新国立競技場が完成し、本日内部が初公開されたので、見学してきました。最初の設計の段階で紆余曲折があったにもかかわらず「杜のスタジアム」と呼ぶにふさわしい立派な完成形を目の当たりにして感激しました。

当初のザハ・ハディド氏の手によるデザインは、キールアーチが印象的な流線型の魅力的なものでした。しかし、建設費を積算してみると、当初予算の倍の2520億円にもなり大きな波紋を呼びました。これでは国民の理解は得られず、計画が杜撰だったと批判されるのが落ちで、なんとかしなければならないと思っていました。

しかし、ザッハ案が東京オリンピック招致におけるイメージをリードし、その実現に寄与するものであったことから、これを破棄することは難しいとも思っていました。そのようななかで、後藤田正純衆議院議員がこのプランに異に唱えはじめ、それならばと、私も一級建築士として問題点を指摘し、施工性が高くコストの低減が可能となるものにすべきと主張しました。

そのようななかで、安倍総理がザッハ案を白紙撤回しました。再度設計コンペを行って隈研吾氏が選ばれ、こんにちの完成をみたことは本当に良かったと思います。

しかも、これだけの規模の建築物を約3年で完成させた施工技術は素晴らしく、合理的な設計であったこともプラスの要因だったと思います。 

特徴は国産材をたくさん使っことにより、暖かみの感じる日本らしいものとなっているということです。これに使用した杉材は、すべての都道府県から調達して、地方に配慮しています。但し、沖縄だけは例外で、杉材がないことから松材を使っているということでした。

夏の暑さ対策としては、185台の送風機を客席上部に設置して、下の席まで涼風を送るようにしています。

グランドの中央には芝生が青々と茂り、絨毯のようでした。これも、日照が当たりにくいことから、ランプの光を照射して補って育てたということです。さらに、地下30㎝のところに配管を巡らせ、気温に合わせて温水や冷水を流しているというのであるから、芝生の育成にも高い技術を駆使しています。

観客は6万人収容できるようになっており、その椅子は5色の色をランダムに配置し、下の方には茶色の部分があり、上に行くにしたがって、明るい色の配置になっていて、あたかも木の葉が舞っているように見えます。これは、観客が少ないときにも、それを感じさせない効果をねらっています。

その他、障害者への配慮や報道のスペース確保、600mにも及ぶ電光掲示板など、随所に工夫が凝らされていました。オリンピックの入場券の確保はできませんでしたので、今度はテレビで観戦したいと思います。