訪問記(美脚ママ篇) -2ページ目

姉との対面

少し落ち着いてきた。汗を出した後はスッキリした
爽快感もある。素肌にカッターシャツも案外気持ちが良い。
ちよっと余裕がでてきた。

ネクタイをキュッと締め、上着の袖をとおした。
濡れたシャツを、ハンカチの大きさまできちんとたたみ
ドアを開けた。誰もいない。手洗いの鏡をみる。やや、無精ひげ
が伸びているが顔の艶はいい。髪の裾はジェルで濡れた感じがでている。

「よし!まぁいいだろう」と思い、何気なく下を見ると、
手洗いカウンターの下に塵入れが置いてあるではないか
「丁度いいところにあったぁーー」

爽やかな気分で、ママのいる個室に元気よく向かった。


「ママ、ごめん遅くなっちゃって・・・・?」

中に入った私は部屋を間違えた。

「あっ!すみません、間違えました、」と、入り口
の方に引き返そうとする私に向かって

「山本さん?」と、はっきり透る声を私の背中にかけた。

「え?・・・・・」

「山本さん・・・ですね!」

「は、はい。そうですが・・・?」
「まぁまぁ、どうぞこちらに」
「あのぉ・・・?」

「何をそんな怪訝そうな顔をしていらっしゃるの?」
「いえ、あのぉ・・どちら様だったのか?・・・」
「あら、京子は電話で私が先にいくことを言っていま
せんでした?」
「え?いえ、聞いていませんが・・(いや、待てよ、何か言っていたような気もする)」

「そう、それなら御挨拶しないとね、初めまして、京子の姉です」
「えぇ~~(うそぉ~そんなー)そ、そうなんですか」

上半身裸

流れ落ちる汗を拭こうとポケットに手を入れるが、ハンカチが無い。
胸、両ポケット、ズボン、全部探したがやはり無い。
とにかく、こんな濡れ鼠のような姿はみせられっこない。
小用を済ませた後に、大の方に入り込んだ。
途中から入ってきた中年の男性は、落ち着きの無い私の行動に
しきりに首をひねっていた。

早速、狭い空間の中で上着を脱ぎ、ネクタイを外そうとするが
この暑さとあせりから、反対に首を絞めてしまった。
「ウッ」と苦しくなって我に返り、その後は下着のシャツ迄
一気に脱いで、上半身裸になった。
やっと少し涼しくなった気がする。

フーッとため息をついて、横にあるロールペーパーをグルグル
手繰り寄せた。額から、耳の付け根、首筋、胸から脇の下、
そして、背中を拭こうとする時に1本無くなってしまった


背中、これが意外と難しい。今までのような訳には
いかない。小さく切ったのでは拭きたいところに手が届かない。
(そうだ~タオルの長さにきって、それを5層ぐらいに
重ねて、縁をくるくるっと丸めて拭けば上手くいくに違いない。)

思い通り上手くいった。(なかなか、私もやるじゃないか!少しは
自信もってもいんじゃないか?)とそんな場合ではないのに
ひと時の優越感にしたった。

さて、次は、ずぶ濡れになった下着のシャツの処理である。
このまま着る気にはなれない。かといって、手に提げて行くわけにもいかない。
さて、困った?


滝のような汗

振り向きざま、「山本さんですね!」という案内人の目には
うっすらと涙さえ浮かべている。
「こちらでお待ちになって見えます、・・・ウクックックッ」と店の一番奥の個室に
誘導した案内人は、堪えきれなくなったのか、逃げるようにその場を去っていった。

上り框ちの下に、上品なヒールが目に入った。
「うわぁ~ママの靴だぁ~」
そのヒールが「遅いわねー、随分待たせるのね~」といっているように思えた。
深く深呼吸をして、引き戸を開けようとしたら、急にトイレに行きたくなってしまった。


「落ち着け、落ち着け、こんな時こそ落ちつかねば」

呪文のようにブツブツ独り言をいってトイレに入ったら、
出くわした女性が吃驚して「キャアッー」と声をあげて凍りついている。

「しまった!・・・」  こっちは女性用であった。
「アッ、ごめんなさい、失礼!」といって頭を下げ、今度は
私が逃げるように男性用の方に駆け込んだ。

「いかんいかん、こんな事では、何か今日は最悪の日になりそうだ。」
用をたしながら、恥かしさのあまりドット汗が吹きでてきた。

額と背中から、まるでナイアガラの滝のように。


不吉な予感

うわずった気持ちを引き連れてタクシーに乗った。
運転手に店名を告げると、二つ返事であっという間に店の前迄
飛ばしてくれた。

腰壁に鉄平石をあしらった雰囲気は料理も美味しそうに
思えるから不思議だ。そんな事に感心していたら、何かに
つまずいてバッタリ倒れてしまった。昨日の睡眠不足と
浮ついた気持ちで、地に足がついてなかったからだろうか。

レジを済ませて出てきた若い女性の二人は、人目もはばからず
腹を抱えて大笑いしている。何か不吉な予感がする。


しかし、背広姿で四つんばいになるのも格好悪いものである。
照れ隠しに、膝と手についた砂埃をパンパンとはらいながら
不自然な笑みを浮かべて、下げる必要もない頭を下げた。
「大丈夫ですか?」の一言もなく、止まりそうにない笑いを
抱えて二人は去っていった。

「いらっしゃいませ」といって私を店の中に案内してくれた
女性も肩が揺れている。笑いを堪えるのに一生懸命のようだ。
さっきの二人連れと同じ光景を目にしたのであろう。
こんなマイナスの心理状態でママと話しが上手くいくのかなぁー。

上司への思いやり

いやいや、これでは駄目社員の代表になってしまう。

キャップの心情も分からぬではない。考えてみれば
締め切り締め切りで、その責任を負わされているのだから
たまったものじゃないだろう。自分たちは仕事半分、遊び半分
のところも正直いってある。これからは、もう少しキャップ
のいう事も素直に聞いてみよう。

(これを聞いたらキャップ泣いてよろこぶだろうな~)

そう思い直し、コメント取りを優先することにした。
断っておきますが、今までのキャップに対する苦言は全~部
佐藤が言っていたことですから誤解のないように。

「佐藤!少しはキャップの気持ちもくまなあかんでー」



無事2社のコメントを取り終えたのは11時を少し
廻っていた。ママももう起きているだろうから早速
電話してみる。胸の高鳴りを覚える。呼び出し音
が異常に長く感じる。

いきなり電話がつながった。

「もしもし?」(うわ~ママの声だあ~)
「はい、はい」と、自分から電話をしているのに返事をする大馬鹿ぶり。
「え?どちらさまですか?」
「はい、いえ、あのー、S社の昨日お伺いした山本ですけど・・・」
「あぁ、はいはい、、それで?記事は完成したのかしら?」

もうこの後のやり取りは覚えていない。喉はカラカラで何を
喋ったのか、ただ、昼に一緒する和食のお店の屋号だけははっきりと
覚えることができた。

激怒

「お前も何を朝からボーッとしてんだー!」と机の上を「どん」とたたく
いきなり、矛先がこっちにきた。同僚の佐藤は選手交代といわんばかりに
ニヤニヤしながらバイバイの手を振っている。
寝込みをおそわれた?頭が割れそうに痛い!

「どいつもこいつも、締め切りの厳しさも分からんで
偉そうなことばっかり、何だお前、この絵は!情けない、
うーん、もぉー・・話はつけてあるから直ぐにA社とD社のコメント取ってこい!
ほんとにお前らにゃ寿命をちじめられちゃうよ!!!」
「!!!???」チャラリ~である


早々に事務所を出た。酸素の多いこと、このうえない。
事務所の一酸化炭素濃度は80%を超えていやしまいか。

とにかく、今日のメインはママに記事の了解をもらうだけ。

店に行くのは準備もあるだろうから、昼に美味しい食事でもとりながら
スンナリOKしてもらい、後は、仕事を離れたアポイントをとることが
できれば最高という段取りである。

A社とD社のコメントなんてどうでもよい。

夢から現実

急に睡魔が襲ってきた。デッサンがママのハイヒールの所に
差し掛かるころには、完全に店の夢に変わっていった。

二人は完全に合体している。深く腰を沈めると、のけぞり
背中に爪をたてる京子。眉間のしわが余計に男の欲情をそそる。
ゆっくり、ゆっくり攻めていく。

これから、というとき
遠くで声がする。聞き覚えがあるような、ないような。
その声がだんだん大きくなってきた。

「だからお前は ADが勤まらないんだ」
「だって、相手にも予算てものがありますでしょ!」
「馬鹿野郎!相手に合わせてばかりでこの仕事が成り立つか!
何で付加価値をつけて説得してこないんだ!それによって、
余分に予算を出そうってことだってあるんだー、もう一度行って
5段分記事を取って来い、それまでかえってくるな!!!」

せっかくいい夢だったのに、声の正体に現実に引き戻された。

憎い上司

そして、何のためらいもなく、人の苦労して書き上げた
原稿に赤ペンをいれていく。ここはこういう表現の方が
いいとか、まったくそんな事は意に介していないかのように。

「はい、これで編集の方にまわして!」
どっと疲れが出てきた。「クレームが出てもあなたの責任ですからね!」
(これは、言いませんよ、あくまでも腹の中でつぶやいたのです)

 毎回こんなことの繰り返し。
まあ、でも、一応完結はしたから、ゲラ刷りの紙面をもっていった
時のママの評価が気にかかる。一応完成した安堵感と、自分の表現をかなりカットされた
不満が入り混じった複雑な思いが交錯する。

「美奈ちゃん、昨日は何かいい事あった?」と他愛もない
会話を紅一点の女子社員に投げかけてみる。

「ある訳ないでしょ!」とかなり手厳しい返事。
「最近、彼氏とはうまくいっている?」

「朝からなによ!そんなこと関係ないでしょ!何か気分でも悪いことあった?」
まるで喧嘩ごしである。あ~ぁ、自分の気持ちを分かってくれる人間はだれもいないのか

これもキャップが人間的に出来ていないから課の雰囲気がわるいんだろう~な。
昼まで何をしよう。ママの似顔絵でも書いてみようか。そうだ、ミニスカートの
スタイル抜群のデッサンに挑戦してみよう

セクシーなインテリ

その雰囲気から、セクシーという電子の放射線を浴びた貴方は
どれくらい耐えられるだろうか。80%以上の人は間違いなく
落ちることうけあい。


隣に来て、脚を組まれて座られたおりには、悩殺度は100%間違いなし。
ところが、アインシュタインの特殊相対性理論が一番わかり易く、単純明快に
割り切れているという、理論派の一面ものぞかせる。

一般的には、少し引いてしまうところもあるのだが、インテリ層にはそれが魅力にもつながっている。
つかず、離れず、落ちそうで落ちない、両面を持った素敵なママである。
話題には事欠かず、仕事を忘れさせてくれる本物の接待の
できる貴重なお店ではなかろうか。

インテリと自負をお持ちの貴方も、一度このママに挑戦してみてはいかが?。


でも、よくよく考えてみると、こんな文章でママに納得してもらえるだろうか。
プライドを持ってお店を経営している人に、失礼
に成ってはいないだろうか、ママの想像している
ことが書けているのだろうか、不安がよぎる。

こんな身体にかかわることを何万人,いや何十万人の読者に
発表していいのだろうか、胃が痛くなってきた。




不安を抱えながらの出社である。あいかわらず鬼の形相のキャップ
は、脂ぎった額をいつも以上にテカラせながら、開口1番「遅いやないか!」

普通は「おはようございます」でしょうに!!!
いや、上司だから「おはよう」ならまだ許せる。ビジネスマンとしての
最低限の事も出来ない人間が私の上にいるという不条理。
いつか絶対に説教してやる。

怒り心頭が眠気を吹き飛ばした。原稿をキャップの机の上に
憎悪感を添えて置いてやった。
「ご苦労さん」という言葉を発するでもなくひたすら原稿に
目を通していた。

記事の難しさ

席につくと、昨日の夜からつまみだけで、何も食べていないことに
きずいた。

モーニングはスパとサラダバーになっているらしい。とのりあえず注文を
済まし、カバンから原稿用紙をとりだした。キヤップの歪んだ顔が脳裏を
よぎる。明日の紙面の締め切りは今日の6時である。とにかく書けるところまで
挑戦してみよう。穴を空けるわけにはいかない。

色々ママの言っていた言葉を懸命に思い出そうとした。
「水商売の子はね、意外と冷え性の子が多いのよ。何故か知らないけど」
これは関係ないかもしれない、記事にはならないなとも思ったが、まぁいいや、
何でも書き留めておこう。

そう思い直し、浮かんでくる言葉を次々に書き出してみた


どれくらいたっただろうか。BGMのワンノートサンバが軽いリズムを刻んでいる。
冷えきったホットコーヒーとスパを一気にかきこんだ。
おもむろに、未完成な梗概に目を通す。  
        
     お店の主役は貴方です
こう言い切るのは会員制高級クラブ○○の京子ママ
10代で体験した心の痛みというものを、全てプラス発想に切り替えて
今できることは何かを常に考え、それに全力投球すること。
でもこの考えに至るまでには10年近くかかったとか。
文系の姉と理系のママは車の両輪で、お互いにどちらも欠けてはならない
存在であった。

姉の思いをしっかりと受け止め、マイナスからスタート
した社会人人生を、死に物狂いで戦ってきた二人。
長いトンネルを出るまでに要した期間は10年
逃げることなく正面から取り組んだものだけが味わえる
喜び、達成感、そういった諸々の年月があって生まれてくる
内面の美しさ、優しさ、厳しさ、何気ない話のやり取りの中に
自然にでてくる教養。


「お店に来店してくれる人全てが主役です」と、いうママの言葉に
嘘はない。



読み返してみるとどうしても硬い。面白みがない。
こんな文章では読者の心に響かない。書き直し。
まずタイトル。

   ○ 仕事を忘れたいあなたに
そんな思いを スッキリ解消してくれるお店がある。
一瞬にして男を虜にする。そんなオーラを放つママがいる会員制高級クラブ○○
スラリと伸びた脚は細すぎず、適度に丸みもあり、張りもある。
美脚といわれる人は数多くいるけれど、これだけバランスのとれた人は希少だ。