前半の続きです。


後半は岩室層の軟体動物化石群集の種類や産状からどのような場所で堆積したを考察していきたいと思います。


全国的に夏休みに入り森や川などに外出する人も多くなる時期です。

もし岩室層に行く人が居れば道がない産地なので気をつけて行ってください。


※そのままコピーするのはちょっとアレなので自分で書きました。研究資料の引用です。

図1.

図2.
岩室層は現在,、海から遠く離れた内陸の群馬県沼田市白沢村という場所に小規模に分布していますが、堆積当時の2億年前(ジュラ紀下部・リアス期)の此処は近くに大きなテチス海が広がる浅瀬の水域でした。
また、平成以降に書かれたとある地質誌に「岩室層は淡水性の貝類を産出することから少なからず水辺があり淡水域だった事が分かる」といった記述がありましたがこれは明らかに間違いです。
自分のブログでも挙げていますが、マクガイのイソグノモン・マグニシマの産出や海生二枚貝のペクテン属の産出、またウニの化石も産出している事から淡水域よりも更に海域に近い【汽水域】~【頻海域】である事が明らかになっています。
頻海成の場所だと汽水生と海生の二枚貝が共存して産出します。ただ海成層ではないのでアンモナイト等の示準化石は産出していません。

フリー画像

汽水域はこんな感じで2億年前の当時、陸上では100種類以上の植物が生い茂り、水中では数種類の貝、特にシジミ貝のエオミオドンやカキ類のバケベリアがひしめき合って暮らしていたと推測されています。
また汽水域に生息した淡水のサメ【ヒュボドゥス目アクロドゥス科アステラカントゥス属】のサメの歯も発見されています。

以下岩室層から汽水域から採取した化石の一部です。
1.植物化石
ベネチテス類オトザミテス
2.

シダ類クラドフレビス
3.
イチョウ目スフェノバイエラ
4.
イチョウ目ギンゴイテス
5.


ヤブレガサウラボシ科ハウスマニア
6.

トクサ目エクイセチテス

7.3つ



ソテツ目ニルソニア

1.貝化石
アイスランドガイ超科ネオミオドン科
エオミオドン・ブルガリス
2.

エオミオドン・イワムロエンシス
岩室層の固有種です。
3.


カキ目バケベリア(Bakevellia)
4.
クレノトラペジウム・クルメンセ
汽水生二枚貝です。
5.
イシガイ目パキカルディア科
カルディニオイデス・バリダス
6.

腹足類の未定種(メラノイデス?)
報告には無いがチラほら産出する巻貝です。
このような巻貝は海生二枚貝と共産する事もあります。

また岩室層の頻海域はラグーン(礁湖)と呼ばれる砂州やサンゴ礁により外海から隔てられた水深の浅い海だったと見られています。

現在の礁湖(ラグーン)の一例ですが恐らくこんな感じだったと思われます。

こういう特殊な浅瀬の海からはイソグノモンやペクテンが産出し、自分は未採取ですがウニの化石も産出します。
1.
マクガイ科イソグノモン
岩礁や珊瑚礁に生息している貝です。
2.
タイプの違うイソグノモン(Isognomon)
3.


イタヤガイ科ペクテン属クラミス?
 採取した中で一番大きなもので7㎝ほどあります。

またウニの化石についてですが、2011年の論文に「ジュラ紀のウニ類は高知県の鳥の巣石灰岩からのみ知られる。」と書かれていました。
岩室層のものは標本のみで詳しいことは明らかになっていませんが、恐らくこの10年間の間に発見されたので現在日本国内では2箇所になっています。

結論。
岩室層は浅い海や河口近くの陸地で堆積し、陸地では多量種の植物が生い茂り、 水辺には汽水性の貝類がひしめき合って暮らし、そこには汽水を好むサメや淡水魚が泳ぎ回り、ラグーンのような浅瀬の頻海には海生二枚貝やウニ類も密かに生活していたと推測できます。

※あと冒頭でも少し書きましたが、
岩室層はやや山奥にあり、浸食が進んだ川岸にあります。何故か動物との遭遇は少ないですがマムシ等の蛇には高確率で会います(^-^;
お気を付けて!

今回は以上になります。
ではまた