衆議院本会議は新型コロナウイルス感染防止のため、採決のとき以外は議員の議席番号が偶数か奇数かで分けた、約半数の議員が議場に出席し、その他は議員会館の自室に戻って、館内ネットワークを通じて参加することになりました。
しかし、採決のときは全議員が本会議場に集まる必要があります。新型コロナウイルスの感染防止のために三密を避けるよう注意喚起しているときに、本会議場で議員が隙間なくベンチ椅子に並んでいたのでは問題です。
しかも、議員会館や各省庁からも陽性者がでていて、新型コロナウイルスがそこまで迫っているという状況です。
緊急事態宣言下で、企業や行政がテレワークを活用しているように、国会も情報通信技術を活用して遠隔から会議ができるようにしてもよさそうですが、現実には旧態依然とした形式のままです。
日本国憲法には本会議開会に「総議員の3分の1以上の出席」を求める規定があり、実際に出席することが憲法上要請されているのですから、簡単には対応できないわけです。
もっとも、憲法が制定された時代には、遠隔地から情報通信システムを通じて会議を行うなど、想像もできなかったでしょうから仕方がありません。しかし、今や情報通信技術は長足の進歩を遂げ、誰もがパソコンやスマートフォンを持ち、高速の通信ネットワークで結ばれており、離れたところからでも効率的な会議ができるようになっています。
私の所属している水月会(石破派)では総会をウェブ会議で行っています。最初は違和感がありましたが、全ての参加者の様子と、ズームアップした発言者の顔を見ながら意見を交わすので、議論に集中することができて非常に有効なものです。
会議場に来ないで審議をしようなどと発想するのは、横着なことだと考える向きもあ ろうかと思います。しかし、地震や風水害で会議場が損傷して使えないときや、交通機関が途絶して一堂に会することができない場合にも、いかに国会が機能できるようにするかを、考えておかなければなりません。
災害時に遠隔地から情報通信システムを活用した会議ができないことや、非常事態宣言を発出しても、「公共の利益」を守るための強い措置が取れないことなどからも、現行憲法が大きく変化した社会のニーズに対応できていないという課題が見えています。