The Big Breakfast (ORT7) | 多読ネタ ・ 多読本のあんなことこんなこと

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いま読んでいる本のネタは、知らなくても多読できる。けれど、知ってからもういちど読むと、これがまたおもしろいんだ!そんなネタを集めてみたよ。

 

 

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「The Big Breakfast」(ORT7) のネタ

多読ネタは、次のように分類し、紹介します

 

 

 

 

 

1. 絵

 

P.12 - 13

下三角Housekeeper は鍵をたくさん持ってるね。なぜだろう?

下三角背景にあるたくさんのベルクリスマスベルはなんだろう?

 

 

P.14-15

下三角キッチンの様子をよく見てみると鍋がたくさんかかってるね。しまわないのかな?

下三角灯はすべてキャンドル!電気が通ってないのかな?

下三角a wooden wheel は本当に使っていた道具なの?

 

 

P.20-25

下三角servants にはさまざまな仕事があるね

下三角たくさんの wig は、何に使うのかな?powder をかけるのはなぜ?

 

 



 

ざっと、気になったところを書き出しました。

他にも「キョロキョロ?」と思うところ、あると思います。

皆さんも探してみてね!

 

 

絵を見て気になったところは、

「文化、生活、設備」で、解説します。

*注:すべてではありません

 

 

 

 

 

2. 文化、生活、設備

 

    

2.1 イギリスイギリス社会に階級制度があったころ

 

むかし、まだ各家庭に電気が通ってない頃、イギリス社会は階級社会で、上流階級(貴族など)、中流階級(実業家・専門職などブルジョワジー)、下層階級(労働者階級)に分かれていました。そして、上流階級の家庭では、多くの労働者を雇い、お屋敷内外のことをさせていました。彼らのことを家事使用人(domestic servants)と言います。

 

 

「The Big Breakfast」では、そのころの家事使用人の日常が描かれています。

 

 

イメージしにくい人は、次の動画『Downton Abbey (ダウントン・アビー)』(シーズン1・第1話)の冒頭10分を見てみてください。

1912年のイギリス貴族のお屋敷で働く家事使用人の様子をうかがい知ることができます。

 

 

The first 10 minutes of Downton Abbey (10分)

 

 

この動画では、

 

① お屋敷の(地下の)たくさんの呼び鈴が映ります。

  呼び鈴は、階上の部屋から地下の召使を呼ぶためのもので、お屋敷の各部屋とつながっています。

 

 

② チラリとしか映りませんが、housekeeper が大きな鍵束「シャトレーン」を持って歩いています。

  これは、housekeeper が家の中のあらゆるものを管理していたためです。

  P.12 のシャトレーンは housekeeper を象徴するアイテムなのですね。

 

 

③ 新聞にアイロンをかけています。

  この頃は、新聞のインクの質が現在ほど良くありませんでした。

  そのため、配達された新聞をそのまま触ると手が真っ黒になってしまいました。

  そこで、執事 (Butler) は、インクでご主人さまの手が汚れないように、毎朝、新聞にアイロンをかけていました。

 

  だから、新聞にアイロンをかけなかった Kipper は、「You forgot to iron his newspaper!」(P.28)と、housekeeper に怒られちゃったんですねショボーン

 

 

新聞紙にアイロンをかける様子

*現在でもチャールズ英国王の新聞紙はアイロンされているそう

 

 

 ④ 家事使用人たちが朝早くから忙しなく働いています。

  Chip, Biff, Kipper はなにかと「hurry up」と急かされてるのも納得ですねニヤリ

 

 

 

    

2.2 犬と子どもは大事な働き手

 

まだ電気が家庭に通っていない時代、

労働者階級の子どもは、大切な働き手でした。

 

 

そして、犬も…

そんな時代があったなんて…

 

 

Floppyがキッチンで働かされていましたね。

実は、16世紀ごろのイギリスには、キッチンで働く「Turnspit dog」がいました。

 

10 Extinct Dog Breeds (1分)(31s-1m25s)

 

 

The Curious Case of Turnspit Dog (3分) - 日本語字幕可

 

 

 

 

 

3. ことば

 

本のことばも、階級社会を反映していますウインク

 

P.11 

servants、housekeeper

家事使用人を表すことばです。


この時代のお屋敷では、家事使用人の働く場所 (storeroom、housekeeper の部屋、kitchen など)は、地下にありました。


この本でも、Kipperたちを出迎えた Rose が出てきたドアの奥に、地下へと向かう階段が見えます。

 

 

P.12 - 13

They went down a corridor into a large storeroom

この一文から、長い corridor (廊下) を子どもたちが歩く様子がイメージされます。


go down の down は、「下」という意味ではありません。


「ずっと先へ行く」というニュアンスで使われています。つまり、corridor が長いことを示しています。

 


Kipperたちがたどり着いたお屋敷では多くの servants が働いており、大きなお屋敷です。よって、地下の corridor は長いのです。

 

 

P.12 - 13、17 、27

Jobs has to be done before breakfast 

Lord Plum will be up soon. We must finish the jobs, then we can get his breakfast ready.

Lord plum will be down soon. He won’t want to see you in here.

ご主人さま(Lord Plum)が
起きて(be up)、
食堂に降りてくる(be down)
よりも前に、servants (家事使用人たち)は、朝の掃除片付けを終わらせなければなりませんでした。
 

なぜなら、掃除で汚れた姿をご主人さまに見られてはいけなかったからです。

 

 

P.30

"A rest?" said Rose. 

Kipper たちが休憩しようとしたら、Rose にそんな時間ないわよ、昼食の準備をしないと、と注意を受けました。
 

電気も通っておらず、洗濯機も無い時代を想像してみてください。


servants (家事使用人たち)は毎日、忙しく働いていたんですね。

 

 

 

 

 

 

4. その他

 

    

4.1 イギリスイギリスの階級制度

 

 

小説や映画・ドラマには、むかしのイギリス、階級社会のころのイギリス、を時代背景とするものがたくさんあります。
 

たとえば、イギリスイギリスとアメリカアメリカで大ヒットしたドラマ『Downton Abbey』のように、貴族社会だけでなく、家事使用人の日常をしっかり描いているものもあります。

 

このORTの「The Big Breakfast」をきっかけに、階級社会について少し勉強してみませんか?

 

そして、そのあと、ぜひまたこの本を読んでみてください。

当時の社会をイメージしながら読んでみると、また新たな感じで読めるかもしれませんおねがい

 

 

記事(日本語) - イギリスの階級制度 ①

 

記事(日本語) - イギリスの階級制度 ②

 

 

家事使用人について(英語) - Servants: The true story of Life below stairs (60)

 

 

 

    

4.2 現在のイギリスイギリス

 

現在、イギリスイギリス社会は、階級社会ではありません。

 

したがって、下層階級(労働者階級)は無く、家事使用人という仕事もありません。

 

日本日本にも、現在はもう無いけれど、時代劇では見かける仕事や制度ってありますよね。

 

19世紀当時、英国民の7割が労働者階級でした。

 

つまり、現代のイギリス人の祖先の多くは労働者階級だったのです。

 

ORTのこの本で描かれている日常は、大事な歴史の一コマなのですね。

 
 
 

 

 

 

 

5. 関連本

 

 

 

 

執筆担当

 

  鈴木祐子(きっぱ)

 

 

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