ごくたまに
「これベストアルバムなんじゃない?」
と思うオリジナルアルバムに
出逢うことがあります。
全曲好き!という
個人的な好みの問題ではなくて
全曲をシングルにしてもいいぐらい
1曲1曲の存在感が際立っている
という意味です。
たとえばわたしの中では
キャロル・キングの
「TAPESTRY(邦題はつづれ織り)」が
まさにそんなアルバム。
↑歴史に残る名盤です。
わたしはキャロル・キングが大好きで
コンサートに行ったこともあります
そんなアルバムは
B'zにもあります。
それは、1992年10月28日リリース
6枚目のアルバム「RUN」です。
「RUN」はわたしがB'zを知って
初めて手にしたアルバムなので
個人的な思い入れも強いですが
それを差し引いても
全曲のクオリティーが高い。
高すぎるんです。
前作「IN THE LIFE」も
だいぶすごいけど
「RUN」はB'zが
現在の作風である
ハードロックという分野に
初めて挑戦したにも関わらず
ダブルミリオン(200万枚)以上という
驚異的なセールスを記録した
という意味でも
このアルバムが持つ破壊力が
わかるかと思います。
では独断と偏見による
全曲解説やってみます。
1.THE GAMBLER
オルガンのソロから始まる
ロックナンバー。
アメリカの町外れのカジノを
彷彿とさせる土の匂いがする曲。
映画のワンシーンを見ているようで
発売当時からわたしは大好きでした。
ライブでの演奏機会はほとんどないけど
生で聴いてみたい!
"OH!何を賭ける?イチかバチかエブリデイ
ひっくり返そう ダイス振ろう
流れを変えてやろう
and we say,ooh!乗り込んでみよう
夢だけ握りしめ
行き先ない 期限もない
黄金の列車に"
2.ZERO
先行シングル。
説明するまでもない
ゴリゴリのハードロックナンバー。
当時ポップ路線で成功していたB'zが
この曲をシングルにするのは
相当勇気がいったと思います。
しかもタイアップの提案を断り
ノータイアップで勝負して
見事オリコン1位を獲得しました。
個人的には曲の舞台は東京の夜。
たくさんの人や情報が溢れる大都会で
周りの雑音が嫌になって
全部捨ててしまいたい!という
投げやりな心境になっているイメージ。
"今日はいまいち思いやりに
欠ける日だったとか
人の気も知らないで
「おまえは変わった」なんて
簡単に言うやつの
うさん臭い顔だとか
空っぽの冷蔵庫開けて
色々思い出してると
都会の暮らしはやけに
喉が乾いてしまう"
3.紅い陽炎
許されぬ愛を歌った
大人のバラードナンバー。
しっとりと聴かせるというより
燃え上がる情念を
腹の底から歌い上げる感じです。
この手の曲は
このあとのアルバムでは
結構あるけれど
それ以前にはなかった気がします。
稲葉さんの声が太くなり
また年齢もある程度重ねた
この時期だからこそできた楽曲かも。
"このままか これ以上か
愛の形 何が欲しい
傷つくのはかまわない…
いつまでも傷つけない
強く惹かれてゆくほどに
眠れぬ日は続く"
4.RUN
アルバム曲ながら
現在でもライブでの演奏回数が多く
特にPleasureツアーでは
本編終盤かアンコールで
演奏されるのが定番の
疾走感溢れるロックナンバー。
メンバーやサポメン、スタッフなど
共に活動する
仲間への想いを綴っています。
が、もちろん仲間の中に
ファンも含まれている!
だからこそ、ファンにも
長きにわたって
愛されているのでしょう。
これがシングルじゃないなんて
信じらんない!!
"人間なんて誰だって
とてもふつうで
出会いはどれだって
特別だろう
誰かが待ってる
どこかで待っている
死ぬならひとりだ
生きるならひとりじゃない
誰かが待ってる
どこかで待っている
死ぬならひとりだ
生きるなら"
5.Out Of Control
ゴリゴリのハードロックナンバー。
アルバム中最もヘビーなサウンドに
社会風刺と自虐の入り混じる
歌詞がのって
痛快な気持ちになれます。
もう30年近く前の曲だけど
歌詞の内容は現代にも通じます。
個人的には昔から
とても好きな曲です。
いつかライブで聴きたい!
"おっと電話だってうかつに
のろけ話はいけないよ
公表しなけりゃ
ノゾキだって盗聴だって自由らしい
ハイテク進み、
心の豊かさ遅れるわが国の
如何ともし難いところ
なんてどうでもいいか
いやいやよくないな"
6.NATIVE DANCE
民族音楽のような
陽気なサウンドと
片想いの相手への一途な気持ちを
表現した歌詞が特徴。
曲のイメージは
「太陽のKomachi Angel」に近いかな。
稲葉さんが口に手を当てて
「あわわわわ〜」って
するところがあったり
ラストの
「アーイーアーイアーイアイアイ~♪」
の部分は
ライブでは観客も参加できたりと
ライブでも盛り上がる曲です。
好きな人に振り向いてほしくて
背伸びしていたけど
本当はありのままの自分を
見てほしい。
そんな内容ですが
表現の仕方が稲葉節炸裂で
非常に秀逸です。
"借りてた恋愛小説
さっぱりわからなかったよ
譲ってくれたビデオ
イカしてる いつも見てるよ
誤解のもと生みそうで
おじけづいたけど
むしろ難解なゲイジュツ論
続けるほうが危なかった"
7.MR.ROLLING THUNDER
正統派のアメリカンロック。
サウンドでいうと
これがいちばん好きだったし今もそう。
思い浮かぶのは
アメリカの砂漠。
わたしは子どもの頃旅行で
車でグランドキャニオンに
行ったことがあるのですが
この曲を聴いたとき
道中通った砂漠の一本道が
頭に浮かびました。
実際稲葉さんが
アメリカへ一人旅をしたときに
見た風景を歌詞にしているとのこと。
ビンゴ!でした。
ラストの稲葉さんの高音連続シャウトが
めちゃくちゃかっこいいです。
"家をなくし草は枯れ
腹が減らないとわからない
愛する人が何処かに
消えてしまわないとわからない
叫ぼう 喉をつぶすほど
空に向かって君の名を
魂が燃える"
8.さよならなんかは言わせない
今でも絶大な人気を誇る
旋律が美しいミディアムバラード。
新たな旅立ちを前に
これが今生の別れではない、
そして今までよりもっともっと
輝くんだという決意を誓う曲です。
稲葉さんが大学を卒業するときの
心境を歌っているそうですが
わたしが知っている
数少ない稲葉さん情報を加味しても
確かにそんな感じですし
わたし自身の学生時代の感覚とも
少し似ていて共感できます。
"目的も夢もあやふやな暮らしだった
親のスネをかじりながら
時間だけがあった"
とかね、まんまですw
ラストのアカペラの部分は
今聴いても鳥肌もの。
リリース時は小6だったので
歌詞の世界観はあまりわからず
ただメロディが好きなだけでしたが
ハタチ前後になると
この歌詞が
心に染みるようになりました。
これもまた
シングルじゃないなんて
信じらんない!!
"さよならなんかは言わせない
僕らはまた必ず会えるから
輝く時間を分け合った
あの日を胸に今日も生きている
さよならなんかは言わないで
弱音を吐くなら
さあ聞いてやる
昔のことだけ輝いてる
そんなクラい毎日は
過ごしたくない"
9.月光
アルバム中最もスローなバラード。
繊細なメロディと
幻想的で
情景が頭に浮かぶような世界観、
美しくも儚い純愛を歌った歌詞で
ファンの間でも
非常に高い人気を誇っています。
失恋したときに聴いたら
涙がちょちょぎれる、危険な歌w
稲葉さんの絞り出すような
繊細な歌い方も
この曲の良さを
さらに引き出していますね。
歌い方にメリハリがあって
ボーカリスト・稲葉浩志の
魅力が詰まった曲と言えます。
"ひとつの想いだけを
貫こうとすればするほど
愛とはほど遠い力に
激しく揺さぶられる"
10.Baby,you're my home
アルバム唯一の
アコースティックナンバー。
耳なじみがよいメロディで
弾き語りしたくなるような曲です。
タイトルのとおり
温かな愛情に包まれるような
やさしい歌で
個人的にも大好きです。
アルバムの最後を締めくくるに
ふさわしい1曲。
B'zを知らない人が聴いたら
ビックリするであろう
良い意味でB'zらしくない曲ですが
B'zは意外とちょいちょい
こういう曲も作っています。
"古いアルバムをめくるように
暮らしていたよね
初めて会った頃から
ときどき君はいなくなる
何も言わないで
そのたびに二人で
途方に暮れていた
君を待てずに傷つけたけれど
部屋の片隅で
もう一人では泣かないで"
長くなりましたが
こんな感じです。
「RUN」は本当に
どれがシングルになっても
おかしくないです。
ハードロックに挑戦したと言いつつも
実はさまざまなジャンルの音楽の要素が
詰まっていて
聴いていて飽きないし
それでいてちゃんとまとまっている。
さらに、次作「The 7th Blues」への
布石としての役割も
しっかりと果たしている。
そういう意味でも
数あるB'zの作品の中で
大きな意味を持つ
アルバムだと思います。
また、過去のアルバム曲は
ライブでの演奏頻度は
低くなりがちですが
このアルバムに限っては
複数の曲が今でも
頻繁に演奏されています。
特にPleasureツアーでの演奏回数が
多いことを考えると
ファンにとっても
また、メンバーにとっても
思い入れの強いアルバムなのは
間違いないでしょう。
ちなみに、くるりの岸田繁さんも
このアルバムを絶賛していて
当時特に
「Mr.Rolling Thunder」が好きで
コピーしようと思ったけど
ギターが難しすぎて諦めたそうですw
では、今日はこのへんで。
せーのっ!
おつかれ~。