怪談の舞台を千代田区に移す。

 

番町。

三河以来家康につきしたがってきた大名・旗本が住んだ町で、

江戸時代から日本の住居の第一等地でありつづけている。

以前は屋敷町だったが、いまは高級マンションが建ち並ぶ。

 

とともに。ここは怪談が多い。

まず。「番町皿屋敷」。

お菊の亡霊が井戸から出てきて「一枚、二枚…」と皿を数える。

実は、日本中に同様の怪談が残っている。姫路、尼崎、松江、高知…。

江戸時代、歌舞伎で大流行した演目だったことがその要因かもしれない。

それにしても、架空の話なのに、その場所まで残ってしまっているとは。

 

「番町皿屋敷」は火付盗賊改方の青山主膳の屋敷で起こったとされる怪談だ。

市ヶ谷駅から靖国通りを靖国神社のほうへ少し歩いたところを右折すると、

その青山主膳の屋敷があったとれる坂道がある。

「帯坂」という。

麹町台地にのぼる小さな坂だ。

皿を数える亡霊お菊が帯を引きずって歩いたとされたことからその名がついた。