はじめに

春のような暖かさの日もあれば、雪が降りそうになるくらいの寒さもあって、体が悲鳴をあげています。。。

そしてそんなこんなで今年度も終わりが近づいてきていますね。

今年度も濃かったな〜。。。

 

さて、前回までの投稿にもあるように、これまで書いてきたブログの記事を本のようにまとめています(まるで自費出版でもするかのように笑)。

 

自分で言うのもおこがましいですが(本当に!笑)、英語学習・教育とidentity・translingualについて書いた本の中では、結構充実した内容になっていると思います(まず日本語になっているものが少ない)。

 

これまでの流れを踏まえて読んでくださる方は以下のリンクからお読みいただき(THE 書き途中という感じで恐れ入りますが・・・)、今回書き足した部分のみを読まれたい方はその下から読んでください。

 

 

 

 

  translanguagingを英語学習・教育へ

方法① 海外ドラマ・映画から

    第3章でNetlixの人気ドラマ・Emiliy in Paris を紹介したように、海外ドラマや映画は導入しやすい方法だと思います。学習者の動機付けにもなりますし、学習者がそのドラマや映画を気に入った場合は自分で学習を進めやすいです。一点注意すべきことがあるとすれば、内容の偏りや表現の不適切な部分がないかということを指導者は精査した方が良いということです。また、どのような題材を選ぼうと、必ずその内容や言語表現を気に入らない学習者がいることを想定し、「あくまでドラマや映画ではこういう話がある」問うことを明確に伝えてあげるべきです。学習者のidentityが傷付けられないよう、最大限の注意をはらいましょう。

 

方法② 小笠原諸島から

    こちらも第3章で紹介しましたが、身近な例を持ってきてあげると、学習者はtranslanguagingにより親しみを持ってくれるでしょう。Singlishなどもよいですが、できれば日本語との関連でtranslanguagingについて導入できると良いと思います。小笠原諸島のme-raやmatamiruyoのようなわかりやすい例を見つけるのは難しいかもしれませんが、生徒自身に身の回りにあるtranslanguagingについて気づかせる活動も効果的です。


 

方法③ オノマトペ比較(身に着ける)

    オノマトペについても第3章で書きましたが、英語学習・教育に取り入れる価値が大変高いと思います。オノマトペは母語の「感覚」に根ざした言語ですので、ことばの感覚を「身に着ける」のに適しています。第二言語では理解しづらいことや、反対に案外理解できること。母語だからこそ理解できること、すわらち第二言語にも応用したいことばに気づくことができるでしょう。また、インタラクションを促進する効果が期待できるため、多くの指導者が導入することに抵抗がない方法だと思います。

 

方法④ 英語俳句

    最近では英語俳句も英語学習・教育界隈で注目を集めていますが、transalnguagingの観点から見てもとても意義深い言語活動であるといえるでしょう。Iida (2010) にある文をいくつか引用して、その意義について解説していきます。

 

studying and composing literature and poetry helps English learners develop their own voice and sense of audience, and to express important social ideas in the process (p. 28)

文学や詩を研究したり創作することは、英語学習者が彼らのvoiceや読み手への感性を高め、またその過程で重要な社会的考えを表現することを促進する

 

ちなみにこのvoiceとは、「個人的なニーズ、関心、考えを表明すること」とされています。

 

また、俳句を用いた授業では、学習者が内に秘めているものを表現させ、voiceと読み手への感性を高めるだけでなく、頻繁に使う単語や表現を身につけることにもつながります。なぜなら、短い俳句の文のなかでは語彙や表現のチョイスがとても大切だからです。

 

Haiku is a tool to construct and develop voice and ultimately define “who I am” (p. 30)

俳句は、voiceを構築したり発達させ、また究極的には「私が何者であるか」を定義する道具である。

これまで述べてきたidentityの考え方と一致しています。俳句は自分自身を発見するためのツールにもなるのです。

 

How L2 writers take social positioning in composing haiku is crucial because it greatly influences the way they construct voices and express themselves (p. 30) 

第二言語の書き手が俳句を創作する際に、どのように社会的な立場を取るのかは重要である。なぜなら、それはvoiceを構築したり、彼ら自身を表現したりする方法に多大な影響を与えるからだ。

 

簡単にまとめるなら、俳句は自分自身を発見する「内向き」な側面に加えて、俳句を作り発信する以上「外向き(社会的)」な営みでもあるということです。identityも社会的に構築されるものですので、やはり俳句を創作することはidentity workといえそうです。

上記を踏まえ、僕は英語俳句がtranslanguagingを促進できると考えています。その理由は、主に以下の3点です。

  1. 俳句が日本のものなので、必然的に日本語のレンズを通して世界を見ることになり、それを英語で表現することで、「内なる」translanguagingが起こるから

  2. 俳句には日本語のオノマトペなどを盛り込みやすく、translanguagingが発生するから

  3. 日本語を英語を織り交ぜたtranslanguagingを創造できる可能性があるから

では、具体的に取り入れる方法も見てみましょう。ここでもIida (2010) を参考にします。

 

Step 1: 英語で俳句を読む

 1-1: 俳句について知る

   ・それぞれの行の音節を数える

   ・季語を見つける

   ・切れ字があるかを考える

 1-2: 俳句の解釈をする

   ・テーマは何か

   ・文脈は何か

   ・詩の中で何が起きているか

   ・書き手は何を伝えようとしているか

   ・あなたのその俳句の印象はどうか

Step 2: 俳句を創作する

 2-1: 俳句のコンセプトを確認する

 2-2: 俳句の種を探す(外に出向くのもあり)

   ・五感に訴えかけてくるものを意識する

 2-3: 俳句を創作する

   ・ペアやグループで助け合う

   ・音節に合うように語彙を工夫する

 2-4: 互いの俳句を読む

   ・二回読み上げる

   ・聞き手は印象などをメモする

   ・書き手は句の説明をする(フィードバックをもらう)

 2-5: 別の句を作る

   ・忘れられない人生の思い出5選を書く

   ・どこにいて、どのように五感に訴えかけてきたかを書く

 2-6: 俳句を出版する

 

必ずしも全ての行程を取る必要はないと思いますが、非常に再現性のある方法だと思います。

帯活動のように取り入れてもいいですね。

 

方法⑤ ユーモアを取り入れる

    僕がアメリカの英語学校にいたとき、スピーキングの授業で「英語でジョークをいう」というパフォーマンス課題がありました。まだ英語も話せないし、ましてやジョークをいうなんて日本語でもしたくないタイプなのに、やらされてとても気分としては最悪だったのですが、今思えばあの課題の意図もわかります。

    その理由とは、英語ではユーモアがコミュニケーションにおいて重要な要素となっているからです。​​相手の言いたいことを理解するためにも英語のユーモアは必要ですが、自分でも使えたらより会話は弾むように思います。そうなると、インプットが増え、アウトプットの機会も増え…という好循環が生まれてきます。

    また、そういった第二言語習得的な観点からだけでなく、ことばを(異文化)コミュニケーションのために必要なものだと捉えるならば、このような「ジョークを言う」というパフォーマンス課題も意義深いと思えるはずです。このようなパフォーマンスに、仮に自分の(国の)文化・言語を取り入れたなら、さらに面白みのあるtranslanguagingになるでしょう。僕が知る限りでは、日本の英語学習・教育にユーモアが積極的に活用されていることを聞かないので、ぜひ広めていきたいと思います。