僕の専門でもある「母乳シリーズ」を始めようかと思います。
今日はそのイントロダクション。
僕はこれまで、NICU(新生児集中治療室)での経験が長く、特に最初に研修した病院「岡山医療センター」は、先進国で初めてユニセフの「赤ちゃんにやさしい病院」に認定された病院です。
「赤ちゃんにやさしい病院」とは、母乳育児の推進を強く行っている病院が認定される称号です。
さいきん日本にも増えてきましたが、例えば東京では日赤医療センターが有名ですね。
そんな病院でみっちり修業を積んだので、僕はその後勤務してきた病院でも「母乳推進委員会」を作り、母乳育児の推進を行ってきました。
NICUで未熟児を管理していると、母乳の大切さを特に痛感します。
500g程度の超未熟児ちゃんの腸は非常にもろく、ミルクを飲ませると腸が壊死してしまい赤ちゃんは死んでしまいます。
そんな未熟児ちゃんの腸を守るのは「母乳」しかないんです。
どんなに医療が進歩していても、メーカーがどんなに高品質なミルクを開発しても、未熟児ちゃんの命をつなぐ究極のアイテムは「母乳」だったのです。
これはNICUという特殊な場での話ですが、一般的には母乳には以下のメリットがあります。
1.栄養が豊富
粉ミルクにはない、母乳じゃないと得られない貴重な栄養源が豊富に含まれています。
2.免疫がつく
これも母乳にしかない免疫物質が多くふくまれています。風邪などから守ってくれます。
3.母子関係の確立
最近はこれが重要視されていますし、僕もここを強調したいです。
母乳で育てた親子は、そうでない親子に比べて「虐待」の比率が格段に低くなるというデータもあります。
母乳育児をすることにより、母親の脳内の「オキシトシン」というホルモンが分泌され、「母性」を高めるという効果が認められています。
我が子に対する愛情が強くなるわけですね。
母親の愛着が強くなると同時に、赤ちゃんも母親に対して愛情を持つようになることが分かっています。
これの裏付けとして、母乳で育てた子の方が、将来非行に走ることが少なく、高学歴になる確立が高い、という欧米のデータもあります。
また、今回の震災で被災された方々などでも、母乳を与えることにより子供の不安な気持ちを和らげる効果があるため、僕も所属する「日本母乳の会」では避難所での母乳推進を提唱しています。
4.経済的
粉ミルクを買うお金が必要ありません!
実にエコですね。
しかも例えば今回の震災の影響などのように、「物資がない」「水がない」状態でも赤ちゃんのお腹を満たしてあげられます。
5.成人病にもなりにくくなる!!
これはつい5年ほど前に世界的に権威ある医学雑誌で紹介されました。
母乳で育てた子と、そうでない子を、20年間追跡調査を行い、20歳での成人病のリスク(ある種のリポプロテインの測定で分かります)を比べたところ、明らかに母乳で育てた子の方が低リスクだったことが分かったのです。
将来の成人病すら予防できてしまうわけですね。
この他にも語りつくせないほどのメリットがあります。
親子関係が希薄になりつつある現代、母乳育児をすることにより、次世代を担う子供たちをより健康に、より知的に、より高学歴に・・・そして何より、親子関係をより親密にする効果があります。
みなさん、お子さんは母乳で育てましょう!!
「母乳シリーズ」は今後も不定期ですが続けていきます。