半導体不足などの理由で新車メーカー各社が減産見通しを公表しています。
ツイッターなどでは「新車販売が減ったら中古車が増えるぞ」というような
コメントが散見されますが、本当でしょうか?
まず、中古車は新車と大きく異なる点が3つあります;
① 「一物一価」
新車は同じメーカーの同じ車種ならば基本的に「同じ物」として同じ定価が
付けられる。ユーザーは見本(ショールームの展示車)を見て購入を決めてくれる。
だが中古車は、1台1台が異なる商品で異なる価格が付く。従い、ユーザーは
自分が買う車そのものを実際に見ないと購入を決めてくれない。
⇒ 在庫を持たねば売れない。
⇒ 多数の中古車を売るには在庫を展示する広い敷地が必要。
② 「減価」
中古車の価格を決める要因の一つが「最初にナンバープレートが付いた月からの期間」
⇒ 売る時期が遅れれば毎月毎月商品価値が下がり、販売時の利益が減る。
③ 「仕入」
新車の場合、メーカーに注文すれば欲しい車を仕入れる事ができる。
だが中古車は、ユーザーが持ち込んだ車を下取るか買い取るかして仕入れるのが主流。
⇒ 仕入れた車が欲しい車とは限らない。
⇒ 欲しい車はオークションで同業者と取り合い、或いは他社の在庫情報を取得し
交渉して買い取らねばならない。
つまり、中古車を売るには在庫を持たねばならないが、利益を極大化するには
在庫期間を極力短くせねばならない、つまり仕入れた車はすぐに売る。
⇒ 仕入台数が少なければ、販売台数も少なくなる。
中古車の仕入台数、言い換えれば中古車市場に流入してくる車とは、
ユーザーが下取りや買取に出す車。
では、ユーザーが乗っている車を下取り/買取に出すのはどんな時か?
新車を買う時です。
つまり、新車販売が少なければ中古車市場に流入する車も少なくなり、
中古車の販売台数も減少する... そういう構図のはず。
...と思い、自販連/軽販連の統計資料を拾い、実際の数値をグラフ化してみました。
やはり新車と中古車の販売台数の増減は上のグラフの通りほぼ一致するようです。
ここで、中古車業界について説明したいと思います。
中古車の取引ルートを簡単に図示すると、以下の通りです。
「中古車業界」を構成する企業群を、以下の2つに分けてみました;
(1) 中古車を自ら仕入れ、販売する企業。
⇒ これも、国内で販売する企業と輸出する企業に分かれます。
(2) 上記(1)が円滑にビジネスするのに役立つサービスを提供する企業。
⇒ オークション、物流、ファイナンス、情報サイト/情報誌など様々。
(1) 中古車を自ら仕入れ、販売する企業;
(a) 中古車を国内で販売する企業
・新車ディーラー
・中古車ディーラー
・買取店
(b) 中古車を輸出する企業
新車ディーラーとは、その名の通り、主に新車を売る販売店。
中古車ディーラーとは、その名の通り、中古車を中心に販売する販売店。
買取店とは、主に車をユーザーから買い取る事を目的とした店です。
これらがユーザーに車を売る時にユーザーの車を下取る、或いは車は売らずに
単にユーザーから買い取る、などして、中古車を仕入れます。
各々、自店で売り易い車は自分でユーザーに販売(小売)、売り難いクルマは
他社にさばき、相互に卸売/仕入を行います。その際にオークションを活用します。
(店毎に、車の年式/価格帯、ブランド、タイプなどによって売り易い車、売り難い車が
異なるので、相互に卸売/仕入するニーズが発生する訳です)
「買取店」という業態が誕生した頃は、買い取った車は自社では小売せずに
すぐにオークションに流していましたが、最近は自社で小売する場合も多いようです。
また、日本では古い年式の安い車はあまり売れません。
そういう車は①輸出(右ハンドルなので売り先は限られる)、または
②廃車(バラして中古部品や鉄屑として売る)されます。
(2) 上記(1)にサービスを提供する企業;
上述の、販売店が中古車を相互に卸売/仕入る為に活用する「オークション」
販売店相互やオークション会場との輸送、或いは輸出に際して起用される「物流」
ユーザーに対して各店の在庫情報を知ってもらう為の「情報サイト/情報誌」
ユーザーに中古車を買う為のローンを提供する「ファイナンス」
その他、経営コンサル、販売管理システム提供、査定/残価計算支援等、種々あります。
各々の銘柄リストを下記します;
株価、時価総額、などの数値は9月24日の終値ベース。
売上と営業利益率は直近の通期決算の数字、売上成長率は直近通期決算までの
4年間の年平均値です。
(1) 中古車を自ら仕入れ、販売する企業;
ここでは各社が元々どんな企業だったかで新車ディーラー、中古車ディーラー、
買取店、とに色分けしてますが、現在ではこの3つの業態を全部揃えている企業が
多い模様です。営業利益率はどこも1桁%で低めですね。
売上成長率は中古車ディーラー系と買取店系の一部が高いようです。
また、異業種からこの業界に参入してきたのが以下の企業です。
特装車/部品メーカーからの参入組の営業利益率が高めだが、売上は減少しています。
(2) 上記(1)にサービスを提供する企業;
オークションの営業利益率が際立って高い。
売上成長率と営業利益率とが揃って高いのがファイナンス。
その他、コンサルや卸売も行うリミックス、販売店管理システム提供のファブリカ、
査定/残価計算支援サービスのシステムロケーション(シスロケ)などがあります。
ファブリカ(本業はSMS配信)の売上成長率、シスロケの営業利益率が非常に高い。
リミックスは電力ビジネスで大損し営業赤字ですが、中古車関連も営業利益率は0.5%で
あんまり儲かってない模様です。
以上、中古車関連について纏めました。
もし投資をお考えの際には、スクリーニングの際に上記情報も参考にして頂ければと思います。
但し、記載ミスや勘違いなどがあるかもしれませんが、その点はご容赦下さい。
実際に投資される場合はご自分で情報の検証をお願いします。
また、これは投資を推奨するものではありません。
投資は自己責任でお願いします。
皆様に爆益あれ!