河野防衛大臣から、イージス・アショア配備計画の停止が突然発表され、たいへん驚きました。

 イージス・アショアの配備は、北朝鮮が核・ミサイル開発を進め、連続して弾道ミサイルが発射されるという緊迫した背景にあって、安倍総理とトランプ大統領のトップダウンで決まったものです。

 

 我が国のミサイル防衛は、海上のイージス艦からの迎撃と、地上の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の2段階で阻止する体制になっていますが、これに地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を追加し、3段階にして防衛力の強化を図ろうというものです。

 イージス・アショアは、海上自衛隊でも運用されているイージス艦の戦闘指揮システムやミサイル発射装置などを丸ごと地上施設に移設したもので、定期的な寄港や休養が必要なイージス艦とは違い、切れ目の無い警戒監視が可能という特徴を有しています。

 そのような前提から、北朝鮮が連続して弾道ミサイルを発射し、Jアラートが発令されて、避難訓練までするという不安の高じた状況から、ミサイル防衛増強の必要性について一定の理解がされていたものです。私も、専守防衛にも資するものと考えていました。

 

 イージス・アショア計画の停止理由について、河野大臣は弾道ミサイルを迎撃するための「SM-3ブロック2A」のブースターの落下を制御することが難しく、そのための改修コストや期間が大きくかさんでしまうため、と説明しています。

 しかし、この計画停止の発表は唐突で、配備予定の秋田県や山口県にも事前の説明がされておらず、二階幹事長も党に相談がなかったと不快感を示しました

 この異例の電撃発表の裏には、このような形にでもしなければ、横やりが入ってその判断さえも完遂できないという事情があったのではないか、河野大臣の信念を貫いたと見ることができます。

 

 それは、当該計画が日米両国のトップダウンで決まり、予算も当初は1基約800億円とされていたものが、その1000億円を超え、造成費などを含めれば数千億円かかるとされ、それ以外に迎撃ミサイルのブースターを制御するために多額の費用と時間がかかるという不明確なものだったということです。

 さらに、近年の攻撃用ミサイルの技術の進歩が著しく、従来のミサイル防衛システムでは対処ができないのではないかという疑問も呈されています。

 そのようなものを、このまま進めてはならないという河野大臣の強い意思の現れが、この急な計画停止の発表になったのではないでしょうか。ある意味、河野大臣のような個性がなければ出来なかったことかもしれません。

 

 しかし、今後に多くの課題を抱えることにもなりました。この地上イージスに関して、政府は米側と約1800億円分を契約し、既に125億円を支払っており、計画停止のための交渉が必要となります。

 イージス・アショア配備計画は日米の両首脳が足並みをそろえて主導した、同盟強化の象徴たる防衛戦略ですから、これを変更することは容易ではありません。

 それでなくても、トランプ大統領は同盟国への駐留経費の負担増を求めており、強い覚悟をもって交渉に臨まなければなりません。

 

 今後の対応は国家安全保障会議(NSC)で検討するようですが、広く識者の意見を聞き、国会での議論を経て、揺るぎない精緻な防衛計画を打ち出さなければなりません。