「待宵月に揺れる花」*4*


「願い」




官吏たちが集まる宴に、いつもは姿を現すことのないテギョンの姿があった。

“あ、テギョン様・・・”

ウォルファはテギョンの姿を確認するが、
テギョンの周りには、すでに群がる妓生たちの姿があり、ウォルファにも相手がいた為、テギョンに近付くことは出来なかった。
普通の恋人同士だったら、彼の傍にいることが容易く出来るだろうが、所詮、身分の違う者同士、いくら想いが通じようとも越えられないものがあった。
ウォルファは、そっと胸にテギョンの想いを秘め、テギョンではない男の相手をした。
ウォルファの美しい笑みを見つめながら、上機嫌に酒を呑んでいた男の酔いが回ってきたのか、ウォルファの腰に遠慮なく手を回し、チマを捲りあげようとしていた。

「旦那様、申し訳ございません。少しだけ席を外させていただきますね」

酔っ払いのあしらい方に慣れているウォルファは不快な顔を一切見せず、笑顔のまま、そっと腰に回されていた男の手を取り、両手で包み込むように握った。
ウォルファの柔らかな手の感触に、男はだらしない笑顔を浮かべる。
ウォルファは席を立ち、美しい笑みと甘い残り香を残しながらその場から離れた。
ウォルファは宴の席から離れると、一息を吐いた。廊下を進み、自室に入ろうとしたとき、力強く肩を掴まれた。

「・・・テギョン様!?」

ウォルファは、突然現れた愛しい男(ヒト)に驚き、目を見開いたのも束の間、すぐに腕を掴まれ自室へと引き込まれた。
テギョンの手が扉を閉めたと同時に、ウォルファは、テギョンに壁際まで追い込まれた。テギョンと壁に挟まれ、ウォルファは身動きがとれなくなっていた。

「・・・ミニョ」

それは、愛しい男(テギョン)だけが呼んでくれる自分の真名。
自分の真名を呼ぶテギョンの声は、熱を持ちながらも、甘く、耳に響き、まるで束縛でもされるように、テギョンだけしか見えなくなってしまう。
ミニョの瞳は、テギョンだけを映す。
テギョンの唇がミニョの紅い唇に触れる刹那、ミニョがふと顔を逸らしてしまう。

「・・・ダメです。」

一段と盛り上がる宴の音が聞こえ、ミニョは、まだ宴の途中であることを思い出してしまう。紅が落ちてしまえば、客人の前に戻ることも出来ない。客人の相手など出来ない妓生など、妓生として許されぬことだ。
顔を逸らすミニョに、テギョンは、不服そうに口を尖らし、ミニョの顎を掴む。
ミニョが首を振ろうが力ずくで顎を掴むテギョンの顔は怒っているような悲しんでいるようにも見え、噛みつくような口づけをされた。

「ん ッ・・・んッ・・」

どんなに抵抗しようが、傍若無人なテギョンの舌が絡み付き、口腔を犯され、ミニョは絆(ほだ)され、ぐったりと身体の力が抜け、テギョンのされるがままになっていく。

《アメ記事 気まぐれで入れちゃうかも…よ(。-∀-)》

宴の音など耳に入らず、テギョンの熱い息遣いだけが、熱く耳に残り、汗ばんだテギョンの硬質な身体に抱かれながら、ミニョは甘美な表情を浮かべていた。

テギョンと肌を重ねているだけで、心が満たされ、穏やかな気持ちになる。

“夜が明けようとも、陽が昇り、また陽が沈もうとも、このままでいたい”

と、何度、想ったことだろうか・・・

夜が明ければ、テギョンは行ってしまう。
そのときは笑顔で送り出すが、テギョンの姿が見えなくなれば、泣いている自分がいる。一度、テギョンとの別離を経験したせいだろうか、“もう二度と離れたくない” “一緒にいたい”という願いが、更に強くなっていた。
だが、どんなに強い願いであっても、ミニョには越えられない壁があり、その願いが叶うことないことなど、ミニョには十分とわかっていたから、これ以上は望まずにいた。
だが、テギョンも同じ願いであることを、ミニョは知ることになる。

「ミニョ、お前の身請けを考えている。」

「身請け・・・ですか?」

「お前を正妻として迎えいれたい。」

目の前に大きな壁が立ちはだかり、ミニョの顔色が曇る。

「嬉しくないのか?」

「そ、そんなこと・・・無理です。私は、妓籍を抜けたとしても、卑しい身分のままです・・・。」

変えることのできない現実に、ミニョは、悲しそうに目を伏せる。

「俺は、お前と一緒にいたい。お前が、俺が見えないところで、俺以外の男を相手している、それが妓生の生業だとしても、赦せない、気が狂いそうだ・・・。
ミニョ、お前は、俺だけを見ていればいいんだ。お前に触れていいのは、俺だけでいい。
お前が気にしている身分のことは、これから、アン大監に相談してみようと思う。
だから、ミニョ・・・
お前も、悲観的なことを考えずに、これからの未来について考えろ。わかったな・・・?」

望んではいけないことだと思った。
それでも、願わずにはいられない願いだった。そんな願いを必死に考え、叶えようとしてくれているテギョンに、ミニョは嬉し涙を流しながら抱きついた。

「ありがとうございます、テギョン様」





★★★★

ハナシが思い浮かばなく、ミニョ側のハナシになりました。
途中、ちょっと気になる言葉があったと思いますが…(笑)
最近、
甘いのが足りないんだぁ‼
欠乏症気味なんだぁー(*`Д´)ノ!!!
てことで、うちのがうるさいので(誰とはいいませんが…)、気まぐれで入れちゃうかも…ですので、期待せずにお待ちくださいませ。

それでは、次は……うふふラブラブラブラブラブラブ

てことで、また…( ゚∀゚)ノ

ああ、下の画像はちょうどイメージに合うのがあったのでコラボってみました。



















今回のSS(ちょっとしたハナシ)は、現在、韓国で放送中のシネちゃん主演ドラマ「ドクターズ」より、シネちゃんのビハインドカットから出来たハナシです。
「美男2」とは設定が違いますので、悪しからず。
それでは、無防備なシネちゃんの寝姿とともに、どうぞ。


「一緒に帰ろう」


ミニョの父親である「コ・ジェヒョン」の命日が近くなったある日のこと、ミニョがテギョンの部屋をノックして、ドアの隙間から顔を出す。

「オッパ、ちょっといいですか?」

「どうした?」

「お父さんの命日が近いので、明日、お父さんの故郷に行こうと思うんです。」

「はぁ?聞いてないぞ、そんな話…」

テギョンが不満そうに口を尖らす。

「オッパ、最近、忙しそうだったので、ごめんなさい、言うの遅くなって…。」

「明日も、俺は、朝から仕事だから、連れて行けないぞ?」

「あぁ、大丈夫です。ミジャおばさんと一緒に行きますから。たぶん、明日、泊まって、明後日にはひとりで帰ってきますから。」

「一度、コジェヒョンssiに挨拶がしたかったが…今回は仕方ない、気をつけて行ってこい。」

「ん?あ、はい、ありがとうございます。」

テギョンの言葉の意味がわからず、首を傾げながらも、ミニョは、ペコリと頭を下げた。

そして翌日、ミニョは、ミジャおばさんと一緒に父親の故郷へと出かけて行ったのだった。

そして、翌朝、田舎町に似合わない青のアウディが停まった。
そして、これまた田舎町に似合わないモード服を着た男が颯爽と車から降り立つ。

「あら、リーダー迎えに来てくれたのかい?」

庭先にいたミジャおばさんが、気軽に声を掛けた。

昨日、朝から晩まで仕事をしていたテギョンが、翌朝、ミニョを迎えに来たのだ。
もちろん、ミニョには迎えに来ることは伝えず、内緒に来たのだが…

「リーダー、せっかく来てくれたのに、ミニョなら、まだ、部屋で寝ているよ。」

テギョンが、家の中に入り、そっと、引き戸を開け、部屋を覗いてみる。






そこには、ぐっすりと眠るミニョの姿が。
あまりにも無防備な寝姿に、テギョンの頬が弛んでしまう。
そして、ミニョの腕の中には、なぜか子犬がいる。

「なぜ、子犬がいる?おい、そのポジション、ズルイぞ…」

ミニョにムギュと抱き締められている子犬に、テギョンの口は尖っていく。




そのとき、ミニョが目を覚ましたらしく、バッチリとその寝ぼけ眼の目と口を尖らしたテギョンと目が合う。

「んん?オッパぁ?どうして、此処にいるんですか?」

なんとも、ミニョの寝ぼけた言葉に、テギョンの口は更に尖る。

「お前、『オッパ、会えて、嬉しいですぅ』の一言もないのか!?」

「だって、目覚ましたら、まさか、ホンモノのオッパがいるとは思わなかったんですぅ。」

怒っているテギョンに、ミニョは口をすぼませている。

「その子犬はなんだ?」

「このコ、ミジャおばさんのお友達が飼っている子犬なんです。かわいいですよね。サンチュっていう名前なんですよ。」

ミニョがサンチュを抱き上げると、サンチュがミニョの鼻を舐める。

「サンチュ、くすぐったいよぉ~」

子犬とじゃれているミニョがなんだか面白くないテギョンがサンチュを取り上げるように抱き上げると、サンチュを引き戸の外に出してしまう。

「あっ、オッパ、ヒドイですぅ」

口をすぼませるミニョの鼻に、テギョンが噛みついた。
驚きで目を真ん丸にしながら、テギョンを見つめるミニョ。

「驚かせようと思って、徹夜して、早く迎えに来てやったのに、迎えに来た俺を無視して子犬とじゃれやがって、お前、その生意気な態度はなんなんだ?」

テギョンが、ミニョの頬をムギュと掴む。

「オッパ、ごめんなさい。
迎えに来てくれて、本当に嬉しいです。
だって、前、迎えに来てくれたのは、シヌヒョンでしたから。」

「ん?いつの話だ?」

「ヒョンニムとベンチに座って、星空を見上げながら、月と星の話をしましたよね?あのとき、ヒョンニムが好きだと自覚したんです。でも、ヒョンニムには、ユ・ヘイssiがいましたから。ヒョンニムと離れて、気持ちを落ち着かせようと思っても、ヒョンニムに会いたい気持ちが強くなってしまって、ヒョンニムに、会いたくて、会いたくて、そんな日を過ごしていたら、ソウルから迎えが来たんです。ヒョンニムかと思ったら、シヌヒョンでした。嬉しかったけど、やっぱり、淋しかったです。でも、そのおかげで、『言葉になく』が上手に歌えたんですけどね・・・」

その当時を思い出すように、ミニョが笑う。

「迎えに来てくれて、本当にありがとうございます。帰りましょう、オッパ」

ニッコリと笑ったミニョが、テギョンの手を握る。

「あぁ、帰るぞ、ミニョ」

テギョンも笑顔を見せると、ミニョの手を握った。




★★★★


無防備に寝ているかわいいシネちゃんを見ながら、何かハナシが出来ないかと考えていたら、あぁ、父ちゃんの故郷に行かせて、テギョンさんに無防備な寝姿を覗かせて、ニンマリさせようというハナシになりました。迎えに行くエピソードは、前にシヌヒョンが迎えに行ってたし、次は、テギョンさんだな、と思い、そんなタイトルが出来た理由です。
子犬の名前は、「ドクターズ」からそのまま拝借しました。
さて、「ドクターズ」なんですが、シネちゃんがミナム(ミニョ)と全く真逆の役を演じていて、楽しいです。シネちゃんのアクションシーンもカッコイイので、また機会があったらご覧くださいね。