飛ぶはずだった。

世界陸上の開会式で。

ブルーインパルスが。

家の近くのお寺から生で見るはずだった。

その編隊飛行を。

 

浜松。三方原台地。

その真ん中に自衛隊基地が南北に2つ並んでいる。

南に陸上自衛隊、通称「南基地」、北に航空自衛隊、通称「北基地」。

屈強な友人の父は南基地に勤めていた。

北基地には、小学生の頃から見学に行っていた。

お目当ては、ブルーインパルスの装飾が施された戦闘機F-86F、

それに搭乗するオレンジ色(間違っているかもしれないが)のつなぎを纏ったパイロットたちだ。

彼らは、毎週のように、轟音とともに、家の上空を、駆け抜けていた。

世界トップレベルの訓練だ。

浜松人は、そんな空を見上げて育った。

ブルーインパルスは第一航空隊浜松基地「北基地」で生まれた。

最初の東京オリンピックも、大阪万博も、

北基地から飛び立ったブルーインパルスが空に舞った。

 

いまのブルーインパルスは宮城の松島基地がベースだ。

機体もF-86Fからより高性能になったT-2に代わっている。

 

ブルーインパルスが飛ぶ時、浜松っ子の血は騒ぐ。