採血や点滴は普通、看護師さんがやる手技です。
ところが小児科では、子供の採血や点滴は非常に難しいので、たいていは医者がやらねばなりません。
なので小児科医は他の医者と違って、手技的なものが上手なんですね。
特に僕はNICU(未熟児や新生児の集中治療室)にいましたから、500gくらいしかない未熟児ちゃんの大人の親指より小さい手の甲に点滴を入れたりしてたので、そういった手技に関してはちょっと自信があったのです。
未熟児ちゃんもそうですが普通のお子さんであっても、子供の血管に的確に針を刺すというのはちょっと特殊な技術が要求されます。
医師個人個人の生まれ持ったセンスもあるでしょうし、ある意味職人技の域だと思います。
そんな職人技を、NICUでの勤務医時代は毎日当たり前のようにやってました。
ところが、開業すると採血や点滴を入れる機会がめっきり激減。
そもそも病院と異なりクリニックを受診する子供達はほとんどが軽症なので採血や点滴の必要がない子ばかりというのもありますし、僕の診療主義として「子供に不必要な痛い思いをさせない」というのが一貫してありますので、必然的に当院では他の小児科クリニックに比べても採血や点滴が少ないです。
開業して1年たちますが、点滴をした子供はおそらく10人に満たないでしょう。
採血にしても、中には熱がある子供にほぼ全員採血する先生もいますが、当院は「発熱5日目」を採血する基準と決めており無駄な採血はしないため、ほとんどの発熱の子供は痛い思いをすることはありません。
それでも、医学的に必要と判断される場合には当然採血や点滴をします。
先日、発熱5日目の1歳児がやってきました。
発熱5日目というのは一つのポイントで、肺炎や髄膜炎などの重症感染症とか川崎病などを鑑別するため、どうしても血液検査が必要になります。
でもって久々に採血をしたのですが、なんと3回も失敗・・・
こういうのは続くもので、先日など痙攣が止まらない子供が担ぎ込まれてきました。熱性痙攣の重積状態で、すばやい処置が要求される普通のクリニックでは起こり得ない緊急事態。
当然すぐに点滴をとってお薬を入れて救急搬送しなければなりませんが、かろうじてお薬は静注できたのですが肝心の点滴が入らず3回失敗したあげく、そのまま救急搬送するハメに・・・
幸いにしてその子の痙攣は止まったので一安心でしたが。
手技には絶対の自信(100発100中でした)があったはずなのですが、1年以上もやっていないと感覚を忘れてしまっているようです。
まあ言ってしまえば腕が落ちたってことでしょうか・・・
これはマズイ・・・
でもだからと言って、する必要のない子たちに採血や点滴をして練習なんてマネは出来ませんし、「子供に不必要は痛い思いをさせない」という僕の診療方針は絶対に曲げたくはありません。
う~む、どうしたもんでしょう。