実は今回、他の山に登る計画を立てていたのだが、行程を計算してみたらどうも時間的に無理があるようだったので違う山をと考えてたら、前に登る計画を立てていた「天主山」に白羽の矢がたったわけだ。
天主山
九州脊梁三方山の北に位置し内大臣川の西にそびえ立つ。山の麓の台地に相藤寺城と呼ばれる中世阿蘇家の城が築かれていたが、そこに16世紀キリシタン城代が居をなし「ゼウスの山」として信仰したのが、この山の名前の所以と聞く。この山の頂付近は石灰岩に覆われ貴重な植物が群をなしている。特に頂上から西へ20分、切剥への稜線沿いはヤマシャクヤク、トリカブトの大群落があり訪れる登山者も多い。”九州百名山”
地図で見てみると、名前ほどたいした山ではなさそうなので、その先にある「三方山」まで行程に入れよう。もし時間的に無理なら引き返せばいいわけだし。
最近の山登りの時の私は、あまりにも早起きなので現地に早く着きすぎる。ということで今回は1時間遅く起きることにした。最近仕事で疲れているしね。
朝、6時に自宅を出発、熊本市から御船町に入り、国道445号を山都町に向けて進む。
445号から旧矢部町にある「通潤橋」の方に入り、そこから「鮎の瀬大橋」を目標に進む。

橋を渡って県道153号を東(左折)に進む。
県道153号をひたすら進むと「天主山登山口」の看板があるので右折し、山道を登っていく。1kmほど進むとヘアピンカーブに「天主山登山口」の看板があるのでそこを右折。そこからは林道となり、かなり狭くなるので、大きな車や運転にあまり自信がない人はそのヘアピンカーブの内側にある駐車場から歩きとなる。ただし、ここから登山口まで2kmほどあるのでご注意を。
その先の道はかなり「悪路」である。始めのほうは普通車でも進めるので余裕で進んでいると、ドンドン道が悪くなっていく。私の車はジープじゃないぞ…。

1kmほど進むと、そりゃもうすごい道になる。本当に通れるのか?と思うくらいの悪路だ。登山口には駐車場があるということなのだが、このまま進んでもそんな駐車場なんてありそうもない。
どうする…ここ付近に停めて、この先は歩くか…
いや… せっかくここまで来たんだ… とりあえず行けるとこまで行ってみよう…
でもUターンもできない状況になったらどうしよう…
とかなんとか考えつつも恐る恐る進んでみる。
お?道が突然良くなったぞ。コンクリート道になったのだ。
そしてその先に駐車場があった!(厳密には広場?)
そこには車が数台停まっていた。もう登っている人がいるのだ。

駐車場には停めれそうにないので、Uターンして道脇のスペースに駐車する。
そこで準備をして、山登り開始だっ!
入り口から林道をしばらく進むと登山口を示す看板を発見。

私は何のためらいもなく林道(鮎の瀬新道)をそのまま進んだ。
右から聞こえる川のせせらぎをBGMに進んでいく。
でもなんか道がとても悪いぞ?それに車はあったけど人の入った形跡が見当たらない。
10分ほど進むと道がとんでもないことになっていたっ!
道がなくなっているのだ!壁だけが残っている。水害で道が流されたのだ。

この細い壁の上をいくのか??マジで??
恐る恐る渡ってみた。渡ってみてから気がついた。
確か昨晩経路を見ていた時に「始めは尾根を登り続ける」だったような…
地図で確かめよう。
地図の登山道は確かに尾根を真っ直ぐ登っている。そして私のいる道は尾根と尾根の間の川に沿っている。
間違っているぢゃないかっ!!
もう一度入り口まで戻ってみた。
あった…登り口…
さっきの「登山口」の看板の山側の崖(それほどでもないけど)にひっそりとトラロープが垂れ下がっていた。これが登山道かぃ…
もうちょっと目立つように表示してくれれば間違うこともなかったのに…まぁ、見落としたのは自分だし、文句を言う人もいないのでさっさとその崖をロープを伝って登っていく。

ロープで登った斜面の先もけっこうな急勾配で、すぐに息が切れる。思ったより険しいぞ… なんか国見岳を思い出すなぁ。
そういえば車を駐車した付近は携帯は圏外だったが、天主山の登山道には国見岳のように携帯がつながる地点に表示がある。その付近を通過する度にメールを受信するので「ドキッ」とするのも国見岳に似ている。

尾根を登り続けること1時間、いっこうに勾配は続いている。こりゃ本当に険しいぞ…(汗)
一度休憩することにしよう…。
登山道を避けてシートを広げて休憩していると、上から登山者が降りてきた。
初老の方であったが、疲れている様子でもない。この先はたいした行程でもないのかな…。
休憩を終えてまた尾根をひたすら登り進む。30分ほどで最初のピークに到着。ここ付近が「天主の舞台」ってとこかな? しかし、昨晩ネットで調べた時は看板があった。看板を探しながらもう少し進むと…
ありました「天主の舞台」の看板と休憩スポット。

そこから木々の間から天主山が見える。あれが天主山かぁ…けっこう高いなぁ。
天主の舞台での休憩を終えて先を進む。まずは降りだが、すぐにまた登りになる。勾配はそれほどでもないが、これほど続くと足の負担はハンパない。
ここから先は遠方の景色が見えるようになる。最初のピークでとうとう天主山の足元が見えてきた。

登山道は切り立った稜線のような尾根を天主山に向かっている。
しばらく進むと今までで一番きつそうな勾配が壁のように立ちはだかる。
ここが最後の登りか?
いやいや、国見岳や茂見山の時の例もある。頂上と見せかけて、登ってみると手前の山だった…なんてことになった日にゃ、疲れがドッとくるのだ。騙されないようにしないと…。
しかし、この勾配、かなり長い。本当に頂上じゃないか?

と思ったら、やっぱり頂上手前の小ピークだっだ。ふぅ…やっぱりね…
気を取り直して先を進む。
しばらく進むとまた壁のような急勾配が現れたっ!
それもかなり長い。これはさすがに頂上だろ…。
気合を入れて登っていく。ロープが下がっている箇所もあるが、ほとんど四つん這いで登っていく。
もうすぐ頂上だ!
と思ったその先に信じられない光景がっ
見事に期待を裏切るもうひとつ先にある頂上!!
うそでしょ…
それも登りが延々と続いていて、その先に壁のような急勾配が見える…。

おぅ!「デウスの山」らしいぢゃないかっ!登ってやるぜっ!
年甲斐もなく火がついてしまい、後先を考えず山を回り込んでいる登山道ではなく急斜面を這いつくばって真っ直ぐ登ってやった。
(後でわかったのだが、ここ頂上付近は植物を守るために道をロープで作ってあり、それ以外の場所は立ち入らないように作意されている。ただそのロープが月日と雨風の影響で表示が見えにくくなっているのだ。くれぐれも登山道を外れることのないようにしましょう。)
しかし標高も1400m近くにもなると空気も薄いようで、息の切れ方が凄まじかった。もう…なんていうか…死ぬんじゃないかって思ってしまった…。
それからのことは酸欠気味でほとんど覚えていない。やっとのことで頂上が見えた時に始めて我にかえり、後ろを振り返ってみた。
おぉッ!なんだこの絶景ゎ!!

カメラ(iPhone)ではお伝えできないのが残念なのだが、木々の間から見える遠くの山々がとても美しい。
そして息も切れ切れで山頂に到着…。
いや…マジで疲れたゎ…(檄疲)

山頂は木々に囲まれて見晴らしはよくないが、この季節はまだ木々に葉がないので、間から景色を楽しむことができた。
下に見える街は旧矢部町だろう。熊本市はどっちかな?
おっ?近くに国見岳があるじゃないか!お~っ 見えるゎ国見岳♪
いやいや…そんなことより、とりあえず休憩しよう…。
早速シートを広げて休憩… 少しずつ体力が回復する。
でも水の消費量が多いなぁ。夏を迎えるにあたって、少し水の量を増やすかな…。でもそうなると重くなるしなぁ…。
などと考えているうちに体力が回復したようだ。
よし、お昼まで時間があるんで、もう少し先に進んでみよう。
そう、ここから「三方山」に縦走する計画だ。
出発準備が整い、地図でこれからの道のりを確認する。
ここ天主山から三方山までは稜線を進むことになる。ただアップダウンが気になる。標高差はどれくらいだろう。
登山道で一番標高差があるとしても50mほど。ここ天主山とさっきの天主の舞台との差は400m。うん、たいしたことはなさそうだな。
先天性楽天家な私は、時間の許す限り三方山を目指すことにした。
天主山から三方山への登山道は荒れてはいるが、道がないわけではないので普通に(ちょっと普通じゃないとこもあったけど)歩ける。
基本的に稜線を進めばいいので道を誤ることもない。

ただ、普通に歩けることは歩けるのだが、安全策が施されていないので両脇の切り立った斜面を見るとちょっと怖い。前に登った「三国山~国見山」を思い出す。
でも心強い味方があった。国見岳だ。

九州山地最高峰なのでこの稜線からも確認できる。なんか見守ってもらっているような気がして、とても気分が楽になるのだ。
なんか好きなんだよね、国見岳。今年もいつか登ろう。
何度かアップダウンを繰り返して進んでいると、急に開けた場所に出た。
なんか…幻想的だ…

別段、なんてことない場所なのだが、なぜだろう…不思議な感覚だ。
多分、ずっと急勾配や切り立った稜線ばかりだったので、こんなフラットな広場みたいな場所がなかったためだろう。
地図やスマホで位置を確認しながら進んでいるが、どうも三方山にはたどり着けそうにない。物理的には可能だろうが、時間的に帰りの時間を考えるとここあたりが限界のようだ。
よし!今回はこの景色の良いピークで終わりにしよう!

ということでここお昼にする。

今回のお昼ご飯。
今回の目玉は新しく買ったクッカーだっ!(って、食べ物じゃないのかぃ)
これまではヤカンでお湯を沸かしていたのだが、いかんせんヤカンには取っ手があるし注ぎ口があるのでどうしてもかさばってしまうし、中に何か入れようにも蓋部分が狭いので大きいものが入れられない。
ということで、このクッカーだとガスがすっぽり収まるし、取っ手もしまえるのでリュックの中に余裕が生まれる。という理由で購入したのだが、考えてみればもう少し早く買っても良かったんじゃないかと…。
とにかくここで昼食をとり、休憩した後、さぁ出発準備をしようとしたその時っ!
足がつった…
おぃおぃマジかよ(大汗)
それも普通のつり方ではなく、足全体がつってるような感じだ。
こんなところで「全身痙攣」みたくなってしまったらどうしよう(焦)
なんとか足のつりはなくなったが、よくよく考えてみると、急勾配に続く急勾配で足をかなり酷使している。自分の余力も考えず「行けるとこまで!」なんて計画自体、無謀な計画だったのだ。
それに一番考えなくてはならなかった「年齢」。まぁ、いつまでも若くはないってことだ。
20代だったら体が動かなくなるまでバテても、時間を置けば回復する。しかし、齢50近くにもなれば回復力もすこぶる悪くなるのだ。
次からは年齢も考えた「余裕のある登山計画」にしよう。
…ってか…こんなとこまで来ちゃったけど、残った体力で本当に帰れるのだろうか(汗)
そんな不安も残しつつ、帰路につく。
まぁ、そんなことを心配するくらいの方が良かったのだろう。無謀な行程は止めにして、こまめな休憩をとりつつ、なんとか天主の舞台まで降りてきた。
うん、もう少しだ。頑張ろう。
そんな独り言を何回言っただろう。最後の登山口手前では「膝が笑う」どころか大爆笑していた。
最後のロープを伝って登山口に降り立った時には、あまりの嬉しさと安堵感で、本当に大声で「終わった~!舐めてかかって申し訳ありませんでしたっ」と叫んでしまった。
今回の山登りでまたスキルアップした。
山登りのルートは 登り体力40 降り体力40 温存体力20 で計画しなければ大変な目にあう。

さて、いろいろとハプニングはあったが、今回登った「天主山」は、これまで書いた通り舐めてかかったら大変な目にあう。
しかし、その登山道はきちんと表示(赤テープなど)もあり、全般的には圏外だが場所によって携帯電話が通じる場所も多い。まず迷うことはないだろう。ただし、道は整備されているとは言い難いので、足を滑らせたり、捻挫したりするリスクはあると思う。
ペース配分も難しいので、初心者は決してソロでは登らない方がいい。
あと、登る前のストレッチは忘れずに…。
…と、今回はおまけで一枚の写真。
来る時には道の険しさのあまりに気づかなかったのだが、登山口駐車場に向かう途中にあったキレイな風景。

植物にはまったくのノー知識なので何の花なのかわからないが、とてもキレイな花畑だったので車を止めて写真を撮った。
こんな風景に出会えるのも山登りの楽しみでもあるのだ。
この執筆中に「熊本地震」を被災した。
人生で経験をしたことのないレベルの地震で、なおかつここ熊本は地震災害を受けたことがなかったせいか、被害は想定を大きく上回るものだった。幸い、私自身は被害はそれほどでもなかったが、熊本市の隣の益城町での被害はそうとうひどかったようだ。
今回の地震で被災した人々の早期の復興を祈るばかりである。
がまだせっ!!熊本!!
平成28年4月23日(土)
おわり