く染めながら、ニッコリと頷く。
テギョンは、ミニョの手をとると、左手の薬指に指輪を嵌めた。
涙目になるミニョを、テギョンが抱き締める。
ふたりの頭上で、白い花びらがたくさん舞っている。
それは、いつの間にか、結婚式のフラワーシャワーに変わり、ウェディングドレスを着たミニョとテギョンがキスをしている。そんなシーンで、ミュージックビデオが終わっている。

それは、ミュージックビデオのプロポーズ撮影時、カメラの長回しで、ミニョを抱き締めていたテギョンが、ミニョの耳元で囁いた。

『本当に、俺と結婚してくれるか?』

『は、はい!?そ、そ、それは・・・!?』

『なんだ、イヤなのかよ?』

『い、イヤじゃないです。も、もちろん、すごく、嬉しいですけど・・・ほ、本当に、ですか?』

『俺が、嘘つくとでも思ってるのか?

ミニョ・・・愛してる

俺と、結婚してくれ・・・』

『・・・はい

私で・・・良ければ・・・』

ミュージックビデオの撮影中に、テギョンは、プロポーズをしてしまったわけである。
テギョンは、ミニョと再会してから、『結婚』を強く考えていた。

『ミニョを二度と失わない為に・・・』

『ミニョのそばにいる為に・・・』

状況はどうであれ、プロポーズは成功した。
あとは、ミナム含むメンバーと、事務所に、事後報告するだけだ。

テギョンは、ミニョを抱き締めながら、幸せな笑顔をみせていた。





ミュージックビデオの撮影後、今後の話し合いのため、テギョンとミニョは、社長室にいた。

結婚は、誰にも反対はされなかったが、アン社長は、やっぱり、取り乱し、頭を抱えていた。

『ま、ま、まさか、子どもが出来たのか?』

テギョンにだけ聞こえるように、声を潜ませるアン社長。

『いいえ、まだです!』

不貞腐れたように、口を尖らすテギョン。
ミニョと再会してから、一緒に寝ることはあっても、まだ、一度も、肌を重ねることはなかった。タイミングを見計らってはいるのだが、住んでる場所が、合宿所では、もちろん、無理で・・・
テギョンは、欲求不満だった。

『じゃあ、今すぐ、じゃなくてもいいだろう?』

『今回のCD発売を最後に、ミニョは、芸能界を引退しようと、考えています。』

『ほ、本当なのか?』

『・・・はい。アン社長、すみません。私には、やっぱり、この世界は、向いてないみたいです。
あと、ひとつお願いがあるのですが、今回のCDの売上を寄付したいのですが、よろしいですか?』

『それは、構わないが・・・本当にいいのか?』

『はい、テギョンさんの作った曲を、また歌うことが出来て、本当に嬉しかったです。それだけで、十分です。ありがとうございました。』

ミニョは、満足そうな笑顔をみせると、深々と頭を下げた。

『これから、ふたりで暮らすから、俺は、合宿所を出るから。マスコミには、CD発売と同時に、発表してくれ。俺たちは、記者たちを回避するために、国外に飛ぶから、一週間くらい、休みをくれ。』

『おいおい、テギョ~ン、勝手に決めるなよぉ・・・』

『それまでの仕事は、全て、抜かりなくやっておきますので、社長、よろしくお願いします。』


そして、CD発売日。

ふたりが出演しているミュージックビデオは、色々なメディアで流され、ミニョのCDの売れ行きは上々で、売り切れまで出ていた。

事務所の前は、記者とファンで埋め尽くされていた。
アン社長は、拡声器を使っている。

『本人たちは、ただいま、休暇中につき、国内にいません。会見は、後日、テギョンのみで行いますので、どうぞ、お引き取りください!』

その日は、ずっと、蜂の巣を突っついたような騒ぎだったことは、言うまでもない。




★★★★