村上龍の愛と幻想のファシズムを読んでナチス・ドイツの敗因が分かった。


愛と幻想のファシズムの狩猟社には軍を全面的に任せられる人物で山岸良治っていう極めて屈曲かつ忠実な男がいた。


しかしナチス・ドイツのヒトラーには軍を全面的に任せられる人物がいなかった。


ナチス・ドイツの軍トップを挙げてくと、まずナチス親衛隊全国指導者ハインリヒヒムラー。彼はチー牛顔で、子供の頃から虚弱体質だったが、漠然とした軍への憧れと妙な使命感を抱いている人物だった。第一次世界大戦では熱烈に軍へと志願するも、その体の弱さからことごとく不採用。その後奇妙な縁でヒトラーと出会い、その優れた行政管理能力を認められてナチス親衛隊を任され、ナチス親衛隊をヒムラーにとっての「僕が考えた最強の軍隊」に組織していった。第二次世界大戦では様々な戦争犯罪に従事するも、ヒムラーがその場面を見学したらあまりのグロさに気絶したというマヌケぶり(爆笑)。第二次世界大戦末期には独断で連合国と交渉して自分だけ命を助かろうとするも、ヒトラーにバレて逃亡。一兵卒に返送して逃れようとするも連合国に捕まり、ニュルンベルク裁判で死刑となった。ヒムラーに親衛隊を任せるとか、ゼロこと相田剣介に狩猟社の親衛隊クロマニヨンを任せるようなモンだろ(爆笑)。


一方で国防軍のトップは、ドイツ国防軍最高司令部総長のヴィルヘルム・カイテルってのがいる。彼は立派な容貌と口髭をしていたが、同時に意志の弱さと軍事センスの欠落を抱えていた。それを利用され、ヒトラーの命令をただ承諾するだけの存在として利用された。ヒトラー曰く、彼は映画館の案内人程度の存在だというが、なぜそんな人物を国防軍トップに添えたかというとただ犬のように忠実だからという話だそうだ。彼は最高司令部に籠もってばかりでヒトラーの無謀な命令は何でも承諾し、前線の指揮官からは忌み嫌われていたそうだ。


もう一人の国防軍トップとして、空軍のヘルマン・ゲーリングってのがいる。こちらの方が軍トップとして有名か。彼は第一次世界大戦のエースパイロットで、終戦後はナチスに入り、ナチスの政権獲得後は空軍の再建を担当した。と、ここまでは立派な経歴を歩んでるようだが、実戦では前線の特に戦闘機パイロットの失敗を罵倒するばかりでこちらも現場では忌み嫌われていたらしい。


後はナチス突撃隊のトップエルンスト・レームってのがいる。第一次世界大戦で活躍し、戦後はナチス突撃隊のトップに就任。んが、ナチス突撃隊は規律が乱れており度々問題行動を起こしたコト、またそんなナチス突撃隊をヒトラーの意思に反して正規軍化しようとしたコトから長いナイフの夜事件で粛清される。


とまあナチス・ドイツの無能な軍最高首脳陣を挙げてみたが、そもそもヒトラーそのものがエリートの国防軍軍人から「ボヘミアの伍長」などと影でバカにされる存在だったらしい。ヒトラーはグデーリアンの機甲部隊創設を認めたり、マンシュタインの西方電撃戦プランを認めてるにも関わらず、戦後の国防軍の軍人達は自分達の手柄ばかり主張して自分達の失敗は何でもヒトラーに押し付けていたらしい。「愛と幻想のファシズム」の鈴原トウジが山岸良治からも自衛官からも忠誠を誓われていたのとは大きな違いだ。最初に無能なナチス・ドイツの軍首脳陣を挙げてみたが、そもそもヒトラーがこんなんじゃあ戦争には勝てない。ナチス・ドイツも負けるべくして負けたというコトが良く分かる。勝手な憶測だが、「愛と幻想のファシズム」の狩猟社のメンバーがそのままナチス・ドイツと入れ替ればナチス・ドイツは勝てたと思う。


ヒトラーはヒステリックだけど鈴原トウジは常に冷静だし。