「ダブルインバース」ってご存知ですか?
英語の「インバース」とは「逆の」という意味です。
株式投資でいう「インバース」とは、指数に対して
逆に動く金融商品の事です。
例えば日経平均に対するインバース型の商品は、
日経平均が5%下がったらそれに連動して5%上がるように
設計されています。
「ダブルインバース」とは、その効果を2倍にしたものです。
例えば日経平均に対するダブルインバース型の商品は、
日経平均が5%下がったらそれに連動して10%上がるように
設計されています。
この日経平均に連動するダブルインバース型の商品の代表例が
「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」
(株式コード 1357)で、上場しており、株を買うように普通に
証券会社で買えます。
主に次のような使い方をする人が多いと思います。
① 日経平均が下がると予想された時に買う;
全体の地合いが悪くて普通に株を持ってても
儲からない時に、儲けさせてくれます。
「空売り」でも同様の効果がありますが、
万一予想に反して逆に動いた(地合いが良くなった)時に
空売りだと際限なく損が膨らみ生きた心地がしなくなる
リスクがありますが、ダブルインバースだと買った分まで
損が収まるのでまだ安心です。
② 個別株を買う時のリスクヘッジで買う;
ある企業の業績が今後は良くなると推察し
その株を買うとします。
しかし、株価はその企業の個別の業績や材料だけでなく
日経平均などの全体の地合いにも影響を受けます。
そこで「その企業独自の要因で株価が動くのは受け入れたい、
でも全体地合いのせいで動くリスクは避けたい」という場合、
その企業の株を買うのと同時にダブルインバースを買うと
全社地合いの部分のリスクヘッジになります。
インバースでなくダブルインバースにする事で、
半分の資金で同じ効果を得る事ができます。
このように使い方によっては便利な商品ですが、
一つ注意点があります。
「長期投資に向いていない」
なぜ向いていないのか?
ここ最近の日経平均の日足を見てみましょう。
先週金曜、12/15の終値は32,970円でした。
これは約3ヶ月前、9/7の終値32,991円とほぼ同じです。
(厳密には0.06%の下落)
この間のダブルインバースの動きはどうだったか?
日経平均は戻っているのに、ダブルインバースは約3ヶ月で
4.4%も下がっています。
もっと長い期間で見てみましょう。日経平均の月足です。
2021/3月の終値 29,178円。
その約2年後の2023/5月の始値は 29,123円
ほぼ同レベルです(厳密には0.2%下落)
では、この間のダブルインバースはどうだったでしょう?
日経平均は戻っているのに、
ダブルインバースは27%も下がっています。
なぜこんな事が起きるのか?
これは数学的に考えると当たり前です。
例えば、100円のものが5円上がって105円になり、
その翌日に5円下がって100円に戻ったとします。
上昇率は5%ですが、下落率は4.76%です。
上昇により株価が上がるので分母が大きくなり、
その後の下落時の下落率は小さくなります。
この場合、ダブルインバースはまず10%下がって90円になり、
9.52%上がって98.6円になります。
分母が変わる事により上昇率が下落率に追いつかなくなります。
上昇と下落の順序が逆でも同じです。
例えば、100円のものが5円下がって95円になり、
その翌日に5円上がって100円に戻ったとします。
下落率は5%ですが、上昇率は5.26%です。
下落により株価が下がるので分母が小さくなり、
その後の上昇時の上昇率は大きくなります。
この場合、ダブルインバースはまず10%上がって110円になり、
10.52%下がって98.4円になります。
やはり上昇率以上に下落率が大きくなってしまいます。
日経平均が上がれば分母が大きくなってその後の変動率が
小さくなり、日経平均が下がれば分母が小さくなって
その後の変動率が大きくなります。
ダブルインバースはその変動率にマイナスをかけて倍にするので、
上下の振れ幅が同じであれば分母の違いにより上昇率が下落率に
勝てない構造になっているのです。
日経平均が上下に振れれば振れるほど、
ダブルインバースには不利になります。
期間が長くなればなるほど、上下の振れの回数が増えるので
ダブルインバースにとってより不利になります。
ダブルインバースは、短期的に一方的に地合いが悪くなる時には
大きな利益をもたらしてくれますが、上下に振れる相場では
不利な商品なのです。
日経平均が長期にわたって一方的に下がり続ける…
という局面が果たしてあるのか?
ダブルインバースを買うのは、
一方的に地合いが悪くなると確信が持てる時のみに短期で、
あるいは、上述の②の様に個別株のリスクヘッジとして
(投資の主体でなくあくまで補助的な趣旨で)買うのみとし、
長期での保有は避けた方が良いと思います。
→ あくまで個人的意見です。
以上です。