アルバム「誰が為に鐘は鳴る」収録。
ヘミングウェイとスコット・フィッツジェラルドというのは同世代の人たちで、
どちらもロストジェネレーションと呼ばれる、
アメリカが第一次大戦直後のものすごい好景気と繁栄の中にいて、
だけど、戦争によって価値観を喪失した世代でしょう。
唯一の価値みたいなものをヘミングウェイは肉体に求めたし、
スコット・フィッツジェラルドは、
ものすごい浪費をしたわけですね、パーティーで。
「夜は優し」というのは、
「テンダー・イズ・ザ・ナイト」というその人の作品のタイトルなんですね。
タイトルはそういうイメージがあって、歌そのものは書いてあるとおりです。
音楽の話に戻れば、今回、できるだけアコースティックなものをやろうとした。
’80年代中期から後期というのは、
MIDIとかサンプリングマシーンとか、レコーディングシステムとしては、
アナログからデジタルに変わって、
あらゆることが機械的にできるようになった時代なんですね。
今の主流の音、
特にダンスミュージックには、そういうサウンドが活躍したんですね。
でも、ある日、カーラジオをつけてFM放送聴いたりすると、
ほぼみんな同じような音なんです。
僕なんか、ボーカル、歌をうたうシンガーなわけだし、
もう一度、自分がプレイして空気の振動によって
何かが伝わるっていうことを大切にしたい。
それはこれから先の僕ら自身の生き方みたいなものにもね。
でも、今は、そういうアコースティックなものをデジタルで録る時代なんですよね。
すごくナチュラルなものと、
科学技術が進歩したものとがお互いに接点を持ちながら、
アコースティックで、ナチュラルなんだけど、新しい技術も入ってる、
そういう方向に向かいたいと思ったんです。
(省吾談)
アルバム「誰が為に鐘は鳴る」の佳曲なのだが、
なんとなく地味な印象があるのは、
前後の曲がインパクト強過ぎるからだろうか。
ちなみに、
アルバムツアーである「ON THE ROAD 90」では演奏されていない。
「ON THE ROAD 96」のサブタイトルは
「"Tender is the night"」(夜は優し)だが、
こちらでもやはり演奏されていない。
そう考えるとちょっと不憫な曲ではある。