上の写真は群馬県ジュラ紀前期の岩室層から産出したMytilus(ミチルス)と思われる化石です。
ミチルスは海生二枚貝でムール貝の仲間です。
岩室層から産出報告がない貝化石で標本もこれ1つしかありません。
岩室層は岩石や化石の共通種が多いことから長野県の来馬層群と対比されています。
来馬層群は下位から漏斗谷層(じょうごだに)、北又谷層、似虎谷層(ねごや)、寺谷層、榀谷層、大滝谷層、水上谷層の7層からなります。
この中で貝化石を産出する北又谷層、似虎谷層、榀谷層などからはどこからでもアスタルテ(Astarte)と呼ばれる海生二枚貝が多く産出します。
しかし来馬層群との共通種が多く産出する岩室層からは1個体も産出報告がありません。
因みに確認されてる共通種はエオミオドン(Eomiodon)、クレノトラペジウム(Crenotrapezium)、カルディニオイデス(Cardinioides)、バケベリア(Bakevellia)、イソグノモン(Isognomon)、ペクテン科のクラミス?(Chlamys)、そして自身が採取したミチルス(Mytilus)です。
以上のように共通種が多いですが、
来馬層群のいたる所から産出するアスタルテが出ないんです。
これはやはりいくら似たり寄ったりする地層でも同じ地層ではないのでその地層特有の固有種だったり堆積環境の僅かな違いでそうなっているのだと思います。
また来馬層群は、植物化石を多産するのにも関わらず、決して汽水域ではなく、ミチルスやアスタルテなどの海生二枚貝を多く産出する事から汽水よりも海水の影響を強く受けた頻海成だという事が分かっています。
それに比べると対比される岩室層もイソグノモン(Isognomon)の産出から頻海成とされていますが、来馬層群よりはやや内陸ぎみだったのかもしれません。
因みにジュラ紀のアスタルテは採取出来ていないので白亜紀のアスタルテを載せるとこんな感じの貝になります。
写真下の貝がアスタルテになります。
これは群馬県の白亜紀前期の地層から採取したものです。輪助が厚いというか出っ張ってるような特徴的な貝です。
アスタルテはエゾシラオガイ科に部類される貝です。エゾシラオガイ科はジュラ紀に出現し、現在も生息してます。この科は北方の寒い海に生息し、種類が少ないそうです。
岩室層からは絶対出ない!という訳でもなさそうですがさすがに貝化石を採集してから結構経つのであってもかなり数は少ないんだろうなと思っています。

色々考察すると楽しいですね。
今回は以上になります。
ではまた、