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第3回、前回来馬層群との対比について少し触れましたが、まだあるので補足していきます。

来馬層群の榀谷層(しなだに)と類似点が多い岩室層ですが、その1つに瀕海成~海成の軟体動物群(貝類)を産出する層付近には木賊類エクイセチテス?(Equisetites?)の化石林と見られるものがあると報告されています。

実は岩室層も同じようなものがあり、そこはかつての研究者の方が発見した軟体動物化石を産出する層準2つの内、残されてる1つの場所にあります。

直接確認済みですが、内湾成を示す黒色頁岩に貝化石を産し、その上に重なる層にエクイセチテスの断片を多産する部分があり、更にその上部の層に木賊類(トクサ)と思われる化石が垂直に立っています。

この岩室層と榀谷層にある木賊類の化石林?の存在は海辺や湖辺の沼沢地を暗示していると言えますが、エクイセチテスには二次木部を持たない事から化石林ではなく、原地性のトクサ類の産状がそう見えただけという指摘もあります。
※因みにもう一つの層準は最も貝化石多産した場所でしたが20年以上前に人為的改変により既に消滅しています。
 
時代で見ると上位の大滝谷層がトアルシアン上部とされる事から榀谷層はトアルシアンの中部、または下部であろうと推測されています。
榀谷層は下部の砂岩は無層理でペクテン属を産出する海成ですが、その上に乗る植物化石層は海退を示す非海生になり、その上部の砂岩・頁岩互層の時期になると瀕海成になるそうです。
榀谷層は下部と上部で分けられていますが植物化石層を中部とすれば、下部は海成→中部は非海生→上部は瀕海成になります。
面白いサイクルですよね。
岩室層は下部は汽水域(非海生)→中部は瀕海成→上部も湾内(瀕海成)と見られているので堆積構成が違います。
また北又谷層に厚層理の黒色泥岩の岩相がありますが、岩室層にも植物化石を多産した層準辺りにもかなり類似するものがあります。というよりほぼそのものが来てるような気が…

あと北又谷層一部の黒色泥岩中にカキ目(Bakevellia)の化石密集層があり、最大層厚1mに達する場合があるそうです。
これに関してもブログでも上げてるように岩室層の中部層にもBakevelliaの密集層があります。
最大層厚までは分かりませんが厚いもので40㎝程を確認しています↓
 
 
産状は↑のように保存が良かったりする場合もありますが殆どは下記↓のように圧縮で変形したり、ぺしゃんこだったりと殆どは保存不良です。
 
 
うーん、分かりづらい。
北又谷層は植物化石も普通に産出するので榀谷層同様、岩室層と関係が深そうです。
 
あと、前にも話した来馬層群最上位の水上谷層ですが最近の研究だと来馬層群ではなく、岩相や地質構造が類似している事から手取層群に含まれてるようです。えぇ…と、いうのもこの層群の水上谷層のみから産出するオニキオプシス・エロンガータ(Onychiopsis elongata)という植物化石、自身が採集した岩室層の植物化石の中に酷似した物が出てるんですよねぇ…、勘違いかな?
1.
2.

 
 
ただオニキオプシスは中生代のジュラ紀中期~白亜紀前期に栄えた植物でして、岩室層は三畳紀後期~ジュラ紀前期に栄えたレートリアス型の植物化石群なので矛盾が生じます。
それに加え、もしそうなら岩室層にジュラ紀中期~白亜紀前期の手取層群の一部が存在する事になり、今まで考えられていた時代の常識も大きく覆ります。一応、岩室層から直線距離で約25㎞右上に手取層群相当の戸倉沢層があり、中部を除き、下部から海生のベレムナイト、上部から汽水生のテトリシジミが産出しています。
この地層からも植物化石が発見されていて先程話したオニキオプシス・エロンガータも産出しており、共産する植物の種類から手取層群の石徹白層群(白亜紀前期)の植物群と共通しています。
 
形が似ているスフェノプテリスやコニオプテリス、エラチデスとった種の見間違いかもしれませんが、、、う~んでもオニキオプシスだと思うんだよなぁ…もしオニキオプシスなら水上谷層および手取層群の一部が岩室層に飛弾している可能性が高いです。
因みにエラチデスはあまり紹介した事がありませんが、現生でいうシダ植物門トクサ目のスギナのような植物です↓
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簡易的にまとめると、
来馬層群の漏斗谷層、北又谷層、似虎谷層、寺谷層、榀谷層、大滝谷層、+手取層群水上谷層のうち、岩室層は【榀谷層】の特徴を大きく持ち、貝化石【カルディニオイデス】属の産出から一部に北又谷層も含んでいる地層であることが分かりました。
またオニキオプシスの産出が確かなら、従来の三畳紀後期~ジュラ紀前期(レートリアス型)の植物群の他に、白亜紀前期の手取層群の一部(水上谷層)の植物群を含んでいる可能性が高いことも分かりました。

最後に最近採集した化石を少し紹介して終わろうと思います。
1.
エオミオドン
この産地を代表するシジミ貝化石です。
密集して産出することも多いですが、殆どが保存不良です。
この標本は保存が良い方になります。

2.
カルディニオイデスの幼貝?
岩室層から産出する貝は幼貝が多いことからエネルギーが低い環境であったことが推測されています。

3.


カルディニオイデス
合弁で閉じています。
イシガイやドブカイの先祖と考えられている貝です。ちょうど半分くらいの断片化石ですが、此処まで大きいのは珍しいです。

4.
植物化石の不明種
小羽片との間に均等に隙間があることからトジテスの一種かもしれません。

.化石産地周辺の沼

長くなりましたね、今回は以上です。
では