「恋しくて…」



 *23*




テギョンたちが帰国する日、空港にはミニョの姿はなかった。
ミニョは仕事があったため、見送りに行かなかったのだ。

「いいのか?」

「何がです?」

オフィスの屋上、ミニョは、ソンミンとコーヒー片手に休憩をしていた。

「今日、帰るんだろ」

ソンミンはそう言って、空を見上げた。

「行っても、泣いて困らせてしまうだけですし、それに、何処にいても、星は見えますから、大丈夫です。」

「星?」

首を傾げるソンミンが見上げる空は、雲ひとつない青空だった。

「はい、ピカピカの一番星です。」

そう言いながら、ミニョも空を見上げた。



そして、半年の月日が経ち………



ミニョは、韓国へと戻ってきた。
テギョンには、帰国することをトークアプリで伝えてあるが、それ以降、テギョンからの返信はなかった。
テギョンからの返信が遅いのは珍しくもなく、また仕事が忙しいのだろうと思い、ミニョは、スマホを仕舞う。とりあえず、久しぶりに院長先生に会おうとバス乗り場に行こうと歩みはじめたとき、周りが騒がしくなっていた。

「何かしら?」

辺りを見回したミニョが見つけたのは、サングラスをしても隠しきれてないオーラが眩しいファン・テギョン本人だった。

「テギョンさん!?」

テギョンがミニョを見つけると口を尖らし、顔を隠すようにフードを被ると、鬼のような形相で突進してくる。
周りの歓声とテギョンの顔に怖じ気づいたミニョは、これは知らないふりして、逃げた方がいいのではないか?と考え、ワタワタと慌てたようにトランクに手をかけ、その場から離れようとしたとき、一足早く、テギョンがミニョの手を掴んでいた。

「二度と俺から逃げれると思うなよ、ブタウサギ。」

テギョンはミニョのトランクと手を掴むと走り出す。なんとか騒ぐファンたちを撒いて、テギョンは狭い物陰に隠れた。
息を整えるよう上下するテギョンの胸元にミニョの顔が隙間なくピッタリとついている。
テギョンは、そのままミニョの肩を抱き寄せた。
久々に感じるミニョの匂いや温もりに、安堵のため息がもれる。
音信不通の2年よりこの半月の方がずっと長く感じていた。

「おかえり、ミニョ」

低くていつもより甘いテギョンの声とテギョンの匂いと温もりに包まれて、テギョンの元に帰ってきたんだと思うと、涙が溢れてくる。

「ただいま、テギョンさん」

ミニョは、ギュッとテギョンの背中にしがみついた。
しばらくの間、ふたりは抱き合ったまま、その場から離れようとしなかった。






★★★★★★


はい、お久しぶりです。
ミニョ、帰ってきました。
そして、今日はあのヒトも帰ってくる日と重なったので、ブログ更新しました。
あと、2話で完結(予定)します。