「カナダに行くのに、なんでこんなに落ち着いてるんだろう。」

出発日の朝、私は自分でも驚くほど冷静でした。

これから1年間、家族と離れてカナダで暮らす。

もっと不安で、もっと泣いて、出発直前には「やっぱり行きたくない!」となるのかなと思っていたけれど、意外とそんなこともなく。

成田空港までは両親が一緒に来てくれることもあって、忘れ物がないか、着いてから何をするのかを確認しながら、いつも通り過ごしていました。

両親がついてくれていたこともあり、空港までは特に大きな問題もなく到着。

……ところが。

空港に着いて、さっそく「海外に行くんだ」と思い知らされることになります。

WESTJETの荷物受付カウンターに、日本人スタッフがいなかったのです。

「……英語、使わなきゃじゃん。」

まさか空港に着いて早々、こんな展開になるとは思っておらず、心臓バクバク。

でも、優しいお姉さんに対応していただき、なんとか無事にチェックイン完了。

とりあえず一安心です。

最後の日本食は、うどん

搭乗前に「最後に日本食を食べておこう」ということで、空港のフードコートでうどんを食べることになりました。

かけうどんとおにぎりを注文して、

「日本食を堪能しとこ。」

そんな気持ちで箸を持ったのですが……

全く喉を通らない。

一番食べやすいと思っていたうどんが、全然食べられない。

そこで初めて、

「あ、自分めっちゃ緊張してるんだ。」

と実感しました(笑)

結局、うどんはほとんど父に食べてもらいました。

両親はそんな私の姿を見て、めっちゃ笑ってました。

ちなみに、これは帰国してから聞いた話なのですが、

両親も私を送り出すことに緊張していたそうです。

でも、自分たちまで緊張していることがバレたら、私がさらに緊張してしまうかもしれない。

そう思って、あえて笑っていたんだとか。

今になって聞くと、「あのときそんなこと考えてたんだ(笑)」と思うけど、そうやって送り出してくれていたことを知ると、なんだかありがたいなと思います。

 

 

 

 

 


そして、いよいよ搭乗ゲートへ。

両親と別れると思うと、急に寂しくなった。

ゲートをくぐると、両親とはここでお別れです。

さっきまで普通に話していたのに、1人になった途端、

急に寂しさがあふれてきました。

「1年間、今から会えないんだ……。」

そう思ったら、涙が出てきました。

でも、泣きながら歩くのは恥ずかしい。

とっさにトイレに入りました。

そして、

「え、ここ日本だよね?」

もう海外に来たのかと疑ってしまうほど、トイレットペーパーが床に散乱していて、普通に汚い。

おかげで涙も引っ込みました(笑)

まさか出発日に、こんなことで現実に引き戻されるとは思いませんでした。

空港には、いろんな人がいた

搭乗口の近くで座って待っていると、いろんな人がいました。

大号泣しながら電話している人。

なにやらトラブルが起きているのか、電話で怒りながら話している人。

出発前からいろいろ大変そうな人たち。

それをぼーっと眺めているうちに、

「みんな何かしらあるんだな。」

と思いました。

そして、

「でも、この人たちも同じ飛行機に乗って、同じところに行くんだ。」

そう思うと、なぜだか少し安心しました。

自分だけが不安なわけじゃない。

みんなそれぞれ何かを抱えながら、今日ここから出発するんだ。

そう考えているうちに、少しずつ気持ちが落ち着いてきました。

「とりあえず楽しもう」

そして、いよいよ搭乗。

搭乗口には、さっきとはまた別のお姉さんが立っていました。

その方に、

「楽しんでください~」

と、日本語で言われました。

たった一言だったのですが、その言葉を聞いた瞬間、すごく心が軽くなりました。

「そうだ。」

「とりあえず、楽しもう。」

不安なことを考え始めたら、きっといくらでも考えられる。

カルガリーでちゃんと入国審査を通れるかな。

乗り継ぎに失敗したらどうしよう。

英語で何か聞かれたらどうしよう。

でも、今はもう行くしかない。

だったら、とりあえず楽しもう。

そんな気持ちで飛行機に乗り込みました。

機内食で、初めて「海外」を感じた。スクランブルエッグやよくわかんないパンやサラダ。

バンクーバーまでは、カルガリーを経由して向かいます。

そのため、カルガリーで入国審査を受けなければなりません。

当時、ネットでカルガリー空港での乗り継ぎについて調べても、なかなか詳しい体験談が見つからなくて、

「入国審査、無事に通れるかな……。」

「乗り遅れたらどうしよう。」

と、機内でも少し不安に思っていました。

そんな中、機内ではさっそく海外のお菓子らしいチョコが配られました。

機内食のメニューも日本の飛行機とは少し違って、

「わ、本当に海外行くんだ。」

と、だんだんテンションが上がってきました。

不安はありつつも、お腹はちゃんと空いていたので、機内食はきれいに完食(笑)

さっきまでうどんが喉を通らなかったのに、機内食はしっかり食べている。

人間って不思議です。


あの日の私は、まだ何も知らなかった

今振り返ってみると、あの日の私は、

「カルガリーでちゃんと入国審査を通れるかな」

「乗り継ぎに失敗したらどうしよう」

と不安になりながら、それでも最後には「とりあえず楽しもう」と飛行機に乗りました。

そして、その後のカナダ生活は、まさにそんなことの連続でした。

不安になったり。

うまくいかなかったり。

「これ、どうするの?」と困ったり。

それでも、そのたびになんとかして、気づけば2年間のカナダ生活を終えていました。

出発前の私は、これから始まる1年間がどんなものになるのか、もちろん知りませんでした。

まさか2年間もカナダで生活することになるなんて、この日の私は想像もしていなかったと思います。

ただ、あの日、最後に言われた

「楽しんでください~」

という言葉と、

「そうだ、とりあえず楽しもう。」

と思えた気持ちは、今思えばすごく大切だったのかもしれません。

 



今回は、そんな私のカナダ生活の「始まりの日」の話でした。

次回は、カナダに到着してからの感想やうまくいかなかったことなども、自分の経験を振り返りながら少しずつ書いていこうと思います。