政務調査会 全体会議に出席しました。新たな総合経済対策(案)について質疑応答が行われました。

 

 我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年春に大きな落ち込みを経た後、感染症の特性を踏まえたメリハリの効いた対策を講じる中で、本年春先以降は、ウィズコロナの下、社会経済活動の正常化が進みつつあり、サービス消費を中心に回復の動きがみられるとの分析がされています。しかし、国際情勢が不安定になっていることなどによる顕著な物価高騰、激甚化・頻発化する自然災害の発生など、様々な懸念材料があり、しっかりとした経済対策を講じなければなりません。

 

 ロシアによるウクライナ侵略を背景とした国際的な原材料価格の上昇に加え、円安の影響などから、日常生活に密接なエネルギー・食料品等の価格上昇が続いており、実質所得の低下や消費者マインドの低下を通じた消費への影響や、企業収益の更なる下押しによる設備投資への影響等が懸念されます。

 また、欧米では各国・地域の中央銀行がインフレ抑制重視の姿勢を鮮明にして金融引締めの動きを加速し、中国では不動産市場の低迷やゼロコロナ政策による経済の下振れが懸念される中、国際機関による来年の世界経済の見通しが相次いで下方修正されるなど、世界的な景気後退懸念が高まっています。

 このように日本経済を取り巻く環境には厳しさが増している中、国民生活や事業活動をしっかりと支えることで、この難局を乗り越え、さらに、未来に向けて日本経済を持続可能で一段高い成長経路に乗せていくためには、新しい資本主義の旗印の下、「物価高・円安への対応」、「構造的な賃上げ」、「成長のための投資と改革」を重点分野とした総合的な対策が求められています。

 

【物価高・円安】

 世界規模の物価高騰がみられる中、我が国においては、円安の進行とも相まって、輸入物価の上昇を通じて、エネルギー・食料品を中心としたコストプッシュ型の物価上昇が生じています。こうした生活に身近な商品の値上がりが続く事態に対し、政府は4月に「コロナ禍における「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」」を取りまとめ、物価・景気の状況に応じて予備費を活用して機動的に対応してきました。他方、来年春以降、急激な電気料金の値上がりの可能性がある中、消費や投資の抑制等を通じて景気の腰折れにつながることのないよう、影響を受ける家計や価格転嫁の困難な企業の負担を直接的に軽減すべく、思い 切った対策を講じていくことが必要です。こうした状況を踏まえ、政府としては、これまでの累次の対応に加え、間をあけることなく、先々を見据えた力強い対策を講じ、この物価高から国民生活と事業活動を守り抜く。また、化石燃料等の海外依存度の高さゆえに、これまで輸入物価上昇時に海外に所得が流出するという事態が続いて来ました。こうした我が国経済の脆弱性を家庭・企業の省エネ対策の抜本強化、ゼロエミッション電源の最大限の活用、化学肥料の利用低減、肥料、飼料、穀物等の国産化の推進等により克服し、エネルギー・食料品等の危機に強い経済構造に転換していきます。

 同時に、足下の円安に対しては、そのメリットを最大限引き出し、 国民に還元する力強い政策を進めていきます。インバウンドや国内観光、イベント需要など、コロナ禍で回復が遅れている分野の需要を回復させ、地域経済の活性化を図ります。また、最近の国際政治経済環境の変化に対応したサプライチェーンの再編が急務となる中、海外からも半導体や蓄電池など戦略的な物資の供給等を我が国に期待し、求める動きが高まっています。円安により国内立地環境がコスト面で大きく改善する中、こうした分野の国内供給力を一気に強化し、輸出拡大を図るとともに、農林水産物の輸出拡大、これまで国内での供給にとどまっていた地域の中小企業の輸出展開などを強力に後押しし、円安メリットを活かした経済構造の強靱化を図ります。

 

【構造的な賃上げ】 

 目下の物価上昇に対する最大の処方箋は、物価上昇を十分にカバーする継続的な賃上げを実現することです。特に労働者の約7割を占める中小企業に賃上げの流れを波及させていくことが不可欠であり、 厳しい状況にあっても賃上げに踏み出す中小企業への支援策を強化するとともに、価格転嫁を強力に推進していきます。そして、賃上げの流れを継続・拡大していくため、賃上げが高いスキルの人材を惹きつけ、 企業の生産性を向上させ、それが更なる賃上げを生むという「構造的な賃上げ」を実現します。物価高が進み、賃上げが喫緊の課題となっている今こそ、賃上げ、労働移動の円滑化、人への投資という3つの課 2 題の一体的改革を進めてまいります

 

【成長のための投資と改革】

 日本経済を持続可能で一段高い成長軌道に乗せていくためには、グリーンやデジタルなどの非連続的なイノベーションで社会課題を解決し、それを成長のエンジンとする新しい資本主義を実現することです。このため、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX(グリーン・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の4分野に重点を置いて、官の投資を加速し、それを呼び水として民間投資を大胆に喚起するとともに、規制・制度改革を大胆に進め、新陳代謝を促すなど、様々な経済社会構造の変革を実現してまいります。

 こうした認識の下、世界経済の減速リスクを十分視野に入れつつ、足下の物価高騰など経済情勢の変化に切れ目なく対応し、新しい資本主義の加速により日本経済を再生するため、以下の4つを柱とし、予算・税制、規制・制度改革などあらゆる政策手段を活用した総合的な経済対策を策定します。

 

 [第1の柱:物価高騰への対応と賃上げの加速]

 物価高騰の主因である、エネルギー、食料品に重点を置いた効果的な対策、特に来年春以降の急激な電気料金の上昇によって影響を受ける家計や価格転嫁の困難な企業の負担を直接的に軽減する、前例のない、思い切った対策を講じることで、国民生活と事業活動を守り抜きます。また、ゼロエミッション電源の最大限の活用、省エネ投資への支援の抜本強化、肥料、農産物等の国産化の取組を強力に支援することにより、化石燃料や肥料原料、食料等の海外依存度を引き下げ、エネルギーや食料品等の危機に強い経済構造への転換を図っていいきます。また、中小企業向け補助金において賃上げのインセンティブを一段と強化するとともに、価格交渉と転嫁が定期的に行われる取引慣行の定着に向けた独占禁止法や下請代金法のより厳正な執行、同一労働同一賃金の遵守の徹底、男女間賃金格差の是正など、あらゆる手段を活用して、賃上げを促進していきます。

 

 [第2の柱:円安を活かした地域の「稼ぐ力」の回復・強化]

  今回の水際対策の抜本緩和を機に、戦略的なプロモーションと観光産業の高付加価値化を通じ、コロナ禍で失われた5兆円のインバウンド需要を復活させるとともに、国内観光やイベント需要の喚起、文化芸術・スポーツの振興等によりコロナ禍からの需要回復、地域経済の活性化を図ります。また、半導体や蓄電池などの戦略物資のサプライチェーンを再構築し、海外が我が国に期待する物資の供給力強化のための工場立地や企業の国内回帰など、国内での「攻めの投資」に対する思い切った支援を行うとともに、対内直接投資の拡大により、国内の供給力強化、輸出拡大を図ります。さらに、輸出産地の形成や輸出支援体制の確立等による農林水産物の輸出拡大、専門家による伴走型支援や輸出商社との連携等による中小企業の輸出拡大等を通じて外需を取り込むことなどにより、経済構造の強靱化を図ります。

 

 [第3の柱:「新しい資本主義」の加速]

 非連続的なイノベーションの原動力となるのは人であり、官民連携でリスキリングと成長分野への投資を推進し、構造的賃上げと成長力の強化を図ります。このため、人への投資の支援パッケージを5年間で1兆円に拡充し、公的支援を抜本的に強化することや、年功給から日本に合った職務給中心のシステムへの見直しなど労働市場改革を通じて、スキルアップと成長分野への労働移動を同時に強力に推進します。また、文理の枠を超えたデジタル・グリーン等の成長分野への大学・高専の学部再編等を促進します。さらに、賃上げに加えて、個人金融資産のうち、現預金が投資にも向かい、持続的な企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を形成すべく、「資産所得倍増プラン」を策定・実行します。

 官民連携による成長分野における大胆な投資として、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXにおいて、呼び水となる官の投資を加速し、さらなる民間投資の拡大を図っていきます。

 スタートアップについては、「スタートアップ5カ年計画」の先行実施として、立ち上げ期に重要となる人材・ネットワーク面での支援や事業成長のための資金供給の強化、事業展開・出口戦略の多角化等を推進します。

 科学技術・イノベーションについては、国益に直結する科学技術分野への支援や、地域の中核・特色ある研究大学の強化、若手研究者の育成に向けた支援強化等を進めます。

 GXについては、今後 10 年間のロードマップを取りまとめるとともに、脱炭素化だけでなく、技術革新性が高く国内投資の拡大など経済成長につながる施策について、足元のエネルギー価格高騰への対策の必要性も踏まえつつ、同ロードマップに基づく政府投資の一環として先行実施します。

 DXについては、先端半導体の供給力強化や次世代半導体製造技術の技術開発、最先端技術への戦略的投資を推進するとともに、デジタル田園都市国家構想の具体化、マイナンバーカードの普及促進強化及び利便性の向上、医療・介護や教育分野のDX等を推進します。

 また、社会課題の解決に向け、支援が手薄な0歳から2歳の低年齢期に焦点を当てた、妊娠時から出産・子育てまで一貫した伴走型支援と経済的支援をあわせたパッケージの継続的な実施等こども・子育て世代への支援の拡充、女性活躍、孤独・孤立対策など包摂社会の実現に向けた取組を進めます。

 

 [第4の柱:国民の安全・安心の確保]

 ウィズコロナの下、できるだけ平時に近い社会経済活動が可能となるよう、医療提供体制の強化や治療薬の開発・実用化など感染症対応の強化を図りますまた、激甚化・頻発化する自然災害から国民の生命と財産を守るため、引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく取組を推進するとともに、更なる取組を進めるための次期基本計画の検討を進めます。東日本大震災等からの復興、自然災害等からの復旧・復興に引き続き全力で取り組みます。加えて、外交・安全保障環境の変化に対応した取組を進めるとともに、重要物資の安定供給への支援や重要技術の開発支援など経済安全保障、海外に依存する生産資材等の代替転換や使用低減、海外依存の高い品目の国内生産・利用拡大等による食料安全保障の強化を図ります。さらには、研究開発やインフラ整備において官民連携により総合的に安全保障の強化に寄与する体制を構築します。また、こどもの安全対策などにも取り組みます。

 

 これらの4つの柱に基づく本経済対策の裏付けとなる令和4年度第2次補正予算を速やかに編成し、その早期成立に全力を挙げて取り組みます。その際、現下の金利状況を活かし、財政投融資の手法を積極的に活用するとともに、規制・制度改革、税制改正といったあらゆる政策手段を活用した総合的な対策とします。あわせて、財政の単年度主義の弊害是正にも取り組みます。

 引き続き、政府は、日本銀行と経済情勢に関する認識を共有し、財政政策と金融政策の適切なポリシーミックスの下で緊密に連携します。日本銀行には、金融資本市場の変動の影響を十分に注視しつつ、物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け適切な金融政策運営を行うことを期待します。