話題になってますね。

 

でもその「話題」の方向性ってのが、妊婦加算ケシカランって感じになってしまっていて、そもそもこれが一体なんのための加算なのかをちゃんと説明もせずして「コンタクトレンズ処方で加算された」などという話が先走ってしまってるのが問題だと思います。

 

 

今年の春に妊婦加算が作られた背景。

 

僕なんかは小児科医だけれど周産期医療に関わってきたので、妊婦さんのたとえば風邪などの診療も普通にできます。

もちろん出せる薬は限られてくるけれど、使えるモノだってあるわけでそれを説明して納得していただいた上で処方するなりしてきました。

 

そもそも小児科の当院に何故こんな妊婦さんが来るのかって言うと簡単な話、他が診てくれないからです。

 

「妊娠中の方は診れません」

「妊娠中の方には薬は出せません」

と簡単に断る。

 

実際に技術的に診れないのもあるだろうし、大きいのは「何かあったらやっかいだから」って考えでしょう。

 

何も危険を冒してまでリスク高い妊婦さんを診なくてもいいでしょ、小児科のうちになんか来ないで婦人科や内科へ行けばいいじゃん、、、って僕が断るのは簡単なコトです。

 

でも同様にして他が揃いも揃って断るもんだから、じゃあ少なからず周産期に関わってきたし妊娠中や授乳中の投薬について勉強してきた僕なので、仕方なく診てあげましょうかってことになる。

 

妊婦さんの診察は大変なんです。

 

ただの風邪だって、じゃあこの薬を使うことが赤ちゃんにどれほどのデメリットがあるのか、それでも風邪を早々に治してしまった方がメリットもあるし、ではそんな中で限りなく安全なお薬をチョイスして早めに治すようにしましょうよ・・・

 

などと普通の人の3倍も4倍も時間と労力を要するのが妊婦さんの診察なんです。

 

 

そんな誰も嫌がってやりたがらないようなことをやってくれている医療機関に対して「ありがとう、これからもどうか妊婦さんのために頑張ってね」という意味合いで厚労省がねぎらって(←っていう表現が妥当かは分からんけど)くれたのが今回の妊婦加算の設立なんです。

 

なので当院のようにまっとうに妊婦さんの診療をしている医療機関にかんしては数百円のアップは妥当だと思うし、妊婦さんとしても「他が診てくれなかったので助かります」ぐらいのもんだったはずなんです。

 

 

ところがその妊婦加算を逆手にとって、とにかく妊婦さんが受診したら加算を取ってやろうっていう診療科が出てきたから今回のような騒動になってしまったわけ。

 

コンタクトレンズの処方に妊娠・非妊娠は全く関係ないし、しかもそれは医者じゃない素人にだって分かりきってることだからこそ「なんでコンタクトレンズで加算とる?」となってしまう。

 

 

もちろん関係なくても加算が取れてしまうシステムを作った厚労省にも問題があるわけで、今後加算の取り方などを厳しく制限するようになっていくでしょう。

 

でもその結果、やれるのに・やりたくても出来ない医療機関が出てくるんじゃないのかな?今年初旬に起こった遠隔診療と同じような末路になったりしないのかな?と危惧してます。

 

どっちに転んでも最終的に困るのは妊婦さんなんです。