今年の6月にこのブログに掲載した下記の記事で
「月々の収入が支出を上回っている人は、その余裕分を使ってIDECOか
積み立てNISAの投信を毎月買うのがお勧め」という趣旨の事を書きました。
じゃあ、IDECOと積み立てNISA、どっちがいいのか?
について、一般NISAとの比較も合わせて記載したいと思います。
(1) NISA vs IDECO
まず、この2つは仕組みが大きく異なります。
簡単に言うと;
NISAは;
「金融商品を買って持って売って、得た利益に税金がかからない仕組み」
IDECOは;
「収入の一部を、現役時代から老後(引退後)に先送りし、
その間に無税で運用して膨らませる仕組み」
両者の仕組みを更に詳しく述べると;
NISA;
① 毎年、枠内(一般NISAは120万円、積み立てNISAは40万円)の
金額の金融商品(株式や投信など)を自分で購入する仕組み。
② 買った金融商品の売却益や配当/分配金が期限内は非課税。
(期限;一般NISAは5年、積み立てNISAは20年)
→ 通常はかかる 20.315%(2022年現在)の税金が、ゼロ。
③ 買った金融商品はいつでも売却でき、売却代金はいつでもおろせる。
例えば、10万円で買った投信を20万円で売った場合、20,315円が
税金として取られ、儲けは 79,685円となります。
これが、NISAなら 100,000円が丸々自分の儲けになります。
但し、税金がかからないのは、一般NISAなら買った年から
5年以内、積み立てNISAなら20年以内に売った場合のみです。
IDECO;
① 毎月、掛金を決めて運用会社に支払っていく。
(事前に届け出すれば毎月でなく年1回〜数回に変えられる)
運用会社がその掛金を使って指定の金融商品を買う。
② 掛金は所得控除の対象となる。
(給与などにかかる所得税/住民税が減る)
③ 購入する金融商品はいつでも変更できるし、過去に
買い貯めた金融商品を売却して他の金融商品に買い替える、
などの運用ができる。
その時の売却益は非課税(20.315%の税金がかからない)
④ 売却代金は60歳になるまで引き出せない。
(50歳以降に加入した人は引き出せる年齢が更に遅れる)
(死亡時やある程度以上の障害を負った場合は年齢に関係なく受け取れる)
⑤ 引き出し方法は以下(併用可)
・一時金 → 「退職所得」になる。
・年金(年1回、2回、4回、6回から選択可) → 「公的年金等の雑所得」になる。
→ 売却益だけでなく、残額全体が所得になる。
→ 「退職所得」「公的年金等の雑所得」各々に所得控除があるので
所得控除の金額までは税金がかからない。
但し、控除金額を超えたら、超えた分には税金がかかる。
IDECOがなければ、収入には所得税/住民税がかかります。
それら税金を払った後の余裕資金を運用し、
運用で利益が出たらまた税金を払い、
税金を払い続けて残ったお金を老後に使う… となります。
IDECOに加入すると;
・毎月IDECO口座に取り分けたお金には所得税/住民税がかからない。
・そのお金をIDECOで運用したら、運用益が出ても税金がかからない。
・そうして膨らませたお金を老後に受け取る時に税金を払うが、
その時には収入が減っており(という前提)税率が低い、
しかも現役時代に給与などで受け取るよりも大きな控除の枠があり
税金がかからない可能性もある。
となります。
簡単に言えば;
NISA;
・メリットは、売却益や配当/分配金に税金がかからない事。
・いつでも売却/換金できる。
IDECO;
・メリットは、生涯を通じての節税効果。
現役時代の税金を減らし、無税で運用し、老後に受け取る事で
税金を現役時代より少ない金額に抑える。
・だが、60歳を過ぎるまでは換金できない。
どちらがいいのか?
個人の状況によって異なります。
①IDECOの方がいい人;
・資産形成の目的が「老後対策」であり、60歳まで使えなくてもいい人。
・毎月収入があり、老後はのんびりしたいと思っている人。
②NISAがいい人(IDECOでメリットが無い/少ない人);
・資産形成の目的が「老後対策」だけでなく、60歳より前の
出費(住宅購入、結婚、子育て/教育、旅行など)に備える為でもある人。
・毎月収入がある訳ではない人。
・老後もバリバリ働き、現役時代以上の収入を得るつもりの人。
③両方やったらいい人;
・高収入で余裕のある人。
積み立て/拠出できる上限は;
→ 積み立てNISA;年間40万円、月 33,333円までが上限。
→ IDECO;会社員/公務員/専業主婦は月 12,000〜23,000円が上限。
自営業者は月 68,000円が上限。
毎月収入があり、両方やる余裕がある人は、両方やればいいと思います。
(2) 一般NISA vs 積み立てNISA
この両者の主な違いは以下の通りです;
・枠; 一般NISAは年間120万円(注1)、積み立てNISAは年間40万円。
・期間; 一般NISAは 5年間、積み立てNISAは 20年間。
・投資開始時期; 一般NISAは 2028年まで、
積み立てNISAは 2042年まで。
・一般NISAと積み立てNISAは選択制で、毎年別のを選択可能。
例えば2022年に買った場合、一般NISAが非課税扱いとなるのは2026年末まで。
積み立てNISAは2041年末まで。何月に買っても同じ。
積み立てNISAの場合、2042年に購入した分は2061年まで非課税で
保有できます(これ、2042年で保有も終わりと勘違いしている人が
結構多いので要注意)。
注1) 一般NISAは2024年から枠が変更され、
積み立て分 20万円とNISAと一般分 102万円までの 2階建てになる。
どちらがいいか?
これを述べる前に、NISAのデメリットを説明します。
(3) NISAのデメリット;
NISAのメリットは「利益に税金がかからない事」
NISAのデメリットは、その裏返しです。
つまり;
「売却する時に損をしても、その損失を節税に使えない」
金融商品なので価値が上下します。期限切れなどで売る時に
価値が買った金額より下がっていて、売ったら損をしてしまう
事もあり得ます。
その場合、通常の投資であれば、その損失を節税に使えますが、
NISAの場合は使えません。
例えば、NISA以外の口座で持っていた株を売却して10万円の利益が
出ていたとします。この利益に対し20,315円の税金がかかります。
この時、NISA以外の口座で持っていた別の株を売却して
10万円の損失が出たとします。
この場合、10万円の損失で最初の10万円の利益を消す事ができ、
税金をゼロにする事ができます。
→ 2つの取引の売買損益は、利益10万円 – 損失10万円 – 税金0円
= プラマイゼロです。
これが、2つ目の損失が出た株がNISAで購入した株だったら、
損失を利益にかかる税金を減らす為に使えません。
→ 2つの取引の売買損益は、利益10万円 – 損失10万円 – 税金 20,315円
= 20,315円の赤字です。
つまり、NISAは、
「儲かった時の利益は大きいが、損した時の損失も大きい」
という仕組みなのです。
このデメリットを理解した上でのNISAの鉄則、それは;
「含み益がある内に売ってしまう」つまり「勝ち逃げ」です。
NISAは通常の投資以上に「勝ち逃げ」すべき投資、という事です。
(4) 一般NISAと積み立てNISA、どちらがいいのか?
積み立てNISAで最初に思い浮かぶメリットは、
「積み立て」という投資時期を分散する仕組みにより
「ドルコスト平均法」という有利な投資方法を活用できる事です。
ドルコスト平均法を簡単に説明すると;
「同じ金額を毎月投資すると、金額の安い時に買う口数は多く、
金額の高い時に買う口数は少なくなるので、結果的に
購入単価の平均値が低くなる」というものです。
実は、一般NISAでもドルコスト平均法を活用する事ができます。
一般NISAの枠は120万円なので、10万円ずつを毎月投資するように
すればいいのです。
つまり、ドルコスト平均法は両者使えます。
それ以外のメリットは;
・一般NISAのメリットは「金額が大きい事」
・積み立てNISAのメリットは「期間が長い事」
→ 期間が長い方がドルコスト平均法のメリットは出やすいし、
勝ち逃げのチャンスが来る確率も高そう。
双方メリットがあるので、2028年までは自分に合った方を
使えば良いと思います。
2029年以降は積み立てNISA一択になります。
尚、現在「NISAの恒久化」が議論されているようですが、
これが実現すれば上記の内容は変わるでしょう。
が、改善はしても改悪する事はないと思います。
以上です。
IDECO、一般NISA、積み立てNISA、どれを始めるか?
考える上での参考になれば幸いです。