話題のVTuberの大手事務所「ホロライブ」を運営する企業
「カバー」が3月27日に上場されます。
仮条件は3月7日に提示され、翌8日に抽選参加申し込み開始予定です。
どんな会社か?
同様にVTuberの事務所「にじさんじ」を運営し既に上場済みの
「ANYCOLOR」(以下「エニカラ」)と比較してどうなのか?
まとめてみました。
(1) VTuberって何?
Virtual YouTuberの略称で、架空のキャラクターの姿でユーチューブに
動画を投稿したり、動画配信などを行っている人の事です。
見た目はアニメで中身は実在の人、ですね。
大きく分けて以下の2つに分類されます;
①個人勢; 個人で活動している人
②企業勢; 大手事務所やプロダクションに所属している人
この企業勢が所属している事務所が、上述の「にじさんじ」や
今回上場するカバーが運営している「ホロライブ」などです。
この業界に詳しくない方も「キズナアイ」という名前は
聞いた事があるのではないでしょうか?
キズナアイが「元祖VTuber」とも言える存在です。
余談ですが、キズナアイは現在活動を休止中です。
では、カバーってどういう会社なのか?
エニカラと比較しつつ見てみましょう。
(2) 基本情報;
エニカラ カバー
決算月 4月 3月
従業員数 269人 401人
資本金 139百万円 453百万円
総資産 133億円 118億円
上記、エニカラの数値は2022年10月末時点のもの。
カバーの従業員数は2023年1月末の数字で、
エニカラより大分多いです。
カバーの資本金と総資産とは2022年12月末のものですが、
これは上場後は大きく増加すると思われます。
収益面では、当期(エニカラの2023年4月期、
カバーの2023年3月期)の直近数値(エニカラのQ1〜2、
カバーのQ1〜3)は以下の通り;
エニカラ カバー
月平均売上 20億円 14億円
経常利益率 36% 13%
カバーの売上はエニカラの7割程度に留まり、
経常利益率はエニカラの1/3程度に留まっています。
一方、所属するVTuberの数は以下の通り;
(エニカラは2022年10月末、カバーは同年12月末の数値)
エニカラ カバー
VTuber数(国内) 112人 48人
(海外) 26人 23人
単純に人数で比較すると、カバーはエニカラのほぼ半数です。
上記を纏めると;
「カバーはエニカラより少ない人数のVTuberを抱えながら
かなり多い人数の間接人員を抱えている。
その結果、売上はエニカラに届かず経費はエニカラより多く、
利益率はエニカラよりかなり低い」
という風に見えます。
(3)どうやって稼いでいるか?
カバーもエニカラと同様に、以下の活動で売上をあげている様です;
①ユーチューブなどの動画配信からの収入(視聴者に課金等)
②VTuberの映像/画像やキャラクターグッズの販売
③企業との協業による協賛手数料など。
④その他(ライブイベント開催によるチケット収入など)
全社売上に対する各々の比率は以下の通りです;
(エニカラは2023年4月度Q1〜2の実績、
カバーは2023/3月度Q1〜3の実績)
エニカラの方が②動画/画像/グッズ販売の比率が高いようです。
尚、エニカラの①配信にはアドセンス(ユーチューブ配信時に
流れる広告に対する収入)が含まれていますが、
カバーの場合はアドセンスについての明記がなく、
ここに含まれているかどうか判りませんでした。
(4) 売上推移;
四半期毎の売上推移は以下の通り;
尚、「2020/3-4期」とあるのはエニカラの2020/4期と
カバーの2020/3期の事です。以後の年も同様です。
例えばQ1はエニカラは5〜7月、カバーは4〜6月と
時期が1ヶ月ずれてますが、全体の流れを見るには
このズレは無視してよいと思います。
両社共に右肩上がりで成長中。
2020/3-4期はエニカラの方が大分上回っていたが
カバーが徐々に追いつき、2022/3-4期後半には追い越したが
2023/3-4期に入って突き放された。
だがエニカラは2023/4期Q2に売上拡大が足踏み。
その間にカバーが売上を伸ばし追いかけている…
という感じですね。
(5) 財務状況;
流動比率は、エニカラは336%(2022/10時点)で
一般的に「余裕あり」と言われる200%を大きく
上回り、十分に余裕あり。
一方のカバーは132%(2022/12時点)であまり余裕なさそう。
だが、今回の上場により余裕ができるはず。
(6) 収益性;
当期直近の実績は;
エニカラ カバー
売上総利益率 44% 45%
営業利益率 36% 14%
売上総利益率はほぼ同じ。
なのに営業利益率が大きく異なるのは、経費が違う為と
思われる。やはり上述の通りカバーは間接人員が多い事が
負担になっている可能性がある。
結論;
両社を比較すると;
① 安全性; カバーの上場前は、エニカラの勝ち。
しかし、カバーの上場後に追いつくかも。
② 収益性; エニカラの勝ち
③ 成長性; 抜きつ抜かれつ、接戦か。
という感じですね。
上記までは3月4日に記載しました。
その後、カバーの公募価格が 710〜750円に仮決定されたので
以下を付記します。
売出し価格は多分上限の 750円で決まるでしょう。
この場合、2022/3期の利益実績から算出したPERは 35.9
今回の新規売り出しによる希薄後は 36.8になります。
エニカラの株価は、2023年3月7日の終値で4,405円
2022/4期実績から算出したPERは 47.2
2023/4期見通しから算出すると 24.9
カバーの売出し価格がエニカラの株価と比べて割高か割安か?
これは会社のファンダをどう見るか?
カバーの2023/3期見通しが増収増益になると見るか?
によって異なると思いますが、結構微妙ですね。
以上です。
尚、この記事は筆者個人の考え方や推論に基づいて行ったもので、
別の見方をされる方もおられるかもしれません。
また、これはあくまで本稿掲載の時点で得られた情報に基づくものであり、
それ以後は状況が変わっていく可能性もあります。
さらに、そもそも株価はその企業の財務内容以外の様々な要因に
大きく影響される為、財務諸表からその企業が高く評価できたとしても
それで株価が上がるとは限りません。
また、ここでの高い評価は、投資を推奨するものではありません。
投資は自己責任でお願い致します。
これらの点を十分ご留意お願いします。