あそこから落ちたらどうなるかとか、あのホールドが欠けたらどこへ吹っ飛ぶかとか、そんな起こりうる危機を常に想像した登りをしないと、いくら命があっても足りない。
ここのところ、とある海岸沿いにあるボルダーを見つけては、登っているわけです。
海岸あるあるの脆い壊れやすい岩と思わせておいて、割と壊れない良い岩が転がってまして、まーまー良いラインも登れているわけです。
先日、これまた良いラインに目をつけ、登っているとき、事件は起きました。
スパッと切れたかぶり面とカンテを使いスラブに抜ける、わかりやすいライン。ご覧の通り、スラブに抜けるリップはクラックが走っています。
下部はパワフル、ちょっとしたコツもいるようで、なかなか登れず、気がつけばあたりは薄暗くなっていた。要領を掴んだ時には日は暮れ、ライトがないと明確にはホールドが見えない状況。いわゆる、夕暮れギリギリ泣きのラスト。というやつ。
一手一手を慎重に出し、見事リップのガバをとり、慎重にマントルを返したわけです。
リップに立ち上がり、あとは緩い傾斜を登るだけ。
目の前に岩の割れ目が見え、何も考えずに指をツッコだ瞬間…
あまり覚えてはいないが、とにかくホールドがガバッと崩れ、とっさにマットに着地、うまく着地はできたようなのだが、尻餅をついた瞬間、鈍い音が頭蓋骨に響いた。
意識はある、、恐る恐る岩がぶつかったであろうひたいに手をやると、生々しい感触。目の前を見ると、赤い液体がポトポトと滴っている。手のひらは赤く染まっている。どうやらやっちまったようだ。
不幸中の幸いか、傷は大したことがないようだ。それと、幸い、救命士の兄貴と同行していたおかげで、応急処置は完璧。
とにかく圧迫止血で大概の出血は止まるようだ。一人だったらパニックになっていたかもしれない。感謝しかない。
額の傷が落ち着いてきたら、左腕の筋肉を打撲しているのがわかった。頭は置いといて、腕を負傷したら登れなくなる…そんなことが頭をよぎる、はー、これがクライマーってもんか。不謹慎にも、助けてくれた兄貴にそんなことを発言してしまう自分の愚かさときたら、救いようがない。命があっただけでもありがたく思わないといけない。
後日、再び兄貴と現場へ。よく見ると、リップのクラックが当初より少し開いているような気がした。試しに引いて見ると、少しグラつくのがわかった。このリップが崩れたら………言うまでもない、顔か首か胸に食らって、おそらく命はない。
しばらく生きた心地がしなかった。二度と触らない。
その後、気になっていた奥のエリアまでロープを使い慎重にアプローチ。めぼしいラインはいくつかあったが、なんとなくクラックが入ったどっかぶりからのスラブ抜け。この前の事故でしっかり学習したようで、触れる気は起こらなかった。
代わりにと言ってはなんだけど、綺麗なフェイスを発見。トップロープでトライし、素晴らしい楽しいルートが開けたことでその日はお開き。
「奥の院 11b?a?」
今回は、自分の未熟さを改めて実感できる良い機会になった。これはもしかすると、神様からの警告なのかもしれない。
改めて、頂いた命、大切にしなければならない、しみじみ感じながら、慎重に、怖じけることなく、今後とも魂のこもったクライミングをしていきたいと思う。
教訓
・ひび割れがひどい、特にかぶり系には手を出さない
・怪しいホールドは、壊れることを前提にリスク管理を怠らない
以上