Wake Up, Girls! | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

山本寛監督より「やってほしい」と要請があり、後編の原画を少しお手伝いしました。
ダンスシーンの9カットです。

「まぁ・・9カットなら」という気持ちがなかったといえば嘘になりますが、ダンスシーンとなればかなりの労力が必要になります。
カット内には常に複数人、ステージ衣装は普段着に比べれば線が多いわけで、しかも踊っていれば基本的に止まっている瞬間はありません。
戦闘シーンと同じボリュームなのですね。
想定よりも随分時間がかかってしまいました。(そんなんばっかだけど)

踊りの作画は何度か経験ありますが、これが楽しいんですよ。
体操競技などもそうですが、体の各部の動きを、本物の動きからアニメーションとして選び出して凝縮する作業はとても楽しく、アニメの基本と言っても良い瞬間がたくさんあります。

何より、フルサイズ(全身が入っている画面)の動きを作れるのが良いですね。
アニメではフルサイズの芝居ってあまり作られません。
自分で絵コンテを描く場合は必ず入れますが、技量が露骨に出てしまうのでリスクが高いのです。
でも、バストアップでの顔芝居は限界があってアニメーターとしてはちっともおもしろくないわけで、なるべくならフルサイズのカットでどんな表現ができるか試したいですよね。

音楽に合わせた動きを作るのは制約がある分、やり甲斐があります。
巧くいってるかどうかは観てのお楽しみですが・・・。


後編の仕事の途中で前編の「青春の影」を観てきました。
アイドル世界の生々しさ(ボクは詳しく知りませんが)が、アイドルゆえの特殊性によらないで普通に生活する私たちにも返ってくるような作りになっていてとても良かった。
CDの手売りを提案して街角や公園で一所懸命売るのだけどうまくいかない。
昔のフィクションなら、こうした手作りの努力が様々な人の手助けにひろがり、幸運によって花開く…というのが定番でしたが、挫折します。

作品とは別な余談ですが
この生々しさは今の日本を象徴しているように思いました。
現実の経済でもそんな甘いやり方は通用しないわけですからね。
作ったものが必ず売れるという論理を「セーの法則」と言いますが、理論上の設定であって現実には常に正しいとは言えません。
今の安倍内閣の経済政策は、そんな法則の上に構築されたものが多々あります。
デフレ時は特に「セーの法則」は成立たない。
供給を増やして売るためには価格を下げねばならず、デフレを悪化させ結局は全体の景気を冷え込ませるだけでなく、負け組や多様な文化が淘汰されていくことになります。
デフレが恐ろしいのは、単にお金の問題でなく文化に大きく関わるものだからです。
なので、緊縮財政とともに、供給力を高めれば景気が良くなるという規制緩和・構造改革論に反対しているのです。

それと、ビジネスの論理に絡め取られてしまい、彼女たちが築いてきたある種の「伝統」が否定されてしまったことも示唆的です。
ここは後編に向けての重要な伏線になるんでしょうね。


閑話休題
さて、そんな彼女たちは難関を乗り越え、いきいきとした姿を見せてくれるのか?
山本監督の特徴的なFIX画面はシビアな心情を表現するのに適しています。

ボクも全体の物語は大雑把にしか把握していないので、完成が楽しみです。

後編の公開は12月11日金曜日。二週間の限定公開!
http://wakeupgirls2.jp/


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