上場企業の「HEROZ」が9月8日の引け後に2024/4期 Q1決算を
発表しました。
HEROZに関しては本年6月にこのブログで
前年度(2023/4期)決算についての記事を掲載しており、
そこで、以下の様に記載しました;
「9月に公表される2024/4期 第1四半期決算を見て、
2023/4期 第3/第4四半期から伸びているかどうかを
見なければ判断し難い」
さて、結局どうだったのか?
株価の推移と決算内容を見てみました。
(1) 株価
月足や、過去の推移については 6月の記事を参照下さい。
日足は以下の通り;
本年4月末以降は株式市場での AIブームに乗った感じで上昇、
これが 6月9日の決算発表を受けて更に急騰。
だが 2,500円近辺で頭打ちとなり、あとはジリジリと下がり
結局は決算発表前のレベルまで戻ってしまい、
今回の四半期決算を迎えました。
この時点でのPERは 881.5と、非常に高いです。
それでは、9月8日(金)発表の 2024/4期 Q1決算内容を見てみましょう。
(2) 2024/4期(当期) Q1決算
(a) 成長性; 低い。
四半期毎の売上推移は;
前年度Q2までの約2年間は、ほぼ横這い。
前年度Q3からはバリオセキュア社(V社)と
ストラテジット社(S社)との連結を開始し、
この2社の売上が加わったのでその分増加。
だが、以後もほぼ横這いに終わっており、
成長性は低いと言わざるを得ません。
(b) 損益 (単位 百万円); 利益は子会社頼み。
前期Q1は単体決算、当期は連結決算だったので、
短信には「前年同期比」の記載なし。
単体と連結とを無理に比較すると大幅な増収増益に
見えるが、実態はどうなのか?
当期Q1の数値は以下の通り;
売上; 1,118
営業利益; 73 (営業利益率 6.6%)
経常利益; 61
純利益; 5
最終損益; ▲47 (赤字)
純利益は黒字なのに、最終損益は赤字。
損益計算書の最後の 3行は以下の通り(単位 千円)
この「非支配株主に帰属する…」とは何か?
これは、他人の持分の事です。
HEROZのV社への出資比率は 42.8%、S社へは 89.7%で、
言い換えれば、V社の 57.2%、S社の 10.3%は他人の持分です。
連結損益決算書を作る時は、まずは子会社の売上から経費から
全てをそのまま100%全額を足し、親子間の取引があれば
その分を差し引き、純利益まで集計します。
その上で、そこから他人の持分を差し引いて最終損益を計算します。
損益計算書の下からの 3行を文章にすると、
「HEROZ単体とV社、S社の 3社が稼いだ利益は 5百万円でした、
その内の 52百万円は 他人の取り分で、差し引かねばなりません。
だから 当社の株主の取り分は 47百万円の赤字でした」
という事です。
S社は非上場なので決算内容は判りませんが、
V社は上場企業なので判ります。
V社の第1四半期の最終利益は 98百万円でした。
HEROZの取り分は 42百万円、他の株主の取り分が 56百万円。
HEROZの取り分の42百万円を加えた上で、HEROZの
連結純利益は 5百万円。
つまり、HEROZの連結利益はV社が独りで稼いでおり、
HEROZ単体とS社の合計は赤字、という事の様です。
そのV社の当期(2024/2期)Q1の決算は、
売上は 4%減、営業利益は 27%減、と、減収減益です。
即ち、HEROZの当期Q1連結利益はV社頼りで、
その頼りのV社は減収減益、という状況です。
(c) 収益性; 低め。
営業利益率は前年度も 8.7%と控えめだったが、
当期Q1は 6.6%と更に悪化。
当期の通期見通しでは 8.3%へ回復を見込んでおり、
まずはこれの達成が求められる。
(d) 安定性; 良好。
安定性は前回2023/4期末と大きくは変わらず、
在庫期間などは改善しており、良好。
・流動比率は489%で「余裕あり」と言われる
200%を大きく上回っている。
・売掛債権回収期間は前回の 2.6ヶ月から1.8ヶ月に短縮。
・在庫期間も前回の 1.9ヶ月から 1.6ヶ月に短縮。
結論;
① 売上は連結開始以降は横這いで、成長は停滞している様に見える。
② 利益はV社頼みで、しかも利益率は低め。
V社自身も減収減益。
という事で、今回の決算内容では、この880超のPERには
不釣り合いに思います(個人的意見です)。
ちょっと厳しそうですね。
以上です。
尚、この財務分析・評価は筆者個人の考え方に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、数字やグラフも含め、内容には筆者の書き間違いや
勘違いが含まれているかもしれません。
いずれにせよ、この記事は投資を推奨するものではありません。
数字はご自分で検証の上、投資は自己責任でお願い致します。