「恋しくて…」



*24*



「…オトカジ」

車の助手席に座ってるミニョが、スマホのネットニュースを見ながら呟いた。
運転しているのは、もちろんテギョンだ。

「もう、ネットニュースに出回ってるのか」

『A.N.JELL ファン・テギョン 結婚を電撃発表!事務所も公認コメント。』

当の本人は、ネットニュースにもあっさりとした反応だが、ミニョが帰国するまでの期間、結婚発表までの準備に余念がなかった。
ミニョを空港まで迎えに行き、目撃されることも、計算済だ。空港での目撃写真がネットにあがると同時に結婚を発表する。
結婚発表を知らないミニョは、怖じ気づいて逃げようとしてたが…
テギョンの車は、今頃、蜂の巣を突っついたように騒がしい事務所や、馴染みの合宿所でもなく、見慣れない高層マンションの駐車場に入っていく。

「テギョンさん、ここは?」

「新しい住まいだ。」

テギョンはエントランスに入ると、慣れた手つきで、オートロックを解除した。
エレベーターに乗ると、エレベーターは上へと向かっていく。最上層のフロアでエレベーターは止まった。
テギョンはドアのロックを解除すると、ミニョを中へと促した。

「うわぁ..」

モデルルームのような綺麗な部屋に、ミニョはキョロキョロと辺りを見回す。

「あの、合宿所はどうしたんですか?」

「1年前に出たんだ。今は後輩たちとジェルミが住んでる。」

「他の部屋も見ていいですか?」

ミニョのキラキラした瞳が好奇心いっぱいで輝いてた。テギョンはその瞳を見つめながら、ニヤリと口角があがる。

「これから、お前の家でもあるんだから、遠慮なんかいらない。」

ミニョの頬が、ボンッ!と火がついたように真っ赤になる。

「あ、あ、ありがとうございます。」

真っ赤になった頬を両手で押さえながら、パタパタとスリッパの音を立てて、ミニョは他の部屋に消えていく。

 本当に飽きないヤツだな…

テギョンは口元で手を隠して笑っていた。
ひとしきり、部屋の見学を終えたミニョは、リビングのソファに座って、タブレットを見ているテギョンの元に戻ってきた。テギョンが手招きするとミニョはソファに座ったが、また何か思い出したように慌てはじめた。

「どうした?」

「あ!!あの、結婚発表とかで、事務所とか大丈夫なんですか?」

「あぁ、問題ない。」

「もう、ビックリしたんですからね。いきなり、結婚発表を公表するなんて…きいてないし…」

不満そうに口を尖らすミニョ。

「結婚するって約束しただろ?なんだ、ブタウサギ、もう、忘れたのか?もう一度、プロポーズした方がいいか?」

テギョンは意地悪そうな顔で、ミニョの頬を両手でぎゅっと挟む。

「おっはのいひあう(オッパのイジワル)」
「お前の方がズルイ」

テギョンはニヤリと笑うと、ミニョの尖った唇に軽くキスをすると、ミニョをソファに押し倒す。ミニョのふにゃりと幸せそうに笑った頬から、涙が一筋流れ落ちる。

「オッパ、会いたかったです。」
「俺も、会いたかった。」

テギョンはミニョの濡れた頬を優しく親指で撫でながら、優しく啄むような口づけをした。




★★★★

はい、ひょっこりはん  |ョω・`)
お久しぶりでございます。
いつも突然現れて、申し訳ないです。
ハナシの描き方を忘れ、語彙力もなく、なんとも公開していいか、わからない駄文になってしまったことをお許しくださいませ。
やっと、次回で最終回です。
近々、更新しますので、最後まで、どうぞお付き合いくださいませ。
















「恋しくて…」



 *23*




テギョンたちが帰国する日、空港にはミニョの姿はなかった。
ミニョは仕事があったため、見送りに行かなかったのだ。

「いいのか?」

「何がです?」

オフィスの屋上、ミニョは、ソンミンとコーヒー片手に休憩をしていた。

「今日、帰るんだろ」

ソンミンはそう言って、空を見上げた。

「行っても、泣いて困らせてしまうだけですし、それに、何処にいても、星は見えますから、大丈夫です。」

「星?」

首を傾げるソンミンが見上げる空は、雲ひとつない青空だった。

「はい、ピカピカの一番星です。」

そう言いながら、ミニョも空を見上げた。



そして、半年の月日が経ち………



ミニョは、韓国へと戻ってきた。
テギョンには、帰国することをトークアプリで伝えてあるが、それ以降、テギョンからの返信はなかった。
テギョンからの返信が遅いのは珍しくもなく、また仕事が忙しいのだろうと思い、ミニョは、スマホを仕舞う。とりあえず、久しぶりに院長先生に会おうとバス乗り場に行こうと歩みはじめたとき、周りが騒がしくなっていた。

「何かしら?」

辺りを見回したミニョが見つけたのは、サングラスをしても隠しきれてないオーラが眩しいファン・テギョン本人だった。

「テギョンさん!?」

テギョンがミニョを見つけると口を尖らし、顔を隠すようにフードを被ると、鬼のような形相で突進してくる。
周りの歓声とテギョンの顔に怖じ気づいたミニョは、これは知らないふりして、逃げた方がいいのではないか?と考え、ワタワタと慌てたようにトランクに手をかけ、その場から離れようとしたとき、一足早く、テギョンがミニョの手を掴んでいた。

「二度と俺から逃げれると思うなよ、ブタウサギ。」

テギョンはミニョのトランクと手を掴むと走り出す。なんとか騒ぐファンたちを撒いて、テギョンは狭い物陰に隠れた。
息を整えるよう上下するテギョンの胸元にミニョの顔が隙間なくピッタリとついている。
テギョンは、そのままミニョの肩を抱き寄せた。
久々に感じるミニョの匂いや温もりに、安堵のため息がもれる。
音信不通の2年よりこの半月の方がずっと長く感じていた。

「おかえり、ミニョ」

低くていつもより甘いテギョンの声とテギョンの匂いと温もりに包まれて、テギョンの元に帰ってきたんだと思うと、涙が溢れてくる。

「ただいま、テギョンさん」

ミニョは、ギュッとテギョンの背中にしがみついた。
しばらくの間、ふたりは抱き合ったまま、その場から離れようとしなかった。






★★★★★★


はい、お久しぶりです。
ミニョ、帰ってきました。
そして、今日はあのヒトも帰ってくる日と重なったので、ブログ更新しました。
あと、2話で完結(予定)します。















「恋しくて…」



*22*



本日の撮影は、写真集と最新作のアルバムのジャケット撮影も行う。

撮影場所は、有名ブランド店も並ぶ5番街
メンバーカラーをアクセントにした衣装を着たA.N.JELLのメンバーは、ソンミンの指示に従ってポーズを次々と撮っていく。
メンバーの撮影が終わると、個々の撮影へ。
衣装をチェンジしての撮影がはじまる。
ティファニーの前では、サングラスを片手にオードリーヘップバーンを真似たポーズを取っている。オシャレな街並みを背景に撮影をしていく。

「OK!一旦、休憩しよう」

最後は、テギョンの撮影で終わる。
テギョンは撮影が終わっても、ティファニーのウィンドウの前で立ち止まっていた。


レストランに入って、少し遅めの昼食と休憩をする。
ミニョは早めに食べ終えると、スケジュールの確認をしていると、肩を叩かれた。

「あ…あ…テ、テギョンさん、ど、どうしました?」

「ちょっと付き合え」

昨夜のことを思い出してひとり慌てるミニョをよそに、テギョンはミニョの腕を掴み連れ出した。

テギョンはレストランから出ると、先ほど、撮影をしていたティファニーの前に来た。

「え、え、あ、あの、入るんですか?
こんな格好じゃ…ちょっと…」

ミニョは、ノーメイクでざっくりとまとめた髪。黒縁メガネにチェックのロングシャツにスキニーパンツ、コンバースのスニーカーというカジュアルな出で立ちだった。
それでもテギョンはミニョを連れて、ショップ内へ入って、2階フロアに向かった。
テギョンは、流暢な英語で店員に話しかけると
店員は頷く仕草をみせると、テギョンとミニョを椅子に座らせた。

「あ、あ、あの…テギョンさん…」

状況が把握出来ず、戸惑ってるミニョの前に用意されたのは、ダイヤが輝くエンゲージリングだった。

「また、離れるんだ、約束ぐらいさせろ。」

テギョンはミニョの左手を握ると、ミニョを見つめるとニッコリと微笑んだ。

「コ・ミニョ、俺と結婚しろ」

ニッコリと微笑むテギョンに、一気に体温が上がっていく。
どうすればいいか、ミニョはわからず咄嗟に鼻を押さえていた。

「相変わらずだな、ブタウサギ。
で?返事は?ノーでも受け取ってもらうけどな。」

ニヤリと笑ったテギョンは優雅な手つきで、エンゲージリングを取ると、ミニョの左手薬指に嵌めた。
ダイヤモンドがキラリと輝くエンゲージリングを見つめながらミニョが呟く。

「いいんですか?」
「何が?」
「私で、いいんですか?」
「何を、今更。
  俺にはお前だけだ。お前だけを愛してる。」

テギョンはミニョの手の甲に恭しく口づけをした。感極まって、ミニョは顔を覆って泣き出してしまう。

「わ、私も……私も、愛してます」

「ああ、なくすなよ。」

テギョンは嬉しそうに笑いながら、ミニョの涙の粒を指で拭っていたが、
ショップを出ると、ミニョの左手薬指に指輪はなく、代わりにエメラルド色の紙袋をぶら下げていた。

「こんな高価なもの、なくしたら大変ですから。仕事中は出来ないし…」

と、困ったように口をすぼめたミニョが徐に指輪を外していたのを、テギョンも口も尖らして見ていたのは言うまでもなく…

最後は、夜のタイムズスクエアで撮影をし、ニューヨークでの撮影は無事終了した。
テギョンたちは、明日の飛行機で帰国をするため、ミニョを誘って、テギョンたちはレストランで食事をした。和やかな雰囲気のなか、テギョンが立ち上がった。

「みんなに、話がある。」

テギョンへと視線が集まる。

「コ・ミニョと結婚する。」

テギョンの発言に、反応は様々だった。

シヌは小さなため息をつき、ワンは、隣にいたマ室長をヘッドロックして大いに喜び、

「おめでとう、ヒョン!!」
ジェルミは、テギョンに飛び付こうとしたが、頭を叩かれ、テーブルに撃沈していた。

ミニョの隣に座っていたミナムは、真っ赤な顔で恥ずかしそうに俯いてしまっているミニョの頭をグリグリと撫でていた。
「良かったじゃん、ミニョ」
「うん、ありがとう…お兄ちゃん
……反対しないのね?」
「反対した方がいいか?」
「え!?」
目を丸くして驚いているミニョに、ミナムは笑って、ミニョの肩を抱くと頭をくっつける。
「ウソだよ、お前が幸せだったら、それでいい。幸せなんだろ?」
「うん。」

「コ・ミナム!!ミニョに触るな!!」
「テギョンヒョン、独占欲強すぎ。」
ミナムはテギョンに見せつけるようにくっつけた頭をグリグリしてる。
それをテギョンは三角の目で怒り、ミニョはクスクス楽しそうに笑ってる。


ニューヨークの最後の夜は、ニューヨークの夜景のように賑やかに更けていった。














★★★★★