2019年の一般NISAの非課税期間がこの12月に切れます。
どうしますか?
昨年も丁度この時期に同様の記事をアップしましたが、
今年は昨年とは事情が異なります。
来年2024年からNISAの仕組みが大きく変わるためです。
昨年までは選択肢は3つありましたが、今回からは
「ロールオーバー」は選べず、選択肢は以下の2つになりました。
① 2023年中に売る。
② 売らずに、通常の課税口座に移管する。
詳しく説明します;
① 2023年中に売る;
2023年末までに売却すれば、非課税で売却できます。
株の場合は、今年の場合は12月27日の約定までです。
投資信託の場合はファンドによって期日が異なるので、
各々のファンドの資料で確認が必要です。
売却益がある場合は、それが非課税になって万々歳ですが、
売却損が出る場合はその損を損益通算に使えない、という
デメリットがあります。
損益通算とは…
例えばNISA以外で30万円利益を上げていた時、
普通の口座で10万円の損をした場合はこの損を
上記の利益を消す事に使え、儲けが20万円になって
税金は20万円のみにかかります。
しかし、NISAで損をした場合はNISA以外の利益を
消す事に使えず、普通の口座での利益30万円に対して
税金がそのままかかってしまいます。
これがNISAで損をした場合のデメリットです。
→ このブログの別の記事
「株式投資で無駄な税金を払わないために」で
述べた調整には、NISAで買ったものは使えません。
② 売らずに、通常の課税口座に移管する;
年内に売らない場合は、自動的にこうなります。
この場合、その金融商品の税務上の買値は、最初にNISAで買った時の
買値ではなく、年末の時価に書き換えられます。
そして、来年以降に売却した場合、年末の時価との差額が売却損益と
みなされます。
例えば;
(a) 2019年にNISAで買った時の買値; 120万円
2023末の価値; 150万円… という場合(含み益30万円)
課税口座に移管し、2024年以降に170万円で売却した場合…
・実際の利益;170万円 − 120万円 = 50万円
・税務上の利益;170万円 − 150万円 = 20万円
→ 税金は税務上の利益の20万円にしかかかりません。
つまり、2023年末時点の含み益 30万円分の税金が
免除された事になります。
(b) 2019年にNISAで買った時の買値; 120万円
2023末の価値; 100万円… という場合(含み損20万円)
課税口座に移管し、2024年以降に170万円で売却した場合…
・実際の利益;170万円 − 120万円 = 50万円
・税務上の利益;170万円 − 100万円 = 70万円
→ 税金は税務上の利益の70万円にかかります。
つまり、2023年末時点の含み損分の税金を
余分に負担する事になります。
「120万円で買って170万円で売って50万円儲けた」
という点は上記の(a)(b)どちらも全く同じです。
なのに、かかる税金は;
(a)は20万円 x 20.315% = 40,630円
(b)は70万円 x 20.315% = 142,205円
となり、「年末の株価がいくらだったか?」次第で
掛かる税金が大きく異なってしまいます。
もっと酷いのは、以下の様なケースです。
・2019年にNISAで買った時の買値; 120万円
・2023末の価値; 100万円… という場合(含み損20万円)
→ ここまでは(b)と同じ。
課税口座に移管し、2024年以降に110万円で売却した場合…
・実際の損益;110万円 − 120万円 = ▲10万円(損)
・税務上の損益;110万円 − 100万円 = 10万円(利益)
→ 実際は損をしているのに、税務上は利益が出ている事になり、
その利益10万円に税金がかかります。
損した上に税金も取られる訳です。
泣きっ面に蜂です。
結局どうすればいいか?
簡単に纏めると;
(A) NISAで買ったものに含み益がある場合;
① 年末までに売る ⇒ 売却益が非課税なのがメリット。
→ 今年にメリットを取れる。
② 課税口座に移管する ⇒ 2023年末時点の含み益分が非課税扱い。
その場合、以降は2023年末の価額を取得価額として
売却時の税金が計算される。
→ メリットを取るのを先に延ばせる。
どっちを選んでもNISAのメリットを使えており、
お好み次第で選べばいいと思います。
単純に、そろそろ売り時と思えば①、
今後も価値が上昇しそうと思えば②、
という感じでしょうか。
(B) NISAで買ったものに含み損がある場合;
① 年末までに売る ⇒ 売却損を損益通算できないのがデメリット。
→ デメリットを年内に消化する。
② 課税口座に移管する ⇒ 含み損のまま先送りで、
以降は2023年末の価額を取得価額として売却時の税金が
計算される。つまり2023年末時点の含み損分の税金を
余分に負担する事になる恐れがある。
→ デメリットを先送りする。
という事で、どちらもNISAのメリットは取れず、
特に②はデメリットが大きいと思います。
その商品の価値は今後、絶対に上がる… というような
確信があるのなら②もありかと思いますが
(その場合も①にしてから買い戻せばいいし)
基本的には①がいいと思います。
(C) 2020〜2023年の一般NISAはどうするか?
2024年からNISAの仕組みが変わり、現行NISAは
新NISAに移ります。
しかし、現行NISAと新NISAは並行して持つ事ができるので、
2020〜2023年の一般NISA分は5年目の年末まで
つまり2024〜2027年の年末までそのまま持っておく事ができます。
しかし、各々期限を迎える毎に上記のような決断を
する事になり、上記でわかるように
「期限の年末時点で含み益があればメリットは大きいが
含み損があればデメリットが大きい」
投資商品は価格が上下に振れるもので、いつ上がり
いつ下がるか読めないもので、期限の年末の価値を
ピンポイントで予測する事は難しいです。
従い、現行NISAの残りは、期限まで時間があっても、
利益が出ている内にしっかり利確して着実にメリットを取る、
という姿勢がいいんじゃないかと思います。
以上です。