いよいよ結果が出る日。
病院へ向かう。
面談室というところに通され、
担当の先生と向き合う。
自分達夫婦は座ってから自然と手を繋いでいた。
先生は躊躇なく一気に話し始める。
「染色体異常の検査結果ですが陽性でした。」
最後まで、違っていて欲しい!という
想いはあったけど、それは一瞬で壊されてしまった。
自分の頭の中が、真っ白になって、すぐに真っ黒になる。
でも、一緒に聞いていた奥さんの事が気になり、
自分は平静を装い、気丈に振る舞おうと努める。
奥さんはあまり感情が揺れていないように感じる。
自分より早くに、出産直後から懸念を持っていただろうし、
もしかしたら気持ちの整理とか着いてるのかな?
いや、やっぱりそんなことないんじゃないかな。
一生懸命に先生からの言葉を
受け止めようとしてるんじゃないかな。
先生の言葉を聞いて、そんなことを思った時、
彼女が握った手をぎゅっとしてきた。
涙目になっていた。
そりゃそーだよね。平気なわけないよ。
んで、やっぱり自分は揺れてはいけないと思った。
彼女の手を握り返した時、堪えられず
涙が出たけど、すぐに拭いて先生の話に集中した。
先生はその後、いろいろと説明してくれた。
染色体異常と言ってもいろいろとあるが、
うちの場合は21番目の染色体に異常があること。
いわゆるダウン症と言われているものである事。
それは知的な障害がみられることが多い事。
以前ダウン症は寿命が短く、30代で亡くなる方が
多かったが、最近ではその寿命もずいぶん伸びている事。
それから、軽度の水腎症があり、
腎臓に水が溜まっている状況で経過を見ていく必要がある事。
心臓の壁に3ミリ程の穴が空いていて、
経過見ながら手術が必要かの判断をすることになるけど、
現段階では手術は必要なさそうな状況である事。
腰椎の神経が本来の形ではなく、体の組織の一部に
くっついてしまっているらしい事。
これについては手術が必要だが今すぐは出来ず、
体が少し大きくなってから実施する予定である事。
手の中指と薬指、薬指と小指の骨や神経は独立しているが、
合指症と言われる状態になっており、
これも手術ができる身体になったら実施する事。
そして、今後3ヶ月に一度のペースで
総合診療、泌尿器科、循環器科、脳神経外科、整形外科に
通うことになる事と、
眼科、耳鼻科、歯医者にも定期的に受診する事。
また、療育を受ける事。
まあまあな情報量だが、
先生は一つひとつ丁寧に説明してくれた。
話しを聞いていてどんどん辛い気持ちになるけど、
同時にこの先生、上手だなーと思った。
こちらの感情を表現する暇を与えない、というか。
事実を淡々と、でも丁寧に、こちらからの質問がないか
など確認しながら進めていく。
若く見える先生だけど、
これまでに何度となくこういう話を家族に向けて
してきたんだろうな。
決して冷たさみたいな嫌な感情ではなくて、
有能な専門家、頼れる人、という印象を受ける。
息子が障害を持って生まれてきた、
という受け入れ難い事実と、
その息子のためにやらなければいけない事や
彼のためにやったほうがいい事、必要な事。
そういう情報でお腹いっぱいになった自分達夫婦は
先生にお礼を言って面談室を出た。
と、いうことだって。
さてさて、これから忙しくなるね。
頑張るね。
部屋を出てすぐ、たったこれだけの内容を、
奥さんにじっくりゆっくり話す。
そーだね。と奥さんが落ち着いた様子で答える。
帰り道はずっと奥さんと手を繋いでいたと思う。
お互いそうすることがとても自然だったんだと思う。
それぞれに辛い気持ちはあるし、
もしかしたら奥さんは1人の時に泣いたのかもしれない。
ちなみに、自分は1人の時によく泣いた。
でも2人の時は、障害を嘆くのではなくて、
彼のために何が必要か?みたいな事を話す。
先生が示してくれた具体的な事がすごく役に立ったと感じる。
2人であれば前を向ける。
だから、2人の時はとにかく前を向く。
自分達の仕事柄なのか、先生の説明が良かってからなのか、
告知を受けてから2人揃って息子の障害を嘆いて号泣、
みたいなことは一度もない。いい悪いではなく、
皆がそうあるべき、ということでもなく、
自分達はそうだったという事。
この日から、自分達夫婦が想像していたものとは違う
2人目の子育てがいよいよ始まった。