若者の投票行動 | tadahiのブログ

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若者の投票行動

 

 若者が選挙で投票に行かないのは、「現状に満足しているから」、と唱える人がいます。本当にそうでしょうか。私には、若者が現状に満足しているとは思えません。就職氷河期の若者も、当時は社会に対して大きな不満を持っていたと思います。だからと言って、当時の若者の投票率が上がったという話は聞いたことがありません。彼らの世代、20代、30代の投票率は、平成5年から急落し、平成15年頃まで回復していません。そして、一時回復していたものも、平成24年頃にまた急落しています。これは、就職難の時代と一致しているように思います。ですから、不満があったとしても投票行動には繋がらず、むしろ無力感からか投票には行かないようになっているように見えてしまいます。これだけでも、若者は「現状に満足しているから」投票に行かない、ということは言えないのではないでしょうか。

 若者が投票に行かない理由は、投票の価値を認識していないからではないかと思います。あるいは、投票と生活の改善とが結びついていないのかもしれません。投票自体していないのに、「投票しても何も変わらない」という思い込みと無力感もあるのかもしれません。あるいは、社会に対する失望感が強いためかもしれません。これらの意識も含めて、投票することの価値を正しく認識できていないのだと思います。投票行動の価値が低いと他の行動を優先することになり、結果的に若者の投票率が低くなるのではないでしょうか。

 視線を変えて、行動に価値観が持てない時の問題を考えてみます。唐突ですが、歯科の最大の敵はディズニーランドと言われているのをご存知でしょうか。歯に問題があり、歯科医院への通院が必要な状態でも、歯科医院よりもディズニーランドを選んでしまうという患者さんの心理から、このようなことが言われています。ディズニーランドを問題視しているのではなく、歯科医院にいくよりも、楽しい方を選んでしまうという問題で、楽しいことの代表としてディズニーランドが例として出されているだけです。ここで強調したいのは、人は健康や病気を治すことよりも、目先の楽しいことを選んでしまうということです。行動の理由として、歯の健康と楽しいことを比較しています。ここでは、歯の健康も大切だが、楽しいこともしたいという葛藤があって、楽しいが優ってしまうという結果のように聞こえます。しかし、実態は、歯の健康の重要性は、楽しいこと、ディズニーランドと同程度かと言えば、歯の健康の方がはるかに低いのが、多くの人の認識です。この場合、歯科医が患者さんに行うべきアプローチは、歯の健康と楽しいことを比較してもらい、歯の健康を選んでもらうように指導することではありません。それは第二段階の話であり、真っ先に行うべきことは、歯の健康と楽しいことの価値を同等にすることです。つまり、歯の健康の価値観を上げることが重要であり、楽しいことと歯の治療の葛藤を産むことが真っ先に必要となります。

 この話と若者の投票率を考えると、投票と楽しいとの価値を同じにすることが必要だと考えます。少なくとも、ディズニーランドに行くのと投票に行くのが同じ程度大切だという認識を持ってもらうことが必要だと思います。若者に「投票とディズニーランド、どっちに行く?」と聞けば、ほぼ100%迷わずディズニーランドを選ぶでしょう。この状態から、悩んでからディズニーランドを選ぶ状態に変わるようにできなければ、若者の投票率は上がることはないでしょう。どんなに生活が苦しくても、どんなに社会に不満があっても、それだけでは、投票行動には結びつかないと思います。苦しい生活や不満のある社会を変えるためには、政治を変える必要があり、それができるのはその意識を持つ政治家であり、その政治家が出てくるためには選挙で選ばれる必要があり、その選挙で投票できるのは、若者を含めた選挙権を持つ国民である、だから投票に行かなければならない、という認識が必要だと思います。さらに、投票行動は即効性のあるものではなく、紆余曲折し、変化には長い時間が必要であり、たゆまぬ努力の上にしかやってこないという認識も必要だと思います。それは、私自身の経験から、若い時は、特に性急に考えがちなので、結果が出ないとすぐに失望し、投げ出してしまうと思うからです。

 若者の投票率が低いのは、現状に満足しているのではなく、不満が政治的行動、投票によって変えられるということを認識し、意識できていないこと。さらに、社会を変化させることは、性急にはできず、長い時間と努力が必要であり、長い忍耐が必要だという認識がないためだと思います。このようなことは、若者だけ不足しているとは思えません。どの年代でも、一定数はいると思います。しかし、社会生活の中で年齢とともに少しずつ上記のように認識する人が増えていき、高齢になっていくに従い、投票率は上がっていくのだと思います。若者の投票率を議論するのであれば、40、50代の投票率の向上も含めて議論するべきではないでしょうか。