宮崎クライミング遠征 | tadatchのアウトドア日記

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~t.a.d.a.factory~ tadatchによる、クライミング、トレイルラン、登山、旅の記憶を記すブログです。ぼちぼちいきましょう。

久々の投稿になる。
今回の旅は、宮崎岩場巡りツアー4days。
向かったのは、宮崎北部の花崗岩地帯。
初めの2日は天気が微妙な予報。
微妙なのは天気だけではなく、自分の腰。微妙どころではなく、警報レベル。
出発三日前に爆発した持病の腰の痛みで、出発当日というのに歩くのもまもならない有様、中止という2文字だけは封印し、最悪、パートナーのyamayaさんに土下座をする覚悟を持って、とにかく出発することにする。
行きましょ、と言いながらも、何となく苦笑いを含むyamayaさん、さぞ不安だったことでしょう。


初日
maruboさんや大藪氏が開拓された、行縢の雌岳南岩壁のホットなルート「Heartland」を登る予定だったが、午後から崩れる天気予報と、僕の腰痛の都合もあり、早速、yamayaさんの今回のメインディッシュとも言える、比叡山の白亜スラブを登ることに。
腰痛を理由に自分は全フォロー宣言。まあ仕方がない。今回は全ピッチtradスタイル、yamayaさんは、このルートにすごい思い入れがあったようで、結果として全ピッチをリードで登ってもらって良かったのであろう、ということにしておく。
ルートに関しては、全ピッチ気持ちよく登れる、すごく面白いルート。白亜スラブのハイライト3P目は、綺麗なスラブに一直線に走ったフィンガーサイズのクラック。クラック修行の成果もあり、楽しく登ることができた。
せっかくのクラック沿いに、ハーケンはともかくハンガーが打たれているのは、端くれクライマーが偉そうなことも言えないのではあるが、いささか残念な気もした。が、楽しく登らせてもらい、開拓者、岩に感謝です。





そうして無事にトップアウトしたテラスからの、矢筈岳方面の迫力のある景色はまさに絶品。




しばし余韻に浸り、次のクライミングに移るべく下山開始。その直後、やばいものを発見。




登ってくれと言わんばかりのオフィズスサイズのクラック。クラックセンサーが反応するまでもなく見事なクラック。クラックというか、パッカーンと2つに分裂している岩の隙間。
隣を覗き込むと、面白そうなコーナークラックも発見。




何だか終了点らしきものも打たれており、すでに開拓済みな模様。
とりあえず下山し、期待できないどんよりとした空の下、鳥肌スラブをトライ。なかなかの悪さで、早くも比叡スラブの洗礼を受けたといったところ。


その後パラパラと雨が落ちてきて、今日は終了かな、と思いつつも、先ほどの下山途中で見つけた魅力的なクラックに偵察がてら向かうことにする。
そこそこ降ってはきていたが、予想通りクラックの中はまだ濡れていない模様、

これならいけると、yamayaさんがワイド担当、僕は腰の都合もあるが、コーナー担当。
yamayaさんは奮闘しつつも、三倉で鍛えた技術と我慢力で何とかトップアウト、




僕はというと、意気揚々と挑んだものの、核心ぽい部分でフォール、湿気と腰痛とどんよりとした空気により戦意を完全に失い、まさかの敗退。気持ちもどんよりとした、モヤモヤとしたものを残し、初日を終えることになりました。お疲れ様でした。
*maruboさん情報によると、エンちゃんさんが開拓しているようである。ワイドがエンちゃんクラック10a、コーナーがムササビクラック10b

今回の宿は、菅原公民館。初日は適当に夕食を済ませ、さっさと寝ることに。広いホールに雑魚寝スタイル、別のグループのカエルの合唱に悩ませられながらも、長旅の疲れもあり何とか寝ることができました。





2日目
夜中降り続いた雨は朝方まで残り、とりあえず午前中は厳しいという事で、道の駅「よっちみろ屋」へ買い出しに向かうことに。産直市も充実しており、お買い得そうな柿としいたけ、行動食としてサツマイモをゲット。


駐車場に戻ると、何と言うことでしょう。雲ひとつない晴天!!ん、これはいけるのでは。




ということで、今回の目的の一つである、鉾岳の「四月の風」を登りに鹿川方面に車を走らせる。が、山間を進むにつれて、何となく雲が多くなる。駐車場についた頃には、晴れ間は刺すものの、雲はかなり多い状況。とりあえず準備をして、アプローチを進むこと数十分、何と、雨がぱらついてきた、というか、わりとザーザー降ってきた!!空もどんよりし、風も強まり嵐の予感。うーん、戻りますか。




比叡あたりに戻ると、何となく雨は降っていない模様。ショートルートを登ることにし、準備をするものの、またもや雨が本降り。はい、本日は終了。

この日は日之影温泉予定、しばし観光気分に浸りながら、明日の登りに備えます。





絶品の椎茸とyamaya飯に舌鼓を打ち、焼酎も進む進む、少々飲み過ぎたかかな。




ちなみに、比叡から鹿川方面に少し行ったあたりにある無人市場、新鮮な食材がリーズナブル価格で置いてあり、かなりおすすめ!採れたれのヒラタケは、生の牡蠣を彷彿とさせるプリプリ感、最高でした!

天気の都合で、壁の乾きも考慮し、明日は行縢を登ることに。おやすみなさい。


3日目
行縢雌岳南壁下部岩壁「Sunflower5ピッチ」〜上部岩壁「HEARTLAND 5ピッチ」継続10ピッチ311m
今回の旅で、いろいろ調べているうちに、最も登りたい、挑戦したいルートがこの行縢の岩壁であった。
行縢といえば、以前から何となく気にはなっていたのではあるが、maruboさんのinstagramで、下部岩壁のルートが完成したとの情報を得、これはもうやるしかないと意気込むものの、相方のyamayaさんは少々難色を示す。
下部と上部を繋げるのは、グレード的に厳しいのではないかと。僕の登攀力も考慮しての話かもしれないが、確かにそうだ。オンサイトグレードが5.11そこそこの僕にとって、10ピッチ中6ピッチが5.11台(11a-4本、11d-1本、11c-1本)のルートなぞ、1日で登ることができるのか、よくよく考えると無理がある。というか未知の世界!!いつもの他力本願か。

しかし、貧乏性の僕は、せっかくやるなら全部やりたい、そんな思いをyamayaさんに伝えたところ、僕がやる気ならやる、という返事をゲット。マルチとなると、準備段階からやたらピリつくyamayaさんは、良く言えば、良い緊張感を作ってくれているようで、準備や手際、時間の重要性など、色々勉強になりました。うーん、やるしかない。
前夜、万全の準備をしたおかげで、若干もたつくものの予定時刻ぴったりの出発となる。
予定時刻通り、am7:00climb on!



下部岩壁「Sunflower」
1ピッチ目 5.10b リード多田
フェイス主体となるこのピッチ、朝一だからなのか、なかなかラインを読むことができず、何度か行き詰まるものの、これまで培ってきた引き出しをフル動員し、何とか落ちずに登り切ることができた。これが10bかと言わんばかり、全長40メートルの内容の濃いルートは、むしろこのピッチだけでお腹いっぱいになるほどである。まだまだ序盤、これが続くようなら、上部は諦めようかと思ったほど、先が思いやられる!笑




その後のピッチ(5.9-cont-5.11a-5.10d)はツルベ、11aを含めて、意外にスムーズに楽しく気持ち良く登ることができ、とりあえず一安心。

というわけで、お次は
上部岩壁「HEARTLAND」
1ピッチ目 5.11a リード多田
とにかく弱点を追い、慎重に、丁寧にラインを見極め、プロテクションをキメ、気がつけば終了点。正直、目の前のことで精一杯で、あまり記憶にはないが、存分に楽しめた、はずである!笑



2ピッチ目 5.11d リードyamaya
なんだかんだ頼りにしてしまう相方が、このルートの最高グレードの2ピッチ目に挑む。どフェイスの、薄めのカチを繋ぐ核心セクションで、ホールドが飛んだようで残念ながらフォール、その後、すぐさま立て直し、程なく抜けてくれた。フォローの僕は、やはり核心セクションで行き詰まり、時間の都合は言い訳かもしれないけど、若干A0混じりの登攀、鍛え直さねばです。



3ピッチ目 5.11a リード多田
少し悪目の序盤が11aの所以なのか、こちらもあまり覚えてはいないが、落ちずに登ることができた。



4ピッチ目 5.11c リードyamaya
優しめのスラブトラバースの後に待ち構えているピリ辛フェイスと、痺れまくるtradセクション。tradセクション序盤の核心でホールドが飛びフォール。リスタートとするもまたもやホールドが飛びフォール。その後、さすがのyamayaさん、じわじわロープを伸ばすものの、「まじかよっ!!!」と吠える。フォローで追って見ると、その意味がわかる。きわどい場面できわどいプロテクションをきめざるを得ない(マスターカム#0 #00)、ここを突破できたyamayaさんは、さすがだと言える。すでによれ気味の僕、リードでそこを突破できていたかは怪しいところである。


5ピッチ目 リード多田
序盤はックラック主体で、後半はフェイス。良くは覚えてはいないが、こちらも落ちずに抜ける。
ここまで来たら、ゴールは目前!勝利のガッツポーズ💪



6ピッチ目 リードyamaya
スラブトラバースからの小ハング越え、最後まで気の抜けない、少々ランナウトするスラブを抜けてトップアウト!




なんとかかんとか、というか、意外スムーズだったというか、とにかくしっかりクライミングをして、全ピッチをこなし、満足感と安堵感に満たされる。しばし余韻に浸りながらも、いろいろ反省点も多く、まだまだ修行が足りないなと思うばかり。
とにかく無事下山、、お疲れ様でした!!!

以下、感想
「Sunflower」
1ピッチ目にびびらされるものの、全ピッチを通して濃い内容で、開拓者の「ウォーミングアップとしては十分すぎる内容」というのもかなり納得できた。
HEATLAND
「控えめに言って、すばらしいルートが完成した」(ROCK&SNOW No.96 HEARTLAND開拓者の記事より)
とは能く言ったものだ。
「ナチュラルで弱点を突くライン取りを強く意識」という開拓者の意思が伝わる、良いルートでした。
ボルトは最小限に、ナチュラルに、岩の形状やホールド、クラックなどに導かれ山頂に到達する絶品ルート。

上下全ピッチに渡って、並々ならぬ掃除の跡が随所に見られ、このようなすばらしい舞台を用意してくれた開拓者には感謝です。

「下山後」
予想外に早くトップアウトできたおかげで、麓のブリュワリー「ひでじビール」にも立ち寄ることができ、より満足。独特の深い味わいで、クラフトあるあるの、やっぱスーパードライだよね、てこともなく美味しくいただきました。




4日目
最終日は比叡山、まだまだ続きます。
1本目は、自分の提案である、1峰北面Bフェイス
「ムササビファミリールート」
上部に威圧的なハングを構えスケールも高い、ボルトもほぼほぼ打たれていないtradルート。
無意識にtradに反応してしまうのではあるが、topoを見ていると、そんな魅力的なルートを発見。
調べていくうちに、1ピッチ目の不安定さはあるものの、その後のピッチは、ワイド、フィンガーあり、露出感のある乗越ありと、すごく魅力的。これまで培ってきた実力も試せるのではないかと思い提案、即決で登ることが決定した。
1ピッチ目
情報通り、下部が大崩落している模様。どこを通っても気持ち悪い、一手一手、ホールドの強度を確かめながら進み少し右上、弾が切れた辺りで少し右にトラバーシし、松の木で支点を取る。なんとなく嫌なムードである。
2ピッチ目
このピッチも序盤はフレークを左上、出だしはなんとなく気持ち悪い。
いろいろドラマはありましたが、なんとか2ピッチ目終了。ふー。
3ピッチ目
この辺りからがハイライト。お待ちかねの、かぶり気味のダブルクラックからのオフィズス、その後のチムニーからの水平移動を経ての乗越。さすがにムーブがわからずA0。まだまだですな。
なんだかどんよりのyamayaさんも、この辺りからは楽しくなってきているようでした。
4ピッチ目
かぶり気味のフェイス。あまり覚えていない…
5ピッチ目
フィンガーのコーナークラック。1ポイントのムーブが解決できず。腰痛のせいにしておくことに。フォローのyamayaはあっさり突破。なるほどね。
6ピッチ目
最終ピッチ、ようやくyamayaに笑顔が。シビアなスラブのトラバースをこなし、露出した乗越で体が一瞬宙に放り出される。
この高度感、喜びの雄叫び。自分も続くものの、トラバースの最後の最後で信じていた足がきれフォール、リアルに体が宙に放り出される。ある意味気持ち良かった!!

結果的に、良いルートだった。ただ、正直このルートの1ピッチ目は取り付くべきではない。脆すぎる。他のラインを見出す必要があるであろう。





さあ
まだまだ終わらない

本当は、最後に矢筈岳にある、故・杉野保氏が「本物」であると宣言する、ルーフクラック「マスターズルーフ」を登る予定が、
時間の都合もあり、ニードル正面壁の3ピッチのルートを登ることに。
1ピッチ目の上野クラックは綺麗に割れたコーナークラック、序盤はオフィズスサイズながらフェイス面のホールドを拾い、中盤からは気持ちの良いハンドサイズ。2ピッチ目のフェイスは、ライン取りが不可解ではあったが、なんとなくこなし、3ピッチ目は、フェイスに綺麗に入った左上クラックを気持ち良く抜けトップアウト!うーん、〆には丁度良いルートでした。




というわけで、最終日もお疲れ様でした。

今回の旅では、学ぶことが多かったように思う。岩登りに対する姿勢、覚悟、心構えのようなものだろうか、そんな、根本的なことが自分にはまだまだ足りていないのだなと改めて感じる。まだまだ、クライマーと名乗るには早かった、そうも思う。
反省で〆るのはいつものこと、次回からも、良いクライミングができるよう、精進いたします。