いま夕食が終わったとこ。一人で食事をしていたらムッシュが入ってきたので、そのままムッシュと一時間くらいおしゃべり。ただ、こちらは一人で勝手にワインをがばがば飲んでいたので、少し不明瞭なところもあった。
まず、大学は明日はないの?とか授業はどう?とか聞かれたので、大学は明日はないし、授業は非常につまらない、と答える。ほんとはいまストの真っ只中で授業なんてないし、あったとしてもそれほど行く気はない。だいたい、二週間に一回の授業が二つだけというカリキュラムなので、大学に行くことは最大でも一週間に一回。まぁ、そういうことをいちいち答えるのも面倒なので、適当に流す。
そこから、明日のパリの交通機関のストについて。ムッシュの話を聞く限り、どうやら組合側は生産的な代替案を出すこともなく、ただ賃上げを要求して騒いでいるらしい。どうもフランスにはそういうところがある。自分の欲望を声高に主張して、それが受け入れられないと、相手の迷惑を顧みず騒ぎ出す。それはムッシュも嘆いていた。今回のストもほんとに馬鹿だよね、ということを二人で確認しあった。
ストの話からまた大学の話に戻る。何でパリに来たの?みたいなことを聞かれたので、フランス文学を勉強してたからだよ、と答える。これ、今までに何回も伝えたこと。さすがに八十歳なので、同じ話を何回かしなければならないこともある。でも、それが逆にこちらにとっては気楽。こちらが言ったことを適度に忘れてくれるので、プレッシャーを感じることなく、いろいろと素直に話すことができる。
「大学の授業は非常につまらないけど、フランスに暮らすという経験自体は悪くない。フランスでは、人々がエコノミーということを強く意識しているように感じる。限られた資金や時間を最も効率よく使うことを常に考えているように思う。それはあなたの生活を見ていても感じることだ」というようなことを言ったら、そうか、と妙に納得された。そこからなぜか話はムッシュの親戚が入っている老人ホームへ。
この老人ホーム、レジオンドヌールというフランス国家の賞(日本で言う紫綬褒章みたいなもの)をとった人のみが入居を許された施設。施設のパンフレットも見せてもらった。サイトもあるので、アドレスを載せときます。詳細はまたそのうち紹介します。
それから、話題は政治に移ったような気がする。記憶があまり定かでないのだが、マルローはアホだったこと、それからミッテランは、確かに頭は良かったけれど評価は低かったことを教えてもらったような気がする。ミッテラン、頭が良いのは誰もが認めているのだが、どうも信念がなかったらしい。「ミッテランはごみだ。ただ、頭が良かったことだけが救いだ」みたいなことを言われたりもしたらしい。フランスでは、頭の良さよりも情熱とか信念とかの方が評価される。東大卒で頭はめちゃくちゃいいけれど情熱も信念もないヤツよりも、中卒だけど信じるもののために気合入れて突き進んで、自分の会社をおこしたようなヤツのほうがはるかに尊敬される。個人的にも、頭だけいいやつはどうもヤダ。
確かそこらへんでムッシュの洗い物が終わったので、会話は終わり。ただそのあと、一冊の本を貸してくれた。アンリ四世に関する本。アンリ四世は、宗教戦争が激化したときにみずから宗派を変えて、宗教戦争を終わらせた人。たしかに、彼はフランス史上もっとも高潔な人物だったかもれない。いままでまったくの盲点だった。
というわけで、そんな感じのムッシュとの会話でした。大学のこととかに話題が行くと微妙に緊張するけれど、適度に物忘れしてくれるので楽。何よりもものすごい経歴の持ち主なので、話していて非常に勉強になる。最高のメンターと一緒に暮らすことができてラッキー。都合の悪いところは適当にごまかしつつ、吸収できるところはすべて吸収してから帰国しようと思ってます。
追記 : 老人ホームのサイト、なぜかいまアクセスできないので、後日あらためて載せます。それから、今日は本当は墓地に行ってサルトルとかの墓を見たことを書こうと思ってたんだけど、それもまた今度。あと、パリが春になって人々が徐々におかしくなってって、きょう一日だけでも二回もブチ切れた人を見たこと、それからエッフェル塔のそばにいる詐欺集団についても書こうと思ってたんだけど、それもまたそのうち。季節の変わり目で体調が優れないことも書こうと思ったが、これはもうめんどくさいので書かない。